メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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16.天界

7.鬼の喧嘩は水入らず

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 ホウギのせいで痛む背中を気にしながら宮殿の門を眺める。

「あれから500年。結局、腕から包帯は取れずじまいか。あの娘とも、まだ会えそうにないわね」
「考えに耽ってどうした?何か悪だくみか?」

 月に照らされて、シロガネの後ろに瓢箪を持った3m大の男が現れた。

「ゲッ、レイベルス」
「久しぶりの再会でその顔か?」

 豪快に笑い、瓢箪に口をつける。

「それとも、あの世迷言の娘でも待っているのか?」

 シロガネの目が見開かれる。目をそっと閉じ、息を吐き、心臓を落ち着かせる。

「……だったら何よ? 何か文句でも――」
「ある!!」

 レイベルスが足元の地面を踏み抜く。爛爛と目を輝かせるレイベルスの視線がシロガネを射抜く。

「オレはイライラしているんだ」

 宙へ浮いた石を集めて塊にして、シロガネに投げつける。シロガネの横を通り過ぎ、宮殿の門を破壊する。

「確かにここは、お前等が出会った門に似ている。おっ?」

 シロガネがレイベルスの腕を掴み、地面へと叩きつける。レイベルスは素直に食らっておく。

「何してくれてんのさ」
「ハッハッハッ。何が悪い! あれから何百年経っていると思う?」

 レイベルスは一気に距離を詰め、ラリアットを食らわし、地面に押さえつける。

「がはっ!?」
「……どう考えても、死んでんだろ。大人しく諦めな」

 シロガネは改めて気付かされ、目を開き歯を食い縛る。

「約束した!!」

 レイベルスはシロガネの手首を掴むと、地面へと叩きつけた。

「それだよ。オレがイライラしているのは」

 ベシッとレイベルスの頬を叩き、シロガネが距離を取って立ち上がる。

「アンタに何が分かるのよ」

 夜に始まった戦闘に勇者一行が起き出した。

「何なんだ、あれ。片方は東方の地で見た鬼だよな」
「確かレイベルスさんですよね。どうして戦っているのでしょう」
「参加した方がいいのか?」

 テントの中で勇者一行は様子を窺うことにした。

 宮殿内で一体の魔物が溜息を吐いた。

「我々の領地で何をしているのだ。注意できない自分が恨めしい」

 鬼の戦いが激化する。

「この!?」

 シロガネが雷をレイベルスにぶつける。

「この分からず屋がっ!?」

 レイベルスが腕を雷にぶつけて豪快に打ち消す。
 地面が爆発し、距離が0になる。レイベルスは腕を振るい、シロガネに叩きつける。
 盛り上がった岩に背を凭れさせた状態でシロガネがぐったりしている。レイベルスが足裏を腹に付けて逃げられないようにする。強い力は込めない。踏み潰してしまうからだ。
 レイベルスは口につけていた瓢箪を外す。手の甲で口を拭った。

「鬼を倒すには特別な道具がいる。お前じゃオレには勝てねぇよ」

 シロガネの右腕は体を離れており、血が噴き出していた。

「でも、オレは優しいからな」

 瓢箪の酒を枡に注いでやる。綺麗な文様の書かれた枡をシロガネの口につけてやる。見る見るうちに腕が再生する。陶器のような白い肌が晒される。

 レイベルスの拳が目の前に現れる。ドゴォンと轟音が響く。

「あれ、大丈夫なの!?」
「ど、ど、どうすればっ!?」
「見守るしかなくね?」

 勇者一行はただ見守るしかできない。

「アンタが泣いて許しを請うまで、何回でも治してやるよ」
「ふふっ。鬼ね」
「あ?」
「アンタと出会った時から、ずっと疑問だった。何で鬼だった・・・アンタがそれを持っていたの? 何でその紋様薬枡で『鬼』になるって知っていたの?」

 レイベルスの顔が真顔になる。シロガネは気付いたのか?

「アンタはいつ……鬼になったの?」

 レイベルスが今までの手加減を解除して地面に叩きつける。

「羨ましいよ。いつまでも愛した人のために待つことができる、強いお前が。オレはとっくに諦めたぜ。時が経つほどに苦しかったからな」
「おつかれ~~」
「あ~~、頑固な子供がきの相手は疲れるぜ」

 レイベルスはシロガネの白髪を撫でながら、盛大に溜息を吐く。去ったように見せかけて隠れていたホウギが声をかけた。






 翌日。目を覚ましたシロガネの周りに鬼はいなかった。代わりに勇者一行が囲んでいた。

「何の用?」
「え、えっと、その、か、回復して差し上げたく」
「えっと、いら」

 断ろうとしてシロガネが止まった。それは仙人として良いのか? 何かするべきでは? その口実に”お礼”を使わせてもらおう。

「お願いしようかな」

 シロガネが淡い光に包まれる。

「君達はこの先に行くのかい?」
「あ、はい。そうです」

 別に悪いところも怪我したところもないので、シロガネの周りの光がすぐに消えた。

「え? え? え?」
「回復をしてもらったのだから、お礼をしなくちゃね。これをあげよう」

 シロガネが取り出したのは二振りのナイフだった。シロガネには勇者一行に足りないものなどお見通しのようだった。

 ナイフをエンドローゼに押し付けると、何か講義が飛んでくる前にとっとと立ち去った。

 勇者一行は何も分からず、ただポカンと口を開けた。






『フゥ。やっと鬼がいなくなったか。安心安心』
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