メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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16.天界

8.剣戟の荒野

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 宮殿の正門を開けようとした勇者一行が動きを止めた。
 門が崩れている。夜は暗く、それ以上に注目してしまう出来事があったため、気が付かなかったのだ。

「どうする? オレやアシドなら塀の上までジャンプできるけどよ、アレンやエンドローゼにゃできるビジョンが浮かばねぇ」
「確かにそうですね。抱えて跳ぶことは可能ですか?」
「できねェってことはなさそうだが、さて、向こう側には何がいんのかな?」

 コストイラが腰に手を当て、塀の上を見ながらアレンとエンドローゼを貶す。それに対し、アレン本人が肯定し、受け入れたままに提案すると、コストイラは首を傾げた。

「先に誰かが行って安全を確保する必要がありますね」
「よし、オレが行ってやる」

 言うが早いか、コストイラが塀の上に乗る。コストイラはすぐさま臨戦態勢に入るが、すぐに解除した。とはいえ、刀の柄には触れたままである。

 コストイラは鞘を握っていた手を離し、ハンドサインで上がってくるように促す。アストロはアシドが、エンドローゼはレイドが、アレンはシキが抱えて塀の上まで跳ぶ。
 宮殿の中庭にいたのは、5mほどの身長をした騎士だった。黒い鎧に身を包んだ騎士は、一般的なロングソードを地面に突き立てていた。
 騎士の周りには11体の同じ格好をした騎士が倒れており、何やら同士討ちをしていたようだ。オレンジの目を輝かせる騎士の後ろで、灰色の鎧に身を包んだ騎士が、窮屈そうに椅子に座っていた。

 おそらく塀を伝っていけば、この宮殿の向こう側に辿り着けるだろう。しかし、それは違う。今目の前にいる騎士は超えるべき相手なのだ。
 黒色の鎧の騎士がロングソードを掲げた。

『やぁやぁ、音にこそ聞け、近くば寄って目にも見よ。我こそは、天界の住人。”世話焼き”十二幹部が一人、アローアスターなりぃ。腕に覚えがあるものよ、手合わせ願う』

 長々と口上を聞かされ、これを返した方がいいのかと悩みつつ、コストイラが中庭に降り立った。

「コストイラ。ただのコストイラだ」
『キィエエエ!!』

 ソードジェネラルが動きだす。剣術を基礎においた力強い一発を、コストイラは華麗に跳んで躱す。コストイラはカウンターに力強さと素早さを兼ね備えた一撃を叩き込む。

 黒色の鎧が何で作られているのか分からないが、斬ることができない。傷が一つできただけだ。動じないアローアスターは返す刀でコストイラを狙う。コストイラは高跳び競技のように剣を超える。ブチブチと音が聞こえそうな勢いで剣が返ってくる。
 コストイラがアッパー気味に刀を合わせる。そして往なし、受け流す。再びブチブチとロングソードが返ってくる。アローアスターの兜に衝撃が走る。アローアスターの体が後ろに倒れていく。騎士としての矜持でもって倒れまいと後ろに足を出す。

 いつの間にか後ろにいたシキがシロガネから貰ったナイフで足を切る。いつもの癖で魔力を流して振るうと、コストイラでも切れなかった鎧が斬れた。あまりの手応えのなさにシキが自分で驚く。もしかしてこれ普通のナイフじゃない?
 足を切られたアローアスターは支えをなくし、後ろに倒れる。黒色の騎士は痛む足を押さえようと膝を寄せるが、鎧のせいで90度以上曲がらない。腕を伸ばし、足首を掴み取る。

 斬られた場所がそこよりも上だったようで足首がぶちゃりと取れた。
 オレンジと黒の混じった煙が噴く。今まで見えきたそれよりも、色が濃く、量が多い。
 片足しかなければ立ちづらい。今のうちに倒してしまおう。

 しかし、そこでコストイラとシキは距離を取る。灰色の騎士が近くまで来ていたのだ。

『ショーケーレ様! 私はまだやれます!』
『アローアスター。そこまで蝕まれていたとは』
「ショーケーレ」

 黒の騎士は手を突き出し、待ったをかけようとする。それに対するショーケーレの対応は冷たかった。アストロは誰にも聞こえないような音量で呟く。しかし、アシドは反応した。

「知ってんのか?」
「冥界での唆し事件の犯人」

 塀の上でショーケーレのことを睨む。

『お、お待ち下さい! 待っ! ショーケーレ様!』

 ショーケーレはロングソードを抜き、掲げた。そして何の躊躇もなく振り下ろした。
 兜は何の役にも立たず砕け、その中にいたアローアスターの顔も弾けた。アローアスターの肉片や血はそれなりの距離を取ったはずのコストイラやシキの体や顔に当たる。

『さて、君達が勇者か?』

 ショーケーレが顔を上げた瞬間に、魔術が当てられた。
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