297 / 684
16.天界
10.世話焼きの騎士王
しおりを挟む
騎士王の称号を持つ者は世界全土、歴史上で見ても数少ない。騎士の中でも多くの功績を残し、人々に認められた者こそ騎士王と呼ばれる。
ショーケーレも騎士王と呼ばれている。天界に住んでいる者なら誰もが知っている。しかし、天界を飛び出すと、知っている者はいない。
結局、騎士王といえばアスタットなのだ。
ショーケーレが一気に距離を詰め、ロングソードを振るう。
シキは異常な速度でショーケーレの股下を抜ける。抜ける際にナイフに魔力を流しながら足首を斬りつける。灰色の鎧が斬れ、中にあった肉も切られ、隙間から血が漏れる。ショーケーレが振り向きざまに剣を振るう。決して甘くなく、多くの功績を打ち立てたと体感させる一閃をナイフで受ける。
これがナイフの壊れる原因なのだろうなと思いつつ、ナイフを傾け受け流そうとすると、ロングソードが半ばまで斬れた。
「は?」
『何!?』
シキにとっても想定外である。力を入れるが、それ以上切れない。ショーケーレが力だけで弾き飛ばそうとする。シキがナイフにさらに魔力を注ぎ込むと、スゥーと熱した包丁でバターを切るように剣が斬れた。剣の長さが半分になる。
ビクリとショーケーレの肩が震えた。背後に熱く熱く熱く燃え滾る魔力を感じた。赤い髪を逆立たせ、黄色い瞳を爛爛と輝かせた男が立っていた。
まるで炎のような男にショーケーレは歓喜した。これだ。これなのだ。これこそが主に相応しき姿だ!目の前に見える男に、昔の主の姿を重ねる。
ショーケーレ内の意識はすでにシキが消え、コストイラだけしかなかった。半分になっていることなど気にも留めず、コストイラに向かって走る。コストイラは息を吐き、迎え撃つように走り出す。
ショーケーレが回転斬りを繰り出すと、コストイラは光り輝く一閃で対応した。そして、両者の体は互いの横を通り過ぎ、動きを止める。
切れていたロングソードがさらに切れた。今までコストイラがしていた行動はすべて布石だった。ショーケーレは、コストイラには鎧を断つことは出来ないと思わせられていた。今までの攻撃と、反応で手が出ないと考えさせられていた。
振り向きながら根本だけになった剣で、次の攻撃を対処しようとする。
が、駄目。炎を纏う刀が柄を叩き、跳ね上げさせ、もう一度光り輝く一閃が煌めく。
ショーケーレの腹が斬られた。腹の傷で一番怖いのは、贓物が外に出てきてしまうことだ。その点、ショーケーレは鎧を着ているため安心だ。
ショーケーレが剣を振り下ろそうとする。振り抜いた刀が戻ってくる前に剣が先に辿り着くだろう。しかし、コストイラは焦らない。剣の横っ面に魔術を当てられ、剣の軌道がずらされる。剣がコストイラの横を通り、ショーケーレが無防備になる。
コストイラがアッパーのように刀で振り上げる。地面ごと斬る斬撃は、前に屈むショーケーレの股から臍下にかけて切り裂く。
絶叫暇さえ与えられず、後頭部に衝撃が走る。ショーケーレからは死角となっており見えないが、それはアシドによる攻撃だった。重心が前に出すぎていて、もう体を戻すことができない。剣から手を離し、手をつこうとするが、後頭部にさらなる追撃が入る。後ろから魔術を浴び、ショーケーレは顔面から着地した。
ゴロリと仰向けになる。
『ハッハッ。強いな、勇者は。北へ行くといい。真実に近づけるぞ』
ショーケーレは言うだけ言うと失神した。なぜ北なのか、真実とはどういうことなのか。聞きたいことはたくさんあるが、聞ける相手がいなくなってしまった。
「北だってよ。北って、どっちだ」
コストイラがドクドクと頭から血を流しながら四方を見る。そんなコストイラに全力疾走でエンドローゼが近づいてくる。足の速さだけを見ればレイドを超えているだろうか。
ズザザと砂を巻き上げて止まり、流れるように回復を始める。もはやこの道のプロをも凌ぐ勢いだろうか。コストイラは自分と脚の速さはどちらの方が速いのか気になり始めてしまった。
ショーケーレも騎士王と呼ばれている。天界に住んでいる者なら誰もが知っている。しかし、天界を飛び出すと、知っている者はいない。
結局、騎士王といえばアスタットなのだ。
ショーケーレが一気に距離を詰め、ロングソードを振るう。
シキは異常な速度でショーケーレの股下を抜ける。抜ける際にナイフに魔力を流しながら足首を斬りつける。灰色の鎧が斬れ、中にあった肉も切られ、隙間から血が漏れる。ショーケーレが振り向きざまに剣を振るう。決して甘くなく、多くの功績を打ち立てたと体感させる一閃をナイフで受ける。
これがナイフの壊れる原因なのだろうなと思いつつ、ナイフを傾け受け流そうとすると、ロングソードが半ばまで斬れた。
「は?」
『何!?』
シキにとっても想定外である。力を入れるが、それ以上切れない。ショーケーレが力だけで弾き飛ばそうとする。シキがナイフにさらに魔力を注ぎ込むと、スゥーと熱した包丁でバターを切るように剣が斬れた。剣の長さが半分になる。
ビクリとショーケーレの肩が震えた。背後に熱く熱く熱く燃え滾る魔力を感じた。赤い髪を逆立たせ、黄色い瞳を爛爛と輝かせた男が立っていた。
まるで炎のような男にショーケーレは歓喜した。これだ。これなのだ。これこそが主に相応しき姿だ!目の前に見える男に、昔の主の姿を重ねる。
ショーケーレ内の意識はすでにシキが消え、コストイラだけしかなかった。半分になっていることなど気にも留めず、コストイラに向かって走る。コストイラは息を吐き、迎え撃つように走り出す。
ショーケーレが回転斬りを繰り出すと、コストイラは光り輝く一閃で対応した。そして、両者の体は互いの横を通り過ぎ、動きを止める。
切れていたロングソードがさらに切れた。今までコストイラがしていた行動はすべて布石だった。ショーケーレは、コストイラには鎧を断つことは出来ないと思わせられていた。今までの攻撃と、反応で手が出ないと考えさせられていた。
振り向きながら根本だけになった剣で、次の攻撃を対処しようとする。
が、駄目。炎を纏う刀が柄を叩き、跳ね上げさせ、もう一度光り輝く一閃が煌めく。
ショーケーレの腹が斬られた。腹の傷で一番怖いのは、贓物が外に出てきてしまうことだ。その点、ショーケーレは鎧を着ているため安心だ。
ショーケーレが剣を振り下ろそうとする。振り抜いた刀が戻ってくる前に剣が先に辿り着くだろう。しかし、コストイラは焦らない。剣の横っ面に魔術を当てられ、剣の軌道がずらされる。剣がコストイラの横を通り、ショーケーレが無防備になる。
コストイラがアッパーのように刀で振り上げる。地面ごと斬る斬撃は、前に屈むショーケーレの股から臍下にかけて切り裂く。
絶叫暇さえ与えられず、後頭部に衝撃が走る。ショーケーレからは死角となっており見えないが、それはアシドによる攻撃だった。重心が前に出すぎていて、もう体を戻すことができない。剣から手を離し、手をつこうとするが、後頭部にさらなる追撃が入る。後ろから魔術を浴び、ショーケーレは顔面から着地した。
ゴロリと仰向けになる。
『ハッハッ。強いな、勇者は。北へ行くといい。真実に近づけるぞ』
ショーケーレは言うだけ言うと失神した。なぜ北なのか、真実とはどういうことなのか。聞きたいことはたくさんあるが、聞ける相手がいなくなってしまった。
「北だってよ。北って、どっちだ」
コストイラがドクドクと頭から血を流しながら四方を見る。そんなコストイラに全力疾走でエンドローゼが近づいてくる。足の速さだけを見ればレイドを超えているだろうか。
ズザザと砂を巻き上げて止まり、流れるように回復を始める。もはやこの道のプロをも凌ぐ勢いだろうか。コストイラは自分と脚の速さはどちらの方が速いのか気になり始めてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる