メグルユメ

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16.天界

11.”熱き者”ジャスレ

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 天界には1匹の怪物がいた。20mもある体躯を猫のように丸め、ただ静かに佇んでいた。目を閉じ、横になっている怪物の額の上にある短い角に、小鳥が止まっている。その小鳥は魔物ではなく、普通の小鳥だ。

「…………真実ってこいつか?」
「…………どうなのかしらね?」

 動物が寄ってきたり、日光が差してきたりと神秘的な光景が広がっていた。

「こいつがあの、ショー何とかの言っていた主か?」
「ジャスレ、だっけ?」

 ショーケーレの名前をあまり覚えていないコストイラに、怪物の顔を見ながら自分の中で答えを探すアストロが答えに辿り着く。

 徐に怪物の口が開く。

『その通りだとも』

 口が大きく、頭もそれに合わせて動く。短く小さい角に留まっていた小鳥が羽ばたいていく。

『ん。ジャスレだ。ん』

 ジャスレは話しながら、何度も居住まいを正す。居心地悪そうに顔を丸め、目を逸らしている。全然こちらを見てくれない。

 気に留めない態度というよりは、あまり関わりたくない態度という感じだ。汗を流しながら顔を背け、とっととどっか行けというオーラさえ感じる。

「おい。アンタがジャスレって言うんなら聞きたいことがある」
『……何だ』

 勇気を出してコストイラが質問しようとすると、ジャスレは何かを気遣い、言葉を選びながら答える。明らかに何かに怯えながらこちらの様子を窺っている。怪しい。何か隠しているようにしか思えない。
 ジャスレが目を開けた。フェリップを彷彿とさせる立派な一つ目だ。睫毛が一直線に並んでいたため、予想できていたことだ。

「アンタが冥界を滅茶苦茶にしたのか?」

 コストイラの質問に、ジャスレの瞳は揺れない。最初から想像できていたことなのだろう。
 ジャスレの純粋で無垢な目がコストイラから動き、エンドローゼをじっと見つめる。エンドローゼは何故見られているのか分からず、不安になり、アストロに身を寄せる。しかし、アストロは身を引き、レイドに向かわせた。エンドローゼは別に裏切られたなどとは考えていない。きっとくっつけとでも思っているのだろう。そっちもくっつけと考えておこう。

『正直に答えよう。私はそのような命令を出していない。奈落にいた魔物が邪魔だったから、上にやるよう命じただけだ。冥界については済まないと思うが、反省する気はない』

 豪胆にも言ってのけるジャスレに、コストイラが刀の柄を握っていた力を強めた。それに合わせてジャスレのオーラが膨れ上がる。

『私に戦う気などない。その刃を収めよ。貴様が攻撃しようとしてくるのならば、私は情け容赦もなく、貴様等を殺そう』

 ジャスレの魔力が膨張する。肌感覚だけでも分かる。こいつは強い。

 アレンはジャスレを刺激しないように瞳へ魔力を集めていく。そして、アレンは目を見開いた。

「か、カトブレパス」

 世界にわずか数体しか存在しない絶滅危惧種である種族の魔王は、目を瞑り息を吐いた。
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