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17.彼岸
17.勝ちか負けかそれとも……
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天秤に意味? あるに決まってんじゃん。じゃなきゃ天秤なんて持ってないっしょ。
長い間会ってないからあんま覚えてないけど、右に傾いたらスケアリブラの方が有利って意味だった気がする。
まぁ、でも有利ってだけで確実な勝利じゃないよ。そこから負けることだってあるんだから。今はどんどん傾いている。
まだ諦めちゃだめだよ。さぁ、頑張って。エンドローゼ。
エンドローゼがパチリと目を覚ます。自分の上に覆い被さるアストロに慌てて回復魔法を放つ。
ポンとアストロがエンドローゼの頭を叩く。
「大丈夫。すぐどくから。別に怪我してるわけじゃないから」
ゆっくりとアストロがどいていく。
「怪我はしなくても、だるさは消えないのよね」
片手を額に当て、緩く頭を振っている。
「行きましょ。皆が待っている」
「は、はい」
先に立ち上がったアストロが、エンドローゼの腕を取って立ち上がらせた。
太陽のプロミネンスのように炎が尾を引いている。コストイラが魔力弾を斬ったのだ。
「そのまま耐えてくれ。すぐに終わらせてやるよ、レイド」
「わかった」
互いに互いの顔を見ずに言葉を交わす。コストイラは刀に炎を纏わせたまま、駆けだす。先ほどよりも精錬された動きをするコストイラの一薙ぎを、スケアリブラは先ほどよりも自分に近い位置で防御する。防御に対する反応が先のものより遅いということは、ある一定の区域に入った瞬間に展開されるか、認識してから展開しているかだ。常にそこに存在しているわけではない。
コストイラは決めた。壁となる魔法陣よりも早く斬撃を浴びせてやる、と。
コストイラは自分を狙う魔力弾にレイドを巻き込まないよう、スケアリブラの横を抜ける。
振り向き様に一閃。先ほどよりも速い斬撃だが、障壁に阻まれる。下唇を噛む。
刀が触れた障壁が爆発して割れた。これで障壁が突破できることが証明された。障壁を割りながら切れるだろう。しかし、それはしない。
だって、魔法陣よりも速い斬撃を浴びせると決めたのだから。
どんどん感覚が研ぎ澄まされていく。感覚が鋭くなり、発射される魔法弾の動きが全てゆっくりに見える。
コストイラ史上最速の一閃を繰り出す。それは重圧に耐えるレイドには一切見えなかった。それでも。
ギャリィィンと。それでも止められてしまった。スケアリブラと刃の間には障壁しかない。炎を光も空気すらも何もない。
そこまで迫れたにもかかわらず、届かなかった。ギリと奥歯を噛み締めた。
天秤が左に傾き始める。
天秤が、傾いた。スケアリブラは疑問符を浮かべた。スケアリブラ本人も何を基準に傾くのか分かっていない。今、本人は右側に傾くべきだと思った。しかし、左側に傾いた。しかし、天秤は左側に傾いた。スケアリブラは呆気に取られた。何故左に傾いた?
レイドの横を炎が通り過ぎる。もちろん魔法陣で防がれる。炎は放射状に広がり、一瞬だけ視界を塞ぐ。
その間にシキが建物内に入る。そして最速でレイドの横を通り過ぎ、最短でスケアリブラに辿り着く。魔力の流れていないナイフがスケアリブラの肌に触れた。ナイフが半分ほど入ったところで魔法陣が展開される。
しかし、もう遅い。ナイフを振り抜く。コストイラがブチ切れそうになる。自分のできなかったことを簡単にやってのける奴がいる。自分の不甲斐無さに血管が沸騰しそうだ。
スケアリブラの左足が斬られる。もう左足で踏ん張ることができない。少しだけ右足に重心を移す。そこでバランスが崩れた。魔法陣が出る条件が少し変わる。
コストイラ史上最速を僅か3秒後に更新する。回転斬りでスケアリブラの右足を斬る。スケアリブラは支えをなくし、横に倒れていった。スケアリブラの首が壁にぶつかり、バキリと何かが折れる音が響いた。
「っシャア!? 見たか、これァ!?」
コストイラがスケアリブラの首に刃を立てながら、シキに向かい吠えた。シキは何のことかすっかり分からず、眉根を寄せながら何も言うことなく、気絶したアレン達に寄って行った。
長い間会ってないからあんま覚えてないけど、右に傾いたらスケアリブラの方が有利って意味だった気がする。
まぁ、でも有利ってだけで確実な勝利じゃないよ。そこから負けることだってあるんだから。今はどんどん傾いている。
まだ諦めちゃだめだよ。さぁ、頑張って。エンドローゼ。
エンドローゼがパチリと目を覚ます。自分の上に覆い被さるアストロに慌てて回復魔法を放つ。
ポンとアストロがエンドローゼの頭を叩く。
「大丈夫。すぐどくから。別に怪我してるわけじゃないから」
ゆっくりとアストロがどいていく。
「怪我はしなくても、だるさは消えないのよね」
片手を額に当て、緩く頭を振っている。
「行きましょ。皆が待っている」
「は、はい」
先に立ち上がったアストロが、エンドローゼの腕を取って立ち上がらせた。
太陽のプロミネンスのように炎が尾を引いている。コストイラが魔力弾を斬ったのだ。
「そのまま耐えてくれ。すぐに終わらせてやるよ、レイド」
「わかった」
互いに互いの顔を見ずに言葉を交わす。コストイラは刀に炎を纏わせたまま、駆けだす。先ほどよりも精錬された動きをするコストイラの一薙ぎを、スケアリブラは先ほどよりも自分に近い位置で防御する。防御に対する反応が先のものより遅いということは、ある一定の区域に入った瞬間に展開されるか、認識してから展開しているかだ。常にそこに存在しているわけではない。
コストイラは決めた。壁となる魔法陣よりも早く斬撃を浴びせてやる、と。
コストイラは自分を狙う魔力弾にレイドを巻き込まないよう、スケアリブラの横を抜ける。
振り向き様に一閃。先ほどよりも速い斬撃だが、障壁に阻まれる。下唇を噛む。
刀が触れた障壁が爆発して割れた。これで障壁が突破できることが証明された。障壁を割りながら切れるだろう。しかし、それはしない。
だって、魔法陣よりも速い斬撃を浴びせると決めたのだから。
どんどん感覚が研ぎ澄まされていく。感覚が鋭くなり、発射される魔法弾の動きが全てゆっくりに見える。
コストイラ史上最速の一閃を繰り出す。それは重圧に耐えるレイドには一切見えなかった。それでも。
ギャリィィンと。それでも止められてしまった。スケアリブラと刃の間には障壁しかない。炎を光も空気すらも何もない。
そこまで迫れたにもかかわらず、届かなかった。ギリと奥歯を噛み締めた。
天秤が左に傾き始める。
天秤が、傾いた。スケアリブラは疑問符を浮かべた。スケアリブラ本人も何を基準に傾くのか分かっていない。今、本人は右側に傾くべきだと思った。しかし、左側に傾いた。しかし、天秤は左側に傾いた。スケアリブラは呆気に取られた。何故左に傾いた?
レイドの横を炎が通り過ぎる。もちろん魔法陣で防がれる。炎は放射状に広がり、一瞬だけ視界を塞ぐ。
その間にシキが建物内に入る。そして最速でレイドの横を通り過ぎ、最短でスケアリブラに辿り着く。魔力の流れていないナイフがスケアリブラの肌に触れた。ナイフが半分ほど入ったところで魔法陣が展開される。
しかし、もう遅い。ナイフを振り抜く。コストイラがブチ切れそうになる。自分のできなかったことを簡単にやってのける奴がいる。自分の不甲斐無さに血管が沸騰しそうだ。
スケアリブラの左足が斬られる。もう左足で踏ん張ることができない。少しだけ右足に重心を移す。そこでバランスが崩れた。魔法陣が出る条件が少し変わる。
コストイラ史上最速を僅か3秒後に更新する。回転斬りでスケアリブラの右足を斬る。スケアリブラは支えをなくし、横に倒れていった。スケアリブラの首が壁にぶつかり、バキリと何かが折れる音が響いた。
「っシャア!? 見たか、これァ!?」
コストイラがスケアリブラの首に刃を立てながら、シキに向かい吠えた。シキは何のことかすっかり分からず、眉根を寄せながら何も言うことなく、気絶したアレン達に寄って行った。
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