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17.彼岸
26.精霊の大樹
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生物の基本として、毒を受けたものは弱り捕食される。それを考えると今、弱者はシキで、捕食者はカカンだ。
だというのに、カカンの中にある不安が一向に拭えない。目の前にいる敵の眼が、血が流れているにもかかわらず、殺気を失っていないのだ。生きている目に、カカンがビビってしまう。
唐突に動きだすシキに、カカンの対応が遅れる。シキのナイフは刀よりも深い傷を残す。漏れ出す血が、胸元のふわふわの毛を濡らし湿らせた。
『グッ!?』
毒で弱っているにもかかわらず、動きが俊敏だ。血を吐いている時点で毒が効いているはずなのに、どうしてこれだけの動きを見せられるのか?
シキはナイフを振る勢いを利用して、回し跳び蹴りを繰り出す。5mの巨体にもかかわらず、1m52㎝の体に蹴飛ばされる。
両者の間に距離ができたのを見計らい、レイドが楯を持って割り込む。エンドローゼがローブの袖をまくり、回復魔法を発動させる。ハルモニアは飛び上がり、回復現場を襲撃しようとするが、コストイラが相対する。
『なぜそこまでして私を倒そうとする』
「決まっているだろ」
『アイケルスですよね』
ハルモニアが現れた大樹から、新たな蝶が出てきた。八枚の翅を持った5m級の蝶の見た目の魔物。青い色をした蛾の触覚がざわざわと揺れている。
『イシンテ様。なぜ今アイケルスが』
『その子はアイケルスに育てられた子よ。彼女と戦った私達は彼にとって敵なのです』
「え?」
アストロもアシドも知らないコストイラの過去の情報が出てきた。アイケルスは先ほど聞いた限りでは闇の精霊だったはずだ。コストイラはそのアイケルスに育てられた?
アストロは後で問い詰めてやると思いながら、魔力を循環させていく。ハルモニアは魔力を霧散させることができる。それがある限り、アストロは無能だ。
アシドとシキは毒の影響でダウンしている。レイドは無防備状態の2人とエンドローゼを護るために、ここから動くことができない。
アレンは及び腰で何やっているのか分からない。
「アレン。何しているの? 早く矢を撃ちなさい。いくらコストイラでも2対1は無理よ」
「で、でも、どちらを狙えば」
「どっちでもいいわよ。コストイラなら勝手に合わせるわ」
結構怖い表情をしていたので、アレンは逆らえず速攻で撃った。普段のカカンなら対処できただろう。しかし、今は視界のいくらかをオレンジと黒の混じった煙のせいで塞がっている。矢はその煙を貫き、カカンの左目に突き刺さった。
その瞬間にコストイラが動きだした。後ろから放たれるイシンテの魔力を避けながら、カカンに迫る。カカンに叫ぼうとして、少し躊躇してしまう。コストイラの向こう側、攻撃の延長線上にイシンテがいた。コストイラの刀がカカンの声帯部分の魔法陣を破壊した。それは表には出て来ず、誰の目にも映らなかった。
しかし、コストイラには指先から感覚として伝わってきた。今、何か決定的な物を斬った。しかし、それが何なのか分からない。下から勢いよく蔦が飛び出し、コストイラの四肢を拘束する。太めの蔦が出てきて、コストイラを貫こうとしてくる。その太さなら、上半身と下半身など簡単に分離できるだろう。
コストイラは拘束中で取れる最大限の身の捻りで回避しようとする。太い蔦がコストイラの脇腹を抉り取る。脇腹から、口から血が溢れ出る。コストイラが血走る目で、自身の血を噛み潰すように歯を合わせる。
コストイラが蔦を千切ろうとすると、ハルモニアがタックルした。その瞬間に蔦を話したことで、コストイラがぶっ飛ばされる。血の尾を引きながらコストイラが飛んで、森の中に消えて行った。
だというのに、カカンの中にある不安が一向に拭えない。目の前にいる敵の眼が、血が流れているにもかかわらず、殺気を失っていないのだ。生きている目に、カカンがビビってしまう。
唐突に動きだすシキに、カカンの対応が遅れる。シキのナイフは刀よりも深い傷を残す。漏れ出す血が、胸元のふわふわの毛を濡らし湿らせた。
『グッ!?』
毒で弱っているにもかかわらず、動きが俊敏だ。血を吐いている時点で毒が効いているはずなのに、どうしてこれだけの動きを見せられるのか?
シキはナイフを振る勢いを利用して、回し跳び蹴りを繰り出す。5mの巨体にもかかわらず、1m52㎝の体に蹴飛ばされる。
両者の間に距離ができたのを見計らい、レイドが楯を持って割り込む。エンドローゼがローブの袖をまくり、回復魔法を発動させる。ハルモニアは飛び上がり、回復現場を襲撃しようとするが、コストイラが相対する。
『なぜそこまでして私を倒そうとする』
「決まっているだろ」
『アイケルスですよね』
ハルモニアが現れた大樹から、新たな蝶が出てきた。八枚の翅を持った5m級の蝶の見た目の魔物。青い色をした蛾の触覚がざわざわと揺れている。
『イシンテ様。なぜ今アイケルスが』
『その子はアイケルスに育てられた子よ。彼女と戦った私達は彼にとって敵なのです』
「え?」
アストロもアシドも知らないコストイラの過去の情報が出てきた。アイケルスは先ほど聞いた限りでは闇の精霊だったはずだ。コストイラはそのアイケルスに育てられた?
アストロは後で問い詰めてやると思いながら、魔力を循環させていく。ハルモニアは魔力を霧散させることができる。それがある限り、アストロは無能だ。
アシドとシキは毒の影響でダウンしている。レイドは無防備状態の2人とエンドローゼを護るために、ここから動くことができない。
アレンは及び腰で何やっているのか分からない。
「アレン。何しているの? 早く矢を撃ちなさい。いくらコストイラでも2対1は無理よ」
「で、でも、どちらを狙えば」
「どっちでもいいわよ。コストイラなら勝手に合わせるわ」
結構怖い表情をしていたので、アレンは逆らえず速攻で撃った。普段のカカンなら対処できただろう。しかし、今は視界のいくらかをオレンジと黒の混じった煙のせいで塞がっている。矢はその煙を貫き、カカンの左目に突き刺さった。
その瞬間にコストイラが動きだした。後ろから放たれるイシンテの魔力を避けながら、カカンに迫る。カカンに叫ぼうとして、少し躊躇してしまう。コストイラの向こう側、攻撃の延長線上にイシンテがいた。コストイラの刀がカカンの声帯部分の魔法陣を破壊した。それは表には出て来ず、誰の目にも映らなかった。
しかし、コストイラには指先から感覚として伝わってきた。今、何か決定的な物を斬った。しかし、それが何なのか分からない。下から勢いよく蔦が飛び出し、コストイラの四肢を拘束する。太めの蔦が出てきて、コストイラを貫こうとしてくる。その太さなら、上半身と下半身など簡単に分離できるだろう。
コストイラは拘束中で取れる最大限の身の捻りで回避しようとする。太い蔦がコストイラの脇腹を抉り取る。脇腹から、口から血が溢れ出る。コストイラが血走る目で、自身の血を噛み潰すように歯を合わせる。
コストイラが蔦を千切ろうとすると、ハルモニアがタックルした。その瞬間に蔦を話したことで、コストイラがぶっ飛ばされる。血の尾を引きながらコストイラが飛んで、森の中に消えて行った。
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