メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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17.彼岸

25.調和の精霊

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『カカン!』
『メグ。様をつけなさい。私、結構偉いのよ』
『じゃあ、その超偉いカカンと喋れる私も超偉い!』

 超常的な論理の飛躍を見せつけられ、カカンと呼ばれた蝶は頭を抱えた。

「ええと、僕達は――」
『名乗りは結構よ。覚える気はないし、早く出て行ってほしいもの』

 明らかな拒絶反応だ。あまり突っ込みすぎると闘いになるだろう。

『精霊は同じものを司る精霊が多いほど、力が分散するわ。だから1体しかいない闇の精霊はものすごく強いわ。ほら、知りたいことは知れたでしょ。とっととどっか行きなさい。ほら』

 何かを隠そうとする言い方。駄目と言われたらやりたくなるのが人間の心理というものだ。コストイラは探したくてうずうずしているのではないだろうか。

『貴方達がここにいると、この場所の調和が乱れるの』

 手をひらひらさせて、行動を促す。

「四大女王に仕えるハーモニーは各四種、だったか。それぞれソプラノとかアルトとかいるらしいが、共有している力は1個だって聞いているぜ」

 コストイラが告げた。それが何かは分からないが、カカンの態度が急激に変わった。
 口吻のない蝶の顔が変わっても分かりづらいが、顔の下についているふさが雄弁に語った。手入れの届いている女性の長い髪のような緑のふさがざわざわと動きだした。

『アッ!』

 ハルモニアが叫ぶと、コストイラが刀で弾いた。

「え?」

 何も分かっていない間に戦闘が始まっている。何が引き鉄になっているのか分からなければ、何のための戦いなのかも分からない。

 しかし、アストロはコストイラの味方をした。コストイラは隠し事をすることがあるが、嘘を吐くことはない。アストロはハルモニアに指を向ける。気付いたハルモニアは指の先から魔力が出るのと同時に声を出す。
 アストロの魔力が消えた。指先から発射された魔力の塊が、アイスコーヒーに蜜を垂らしたように揺らいで消えた。大気に溶けた魔力の残滓を見て目を丸くする。

『フッ!!』
「くっ! 気にすんな! こいつは逆位相の魔力をぶつけることで魔力とか魔術を撃ち消してくる!」
『ナッ!?』

 なぜかハルモニアの戦い方を知っているコストイラに、ハルモニア本人が目を丸くする。恐怖を感じたカカンが距離を取ろうとする。

 コストイラは一歩踏み出し、刀を振り下ろす。しかし、足のない蝶の移動距離はコストイラの一歩よりも長かった。
 ハルモニアの体を刀の切っ先だけがとらえる。体の一線の赤い筋ができるができるが、致命にはならない。筋からオレンジと黒の混じった煙が漏れ出ている。

 体の中にある煙がなくなる前に傷が塞がるだろう。

 ハルモニアの胸が鳩胸のように張って膨らむ。ハルモニアが声に当てる。コストイラは腕をクロス状にしてガードするが、吹き飛ばされてしまう。
 アシドとシキが肉薄する。ハルモニアが翅を羽ばたかせる。その翅から鱗粉が万枚も舞い、両者ともに全身に浴びる。
 アシドが地面に足をつけた瞬間、足から力が抜け、膝が崩れた。

「お?」
「ぶ」

 アシドの2倍は鱗粉を浴びたシキが血を吐いた。口からだけではなく、鼻や目からも血が出ている。これは毒だ。

 ガクンと腰が落ちる。シキの目の前に、ハルモニアが立ち塞がっていた。
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