323 / 684
17.彼岸
24.精霊の泉
しおりを挟む
光に向かって7人が歩く。アシドが粘液の少ない道を選んで歩く。シキは無意識のうちに粘液のないところを歩いていた。コストイラは一切気にすることなく踏み締めた。アストロはドレスの裾を軽く抓み、注意深く歩いている。エンドローゼはアストロの後を追うように歩いているが、焦りながら粘液を踏んでいる。レイドはエンドローゼの後ろで倒れないか不安になりながら歩いている。アレンはすでに粘液に足を取られて3回は転んでいる。
「見えてきたぞ。光源だ」
アシドが目の前の邪魔な草を掻き分けると、光源が目に入った。
泉だ。透き通りすぎて、そこに水がないのでは、と思えるほどの透明度だ。光の珠がふよふよと浮いているように見える。
とてもきれいな光景だ。今までもそのような光景を数多く見てきたが、ここはTOP3に入ってくる。
そこに美しい鬣を持つ馬のような見た目のドラゴンが現れる。ホワイトドラゴンは首だけを曲げて泉の水を飲む。その景色は様になっており、邪魔する気が起きない。
向こう岸にヘビーアーマーが現れる。とても人間的な動きで兜を外すと、自身の側に置き、膝を着いた。自然の動きで泉に手を入れると、皿を作って掬い上げて口をつけた。
喉が渇いたコストイラが泉に手を付けようと、腰を屈めた。
『ちょっと待った~~~~~!!』
声が聞こえ、何かと思い振り返ろうとしたが、声の主は意外にも速かった。ドンと背中に衝撃が走り、そのまま泉に頭から突っ込んだ。
『ア』
背を押した存在が間抜けた声を出した。突き落とす気はなかったのだろう。
コストイラがガボガボ言いながら泉から頭を出す。頭から落ちる水を鬱陶しく思いながら、顔を雑に腕で拭う。
「おいこら、クソ妖精! 何しやがる。ちょっと飲んじゃたじゃねぇかよ。いや、飲むつもりだったんだけどさ」
『ご、ごめんって。悪かったって。あと私は妖精じゃなくて精霊だよ。しかもメグって素敵な名前があるんだから』
コストイラと光の珠こと精霊が言い争っている。というか、明らかに危険地帯たと思っていたというのに、どうしてこんな馬鹿そうな精霊がいるのだろうか。
「あれ? コストイラ?」
アストロがコストイラを呼び向かせると、自身の左頬をツンツンとつついた。コストイラは自分の左頬を掻く。そこに引っかかりがない。
かつて魔王城に行く際につけた氷精からの切り傷が消えている。体が動きやすくなっている。コリンに受けた雷の痕も消えているし、インサーニアとの戦いで負った両腕の傷が消えている。
「怪我が消えている?」
『あれ? 他なんもないの?』
泉から岸に上がったコストイラの周りをちょこちょこと飛びながら、不思議そうな顔を向けている。さらに精霊は遠慮なしに触ってくる。
「この泉ってそんなヤバいものなのか?」
『えっと、適性がないと毒性があって、痺れちゃうんだよね。ま、最悪、死亡?』
「こ、こっ、こっ、コココ、コッ!コストイラさんっ、だ、大丈夫ですかっ!?」
ヤバいものだと聞いてエンドローゼが走り寄るが、コストイラは押し返す。
「適性って?」
『絶対条件として、精霊に愛されていることかなぁ? 覚えある?』
「覚えしかねぇけど、お前には話さねぇ」
即答だった。コストイラは何かと精霊と会うと静かになる。アストロとアシドもそれについて知らない。齢一桁の頃に何かあったのだろう。
「そういえば貴方は何の精霊なわけ?」
『んむ?』
「あれ? 精霊って光とか氷とか種類があるんでしょ?」
『私は光の精霊だよぉ』
アストロの質問に対して、大袈裟な身振り手振りで答える。その様はどこか子供のようでエンドローゼは思わず頬を緩ませた。アシドはそんなメグとエンドローゼを見ながら、ポツと呟いた。
「光多くね」
『えう?』
「オレ達が会ってきたのは光の精霊ばっかだ。対になる闇の精霊はいないのか?」
『いるよ!』
メグが元気よく飛びながら答える。
『えげつなく強いのが1体。アイケルスって奴が』
「1体? 闇って1体しかいねぇの?」
『うん。1体だけ』
メグがどこか意味深に頷いた。精霊の数にはどれほどの意味があるのか。アレンが口を開く。
「数って意味があるんですか?」
『あるよ~。えっと、何だっけかな?』
元気よく返事した割には悩み出した。意味があることを知っているが、意味は知らないらしい。
『調和の意味があるのですよ』
泉に存在している大樹から声がした。見るとそこには5m級の大きな蝶がいた。
「見えてきたぞ。光源だ」
アシドが目の前の邪魔な草を掻き分けると、光源が目に入った。
泉だ。透き通りすぎて、そこに水がないのでは、と思えるほどの透明度だ。光の珠がふよふよと浮いているように見える。
とてもきれいな光景だ。今までもそのような光景を数多く見てきたが、ここはTOP3に入ってくる。
そこに美しい鬣を持つ馬のような見た目のドラゴンが現れる。ホワイトドラゴンは首だけを曲げて泉の水を飲む。その景色は様になっており、邪魔する気が起きない。
向こう岸にヘビーアーマーが現れる。とても人間的な動きで兜を外すと、自身の側に置き、膝を着いた。自然の動きで泉に手を入れると、皿を作って掬い上げて口をつけた。
喉が渇いたコストイラが泉に手を付けようと、腰を屈めた。
『ちょっと待った~~~~~!!』
声が聞こえ、何かと思い振り返ろうとしたが、声の主は意外にも速かった。ドンと背中に衝撃が走り、そのまま泉に頭から突っ込んだ。
『ア』
背を押した存在が間抜けた声を出した。突き落とす気はなかったのだろう。
コストイラがガボガボ言いながら泉から頭を出す。頭から落ちる水を鬱陶しく思いながら、顔を雑に腕で拭う。
「おいこら、クソ妖精! 何しやがる。ちょっと飲んじゃたじゃねぇかよ。いや、飲むつもりだったんだけどさ」
『ご、ごめんって。悪かったって。あと私は妖精じゃなくて精霊だよ。しかもメグって素敵な名前があるんだから』
コストイラと光の珠こと精霊が言い争っている。というか、明らかに危険地帯たと思っていたというのに、どうしてこんな馬鹿そうな精霊がいるのだろうか。
「あれ? コストイラ?」
アストロがコストイラを呼び向かせると、自身の左頬をツンツンとつついた。コストイラは自分の左頬を掻く。そこに引っかかりがない。
かつて魔王城に行く際につけた氷精からの切り傷が消えている。体が動きやすくなっている。コリンに受けた雷の痕も消えているし、インサーニアとの戦いで負った両腕の傷が消えている。
「怪我が消えている?」
『あれ? 他なんもないの?』
泉から岸に上がったコストイラの周りをちょこちょこと飛びながら、不思議そうな顔を向けている。さらに精霊は遠慮なしに触ってくる。
「この泉ってそんなヤバいものなのか?」
『えっと、適性がないと毒性があって、痺れちゃうんだよね。ま、最悪、死亡?』
「こ、こっ、こっ、コココ、コッ!コストイラさんっ、だ、大丈夫ですかっ!?」
ヤバいものだと聞いてエンドローゼが走り寄るが、コストイラは押し返す。
「適性って?」
『絶対条件として、精霊に愛されていることかなぁ? 覚えある?』
「覚えしかねぇけど、お前には話さねぇ」
即答だった。コストイラは何かと精霊と会うと静かになる。アストロとアシドもそれについて知らない。齢一桁の頃に何かあったのだろう。
「そういえば貴方は何の精霊なわけ?」
『んむ?』
「あれ? 精霊って光とか氷とか種類があるんでしょ?」
『私は光の精霊だよぉ』
アストロの質問に対して、大袈裟な身振り手振りで答える。その様はどこか子供のようでエンドローゼは思わず頬を緩ませた。アシドはそんなメグとエンドローゼを見ながら、ポツと呟いた。
「光多くね」
『えう?』
「オレ達が会ってきたのは光の精霊ばっかだ。対になる闇の精霊はいないのか?」
『いるよ!』
メグが元気よく飛びながら答える。
『えげつなく強いのが1体。アイケルスって奴が』
「1体? 闇って1体しかいねぇの?」
『うん。1体だけ』
メグがどこか意味深に頷いた。精霊の数にはどれほどの意味があるのか。アレンが口を開く。
「数って意味があるんですか?」
『あるよ~。えっと、何だっけかな?』
元気よく返事した割には悩み出した。意味があることを知っているが、意味は知らないらしい。
『調和の意味があるのですよ』
泉に存在している大樹から声がした。見るとそこには5m級の大きな蝶がいた。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる