メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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18.最果ての孤島

3.孤島の樹海

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 魔力の矢に気を取られている隙にコストイラ達が肉薄する。

 コストイラがハイオーガのふくらはぎを斬りつける。1本の線ができるが、切断には至らない。手応え的にも腱すら知れていないだろう。

 アシドが槍を刺そうとするが、脛には穂先1㎝すら入っていなかった。え、いや、硬すぎない?
 サイクロプスの二の舞を踏まないようにすぐに離脱する。目の前を拳が通過する。巻き込まれた風に煽られて飛ばされる。手をついて何回かバク転して止まる。

 ナックルウォークのような四つ足で駆け出す。そこで力一杯に背を反らして跳び上がった。着地点にいるアストロ達が散り散りになった。ハンマーのように振り下ろされた拳が大きく地面を割る。アレンたちはギョッとした。崩落の危険性について考えたのだ。

 そのようなことを考える知性すらないハイオーガは無造作に拳を振るう。アストロが炎を浴びせるが、ハイオーガの肌が焦げるだけで焼かれない。単純なハイオーガは攻撃されたらやり返す。ゆえに次はアストロを狙った。

 間にレイドが割り込み、楯で受け流そうとする。しかし、ハイオーガの打撃は受け流せるほどの威力ではなかった。レイドの体は浮き上がり、きりもみ回転しながら壁に激突する。しかし、レイドは威力を半分も往なすことに成功していた。だからこそ子鹿のようにプルプルしながらも立ち上がれた。
 目がゴロゴロしている。目玉が飛び出してしまいそうだ。心臓の鼓動がうるさい。全身の血液も沸騰しそうだ。鼻血がビチャビチャと落ちているが、落としている感覚がない。

『オオオオオッ!!』

 立ち上がったレイドを明確な敵を認め、ハイオーガは全力を賭して潰しにかかる。大きく振りかぶったハイオーガに足が竦みそうになるが、止まっていては風前の灯火。レイドは全力で前に出た。
 拳はレイドの頭上を通り、壁を思い切りブッ叩いた。壁は大きく罅割れ、洞窟内が揺れた。股下を通るレイドは大剣で傷付けるが、足機能に支障がない。

 手に返ってくる感覚が、頑張れば切れる岩石のようだ。拳の近くでアストロが腰を抜かしそうになる。ハイオーガがギョロリと視線を向けるが、すぐにアストロの姿が消えた。
 最高速のアシドが回収したのだ。それを見届けたコストイラが足に無数の斬撃を浴びせる。ほとんど深くまで傷がつかない。
 ハイオーガが鬱陶しそうに腕を振るう。コストイラは跳躍して、ハイオーガの腕を飛び越える。風で巻き上げられて、壁面に掴まる。ハイオーガの動きが止まった時、シキが動いた。上空から落ちて、ハイオーガの腕を切り裂いた。ハイオーガの前腕の腱が斬られ、もう動かなくなる。

 コストイラは嫉妬した。自分の切れないものをいともたやすく切ってみせるなんて。

 シキは着地した直後に動きだす。今度は足を切られ、ハイオーガは膝を着いた。潰れた右目もかっ開き、シキを見極めようとする。銀の風が動いているのは分かるが、動きに追いつくことができない。
 捕まえようとして伸ばした腕に乗り、切りながら進む。あまりにも早すぎてハイオーガでは捕まえられない。シキはそのままハイオーガの首裏に回って、項を削いだ。神経を傷付けられたハイオーガは俯せに倒れた。






「レベル上げどころじゃなかったですね」
「あんな強いとは思わなかった。鍛え上げた筋肉とはあそこまでの硬度になるものなのだな」

 レイドが力こぶをつくり、自身で触っている。

「おい、出口だ」

 コストイラが指さす先に光が見えた。光さす方に走ると、ある程度の傾斜がついており、余計に体力を使ったことを後悔する。

 外に出ると強い日差しに目を傷める。むわと湿度を持った風が吹く。先ほどまでの過ごしやすい環境と違い、ジメジメしていて汗ばんでくる。
 風の中に潮の匂いを嗅ぎ取った。アシドは一瞬にして海が恋しくなった。彼岸の海はヘドロであって海なんかでは決してなかった。フレストレーションの溜まっているアシドは海を求めた。

「海行こう!」
「どこよ、海」
「スンスン。この感じ。あっちだ!!」

 アシドを先頭にして、勇者一行は海を目指した。
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