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20.シン・ジゴク
1.新雪の牛人
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サーウィンに案内されたのは右側の通路だった。左側はサーウィンの生活空間らしい。恥ずかしいから案内できないと追い返されてしまった。
数分歩くと鉄の扉があった。太陽信仰者と精霊の郷の間や精霊の郷と孤島の間にも見たタイプだ。
「開けるぜ」
コストイラの言葉に皆が頷く。その反応を見届け、コストイラは腕に力を入れた。
ビュオと冷たい風が入り込んできた。かつて魔界でも味わった現象だ。扉を開けたら銀世界だなんて寒すぎる。覚悟していなかった分、寒さが骨身に染みる。言ってくれればよかったのに。コストイラが扉から顔だけを出して周りを確認する。幸いにも吹雪いていない。美しい銀世界だ。
「寒さもそれなり。いけるな。うん」
コストイラが体全体を銀世界に出した。気持ちよさそうに背伸びをする。アレン達も銀世界に出て扉を閉じる。気持ちの良い雪だ。足を動かすたびに柔らかい雪が抵抗してくる。
後ろを見ると、今自分達が通ってきた扉がなくなっていた。もしかして一方通行な転移魔術だったのか?
「構うなよ。オレ達は前に進むしかねェんだ」
コストイラは樹霜を指で潰しながらアレンの顔を見た。アレンはもう何かを考えたくなくなっているので、ただ頷いた。
そして一歩踏み出した段階で、アレンは雪に足を取られて転んだ。
「あ~僕は何もできないんだぁもう」
「メンドクサ」
「腐ってんなよ。早よ行くぜ」
アストロがアレンの脇腹を軽く蹴り、アシドが首根っこ掴んで引き上げた。親猫に首を加えられている子猫なみに抵抗しない。
バキバキと木が一本倒れた。
『ブファゥ』
白い息を撒き散らしながら、ミノタウロスが姿を現した。雪国の中に居るにしては薄着だ。腰蓑一枚しか身に着けていない。上半身裸だ。身が震えていて寒そうに見えるが、皮膚から湯気が出ている。体表は熱そうだ。
コストイラが足元で雪の具合を確かめる。この中で戦うための準備だろう。
そんなこと関係なく、シキが飛び出した。雪上というハンディキャップを感じさせない跳躍でミノタウロスに近づく。ミノタウロスは大斧を振るうが、羽のように舞い当たるのを回避していた。
シキはミノタウロスの腕を掴み、関節にナイフを入れ、グチリと捻じ曲げた。ミノタウロスの肘が開放される。血が飛び散り、雪を真っ赤に染めて溶かしていく。
『ブモォ!!』
ミノタウロスが右手一本で大斧を振るう。シキが背面飛びで躱し、大斧に乗る。コストイラが居合で右の手首を切り落とした。腕を振った勢いのままだったので、腕が雪をバウンドして滑っていった。シキは滑りながら右手から大斧を引き抜いて着地した。
両腕からオレンジと黒の混じった煙が噴き出ている。これ以上は戦いにならない。
しかし、ミノタウロスは勇猛な怪物だ。いや、無謀な魔物だ。
それがコストイラの素直な感想だ。すでに戦えるような体ではないのに、何がそこまで駆り立てているのか。
素早く鋭い斬撃が無数に浴びせる。熱したナイフでバターを切り取るようにミノタウロスを切る。サイコロ状になった肉塊が雪の上に落ちる。
また何もできなかった、とレイドが沈む。いつもそうだ。ミノタウロスが出てくるといつも決まって、シキとコストイラが対処してしまう。なぜいつもこうなのか。
「何でこんな雪山にミノタウロスがいるんだ?」
「確かに不思議ね」
「さ、さ、寒そうですよね」
コストイラが腰蓑だったものを摘まみ上げ、ミノタウロスだったものを見つめた。アストロが顎を触りながら考える。エンドローゼはちょっとズレた感想を言った。
数分歩くと鉄の扉があった。太陽信仰者と精霊の郷の間や精霊の郷と孤島の間にも見たタイプだ。
「開けるぜ」
コストイラの言葉に皆が頷く。その反応を見届け、コストイラは腕に力を入れた。
ビュオと冷たい風が入り込んできた。かつて魔界でも味わった現象だ。扉を開けたら銀世界だなんて寒すぎる。覚悟していなかった分、寒さが骨身に染みる。言ってくれればよかったのに。コストイラが扉から顔だけを出して周りを確認する。幸いにも吹雪いていない。美しい銀世界だ。
「寒さもそれなり。いけるな。うん」
コストイラが体全体を銀世界に出した。気持ちよさそうに背伸びをする。アレン達も銀世界に出て扉を閉じる。気持ちの良い雪だ。足を動かすたびに柔らかい雪が抵抗してくる。
後ろを見ると、今自分達が通ってきた扉がなくなっていた。もしかして一方通行な転移魔術だったのか?
「構うなよ。オレ達は前に進むしかねェんだ」
コストイラは樹霜を指で潰しながらアレンの顔を見た。アレンはもう何かを考えたくなくなっているので、ただ頷いた。
そして一歩踏み出した段階で、アレンは雪に足を取られて転んだ。
「あ~僕は何もできないんだぁもう」
「メンドクサ」
「腐ってんなよ。早よ行くぜ」
アストロがアレンの脇腹を軽く蹴り、アシドが首根っこ掴んで引き上げた。親猫に首を加えられている子猫なみに抵抗しない。
バキバキと木が一本倒れた。
『ブファゥ』
白い息を撒き散らしながら、ミノタウロスが姿を現した。雪国の中に居るにしては薄着だ。腰蓑一枚しか身に着けていない。上半身裸だ。身が震えていて寒そうに見えるが、皮膚から湯気が出ている。体表は熱そうだ。
コストイラが足元で雪の具合を確かめる。この中で戦うための準備だろう。
そんなこと関係なく、シキが飛び出した。雪上というハンディキャップを感じさせない跳躍でミノタウロスに近づく。ミノタウロスは大斧を振るうが、羽のように舞い当たるのを回避していた。
シキはミノタウロスの腕を掴み、関節にナイフを入れ、グチリと捻じ曲げた。ミノタウロスの肘が開放される。血が飛び散り、雪を真っ赤に染めて溶かしていく。
『ブモォ!!』
ミノタウロスが右手一本で大斧を振るう。シキが背面飛びで躱し、大斧に乗る。コストイラが居合で右の手首を切り落とした。腕を振った勢いのままだったので、腕が雪をバウンドして滑っていった。シキは滑りながら右手から大斧を引き抜いて着地した。
両腕からオレンジと黒の混じった煙が噴き出ている。これ以上は戦いにならない。
しかし、ミノタウロスは勇猛な怪物だ。いや、無謀な魔物だ。
それがコストイラの素直な感想だ。すでに戦えるような体ではないのに、何がそこまで駆り立てているのか。
素早く鋭い斬撃が無数に浴びせる。熱したナイフでバターを切り取るようにミノタウロスを切る。サイコロ状になった肉塊が雪の上に落ちる。
また何もできなかった、とレイドが沈む。いつもそうだ。ミノタウロスが出てくるといつも決まって、シキとコストイラが対処してしまう。なぜいつもこうなのか。
「何でこんな雪山にミノタウロスがいるんだ?」
「確かに不思議ね」
「さ、さ、寒そうですよね」
コストイラが腰蓑だったものを摘まみ上げ、ミノタウロスだったものを見つめた。アストロが顎を触りながら考える。エンドローゼはちょっとズレた感想を言った。
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