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20.シン・ジゴク
13.獄卒の溜まり場
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針の山が存在しているなど、土地として特殊すぎる。アレンはそんな場所を一か所しか知らない。
地獄だ。
ヂドルのような皮肉から名付けられたわけではない、心の底からの地獄だ。
「もしかして私たちが立ち寄ったのってムジ?」
アストロが振り返り、先ほどまでいた地獄の温泉街を見た。地獄と呼ばれる地域の街ムジは、勇者ゴートが晩成を過ごしたとされている場所だ。
世界には”英雄”ジョコンドと、”異世界人”ゴートに関する本が多く存在している。その中の一つにムジのことが記されている。ムジには針山が存在し、さらには鬼が多く住んでいる。その鬼を従えることで飛躍的に活躍の場所を増やしたのだとか。
今、アレン達の目の前には鬼が働いていた。青鬼は洗濯籠を側に置き、川で洗濯している。完全に日常的な生活をしている。あまり刺激しないほうがいいだろう。
「少し遠回りするか」
コストイラが珍しく遠回りを提案する。珍しいと思いつつ、同意して歩き出す。何かキセルのようなものから紫煙をふかしている鬼がこちらを見ている。どこか流し目でこちらを窺っている。誘っているようにも見える。
「何だ、あの鬼。見てくるだけだな」
「娼婦かしらね」
「そういうの平気で言うのどうなんだ?」
「何? そういうのって? 娼婦だって立派な職業よ」
「あい、すいません」
コストイラがアストロに口で負けた。こうして軽く口喧嘩ができる相手というのにアレンは憧れる。アレンは相手のことを気遣ってしまい、思っていることを口に出せない。どうやって、これは言っても大丈夫だという信頼を勝ち取ったのだろう。
アレン達のレベルになれば、少しの距離くらいだったら、普段通りに見えてしまう。それは向こう側も同じようで、鬼の一部がこちらに目を向けたまま固まっている。こちらの出方を窺っているのだろう。
1人の鬼が近づいてきた。武器を携帯しているが、両手を挙げた状態で近づいてきている。敵意がないことを示しているのだろうか。いつでも武器を抜けるようにしておきながら相対する。
『君達はどこに行きたいのだね?この先がどういう場所か知っているのかい?』
何も知らないので、首を横に振っておく。鬼が一瞬目を丸くする。すぐに目を閉じて、フゥと息を吐いた。
『この先は魔王様の領地だ。用のない者が行くべきところではない』
「魔王領」
鬼の言ったことの中の気になる単語を、口の中で転がす。鬼が一度頷く。
『この先は魔王ンッナンシリス様がいらっしゃる。我々は衛兵であり、”炎の番人”の一人だ。君達がこの先に行くことは止めさせてもらおう』
コストイラが唇を尖らせる。
「オレ達もそうさせてもらいたいな。でもなぁ、オレ達はこの地に明るくなくてなぁ、どこに行ったらいいと思う?」
『目的地はあるのか?』
コストイラが皆の顔を見る。全員が首を振った。どこにも目的地がないらしい。コストイラが肩を竦める。
「この通りだ」
『なるほど。ではムジにはもう行ったか?』
「温泉の種類が多くてビビったわ」
『では、この先に行くといい。この先にはムジほどではないが、栄えている街がある。温泉はないが、美味い料理がある。オススメだ』
「ほぉ、ありがとう」
コストイラが鬼に礼を言うと、教えてもらった方向に歩き始めた。
魔王の領地はろくなことにならない。インサーニアの時もジャスレの時も、異常に強い奴と戦うことになる。コストイラ的には戦いたいのだろうが、アレン的には絶対に避けたい。
にしても、なぜコストイラはあんなにもあっさりと引き下がったのだろうか。
アレンはどこか胡乱な目をコストイラに向けた。
地獄だ。
ヂドルのような皮肉から名付けられたわけではない、心の底からの地獄だ。
「もしかして私たちが立ち寄ったのってムジ?」
アストロが振り返り、先ほどまでいた地獄の温泉街を見た。地獄と呼ばれる地域の街ムジは、勇者ゴートが晩成を過ごしたとされている場所だ。
世界には”英雄”ジョコンドと、”異世界人”ゴートに関する本が多く存在している。その中の一つにムジのことが記されている。ムジには針山が存在し、さらには鬼が多く住んでいる。その鬼を従えることで飛躍的に活躍の場所を増やしたのだとか。
今、アレン達の目の前には鬼が働いていた。青鬼は洗濯籠を側に置き、川で洗濯している。完全に日常的な生活をしている。あまり刺激しないほうがいいだろう。
「少し遠回りするか」
コストイラが珍しく遠回りを提案する。珍しいと思いつつ、同意して歩き出す。何かキセルのようなものから紫煙をふかしている鬼がこちらを見ている。どこか流し目でこちらを窺っている。誘っているようにも見える。
「何だ、あの鬼。見てくるだけだな」
「娼婦かしらね」
「そういうの平気で言うのどうなんだ?」
「何? そういうのって? 娼婦だって立派な職業よ」
「あい、すいません」
コストイラがアストロに口で負けた。こうして軽く口喧嘩ができる相手というのにアレンは憧れる。アレンは相手のことを気遣ってしまい、思っていることを口に出せない。どうやって、これは言っても大丈夫だという信頼を勝ち取ったのだろう。
アレン達のレベルになれば、少しの距離くらいだったら、普段通りに見えてしまう。それは向こう側も同じようで、鬼の一部がこちらに目を向けたまま固まっている。こちらの出方を窺っているのだろう。
1人の鬼が近づいてきた。武器を携帯しているが、両手を挙げた状態で近づいてきている。敵意がないことを示しているのだろうか。いつでも武器を抜けるようにしておきながら相対する。
『君達はどこに行きたいのだね?この先がどういう場所か知っているのかい?』
何も知らないので、首を横に振っておく。鬼が一瞬目を丸くする。すぐに目を閉じて、フゥと息を吐いた。
『この先は魔王様の領地だ。用のない者が行くべきところではない』
「魔王領」
鬼の言ったことの中の気になる単語を、口の中で転がす。鬼が一度頷く。
『この先は魔王ンッナンシリス様がいらっしゃる。我々は衛兵であり、”炎の番人”の一人だ。君達がこの先に行くことは止めさせてもらおう』
コストイラが唇を尖らせる。
「オレ達もそうさせてもらいたいな。でもなぁ、オレ達はこの地に明るくなくてなぁ、どこに行ったらいいと思う?」
『目的地はあるのか?』
コストイラが皆の顔を見る。全員が首を振った。どこにも目的地がないらしい。コストイラが肩を竦める。
「この通りだ」
『なるほど。ではムジにはもう行ったか?』
「温泉の種類が多くてビビったわ」
『では、この先に行くといい。この先にはムジほどではないが、栄えている街がある。温泉はないが、美味い料理がある。オススメだ』
「ほぉ、ありがとう」
コストイラが鬼に礼を言うと、教えてもらった方向に歩き始めた。
魔王の領地はろくなことにならない。インサーニアの時もジャスレの時も、異常に強い奴と戦うことになる。コストイラ的には戦いたいのだろうが、アレン的には絶対に避けたい。
にしても、なぜコストイラはあんなにもあっさりと引き下がったのだろうか。
アレンはどこか胡乱な目をコストイラに向けた。
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