メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
372 / 684
20.シン・ジゴク

14.悪鬼羅刹の如く

しおりを挟む
 アレンが変な目を向けてきていることに気づきながらも、コストイラは何も指摘することなく前を歩く。実は気づかれないように魔王領に近づいている。
 それに気づかない勇者一行が何かを見つける。遠くの岩の上にハイオーガが見える。こちらを見つめている。どう考えても気づいている。

 アレンの思考が100%、どう逃げるかに注がれている。どうすれば許してもらえるのだ。

 ドゴンと岩を破壊して飛び上がった。どう見てもこちらに向かってきている。
 ハイオーガは両手を組んで、ハンマーのように溜めている。そして、着地と同時に振り下ろされた。地面が砕け、波打った。
 一目散に退散していた勇者一行が転んでしまう。コストイラがすぐに立ち上がり、刀を構えた。それよりも先に復活していたシキが、振り下ろされた両拳の上に乗り、左腕を駆け上りながら斬っていった。

『むぐぉ!?』

 ハイオーガが両拳を解き、シキを捕まえようとするが、止めることができない。伸ばされた右手に乗り移り、頭を目指す。

 足元では、コストイラが刀を振るった。浅い傷でも束ねれば、雨滴が岩を貫通するように、深い傷に変わる。
 コストイラは無数の斬撃を一つに束ねて、巨人の足にぶつけた。ハイオーガの脛の骨が半ばまで斬れた。
 ハイオーガの足が、ゴリゴリと音を立てながらズレ始めた。それに合わせて、繋がっている肉の繊維がブチブチと千切れていく。足の繊維が完全に断絶された。もうまともに動いてくれないだろう。

 しかし、ハイオーガの真価は足にない。その強靭な上半身から繰り出される攻撃にこそ、目を張るものがあるのだ。

 ハイオーガが、傷だらけの腕を振り回す。その剛腕が切り裂く空気の音が、威力の硬さを物語っていた。当たったら死ぬ。それは本能に訴えてくる恐怖だ。
 コストイラはそんなもの無視して体を密着させる。鬱陶しいので追い払いたいが、コストイラは意地でも離れまいとする。そこまで必死になって生と死の境にいるコストイラを見て、アシドは苛立ちに駆られる。これではまるで自分がすぐに逃げる臆病者のようではないか。

 しかし、時はすでに遅く、アシドの参戦を待たずして、コストイラとシキの2名での狩りが終了した。






 鬼と見間違うほど立派な角を携えた悪魔が、その前で膝をついている部下を睨みつけている。握る力が強すぎて、巨体に合わせて作られた特注のグラスに罅が入った。

『ナンビスドイーダがやられた?』

 怒気どころか殺気すらパンパンに詰まった声に、部下は震え上がってしまう。この膨れ上がるオーラだけで失神してしまいそうだ。

 それに気づいた悪魔がオーラを霧散させた。

『別にゲーズに怒っているわけではない。ナンビスドイーダは誰にやられたのだ』

 もしここで誰かを答えたならば、その者に最大限の怒りの矛先が向くことだろう。次にどこで、と聞き、答えれば、すぐさまそこに向かうだろう。

 しかし、それは駄目だ。近衛騎士団”炎の番人”の団長のセンテンロールに城から出すなと申し付けられているのだ。

『誰にやられたのだ』
『……勇者です』
『勇者、舞い戻ってきたか。今、どこにいる』

 ンッナンシリスは一瞬で殺気を解放させ、ゲーズはあっという間もなく失神した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...