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20.シン・ジゴク
22.その者、臆病者か小心者かあるいは
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ンッナンシリスは仲間想いの魔王である。これは部下からの評価だ。無論第三者からでも、そう感じる者はいる。
しかし、ンッナンシリスという者の本性を知る者は、そう評価しない。ンッナンシリスよりも先輩の魔王や年上の冒険者はこう評価する。
臆病者、そして、小心者、と。
ンッナンシリスは長いものに巻かれるタイプの者だ。自分よりも弱い者には強く出て、強い者にはへりくだる。
グレイソレアはう~ん、ちょっとそういう方は、と言葉を窮し、フォンははっきりと内強外弱という渾名をつけた。ゴイアレはこの手のタイプが嫌いなので、屑、もしくは愚図と呼んでいる。
ンッナンシリスはそれでいいと考えていた。それこそが賢い生き方だと思っているからだ。
だからこそ現在ンッナンシリスは頭を抱えていた。原因は長いものフォンからの手紙。その内容は大まかに3つに分けられる。
1つ目。勇者達と戦い成長させろ。
2つ目。勇者達に負けろ。
3つ目。エンドローゼを傷つけるな。
文面から考えて、エンドローゼは勇者一行の1人だ。しかし、エンドローゼの特徴が書いていない。城から見下ろしても、その髪の色は誰だったとしても特徴的だ。これだけでも記してくれればよかったのに。
門衛が戦い始めた。少しだけ観察してみよう。これで手を抜いて戦わなければならないのか、全力で戦っても負けてしまうのかがはっきりする。どれ、今代の勇者の実力でも見てやるか、と一度も勇者と戦ったことのない魔王が余裕を見せていると、一瞬で部下がやられた。
瞬間的にンッナンシリスの頭に血が上った。よくも私の部下をやってくれたな、とキレたが、実力差がありすぎる。きっと挑んでも、いいところまで行ってもやられてしまうだろう。
え?勇者ってこんな強いの? 勇者をボコボコにしたグレイソレアやフォンって凄くね?
センテンロールも戦い始めたが、勇者の戦い方ではない。殴り飛ばされてもすぐに復帰? 全身焼かれても声一つ出さずに反撃? 戦い方が人のそれではない。あれと戦うの? 無理だろ。死ぬわ、これ。
しかし、センテンロールにまで死なれてしまっては、絶望まっしぐらだ。ンッナンシリスは間に入ることにした。
『待て、貴様等。他人の家の前で何をしている』
センテンロールが歓喜に膝をついた。こういうところが可愛らしく、ずっと側に置いておきたくなる。赤髪の侍がこちらを睨んできた。纏う雰囲気がコレスティアーノのそれだ。殺気が違う。
ぶるぶると震え上がりたいが、魔王という立場上することができない。
『ンッナンシリス様がなぜこちらに。ここは私共に任せてもらえれば、すぐに奴等を排除して見せましょう』
『止めろ。玉砕するだけだ』
ンッナンシリスはセンテンロールの肩に手を置き、諫めた。センテンロールは己の未熟さに奥歯を噛み締める。
ンッナンシリスがどう死なずにやり過ごすかを考えながら顔を上げると、目の前には小さな足の裏があった。完全に戦闘能力を取り戻したシキである。
小柄なシキのドロップキックなどなんともないはずなのに、ンッナンシリスの体は背骨がギシギシ鳴るほど反らされた。鼻が折れ、穴に血が入り込んだせいで息がしづらい。
シキの左手から糸が出てくる。ピアノ線のように細い糸が数本飛び出し、ンッナンシリスの白くて大きな角に巻き付いた。
シキが一気に糸を引くと、ンッナンシリスの頭が前に動かされ、シキとの距離が小さくなる。シキは自身の糸を足場にして力を溜め、踵を落とした。
ンッナンシリスの鼻に詰まっていた血が噴き出た。そこで、ようやくセンテンロールが動いた。
『貴様!』
炎の手で掴み取ろうとするが、糸を素早く取り外し、早々に離脱する。
『待て、貴様等!! もういい。恥も外聞も捨てよう。フォンの言っているエンドローゼはどいつだ』
「わ、私です」
まさかここでフォンの名前を聞くとは思わなかった。その為、警戒が間に合わず、エンドローゼが手を上げてしまった。
『戦場であまり活躍できていない、レベルの低い奴は誰だ?』
全員が手を上げた。焦げ茶髪は手をあげさせられているあたり、戦いたくないのだろう。いや、それよりも。
『お前は違うだろ、赤髪』
「は?」
「そうよ、譲りなさいよ」
「え」
「お前ばっか活躍させてたまるかよ」
「え~~」
肩を落としながら、コストイラは後ろに下がった。
『よし。お前等と戦おう』
「あ? オレ等なら勝てるかもってことか、ごらぁ!?」
『ち、違わい。フォンに命令されたんだよ。もぉ何で俺ばっかりこんな役なんだよぉ』
ンッナンシリスのキャラが壊れている。そんなにフォンが恐ろしいのだろうか。
「フォンってどんだけ強いのよ」
『私では天地がひっくり返っても勝てんな』
げんなりとしたアストロの質問にも丁寧に答える。
『まず、私が15人いても敵うかどうか』
スススとンッナンシリスの目が逸れていく。何か思い出したくないことでもあるのだろうか。
しかし、ンッナンシリスという者の本性を知る者は、そう評価しない。ンッナンシリスよりも先輩の魔王や年上の冒険者はこう評価する。
臆病者、そして、小心者、と。
ンッナンシリスは長いものに巻かれるタイプの者だ。自分よりも弱い者には強く出て、強い者にはへりくだる。
グレイソレアはう~ん、ちょっとそういう方は、と言葉を窮し、フォンははっきりと内強外弱という渾名をつけた。ゴイアレはこの手のタイプが嫌いなので、屑、もしくは愚図と呼んでいる。
ンッナンシリスはそれでいいと考えていた。それこそが賢い生き方だと思っているからだ。
だからこそ現在ンッナンシリスは頭を抱えていた。原因は長いものフォンからの手紙。その内容は大まかに3つに分けられる。
1つ目。勇者達と戦い成長させろ。
2つ目。勇者達に負けろ。
3つ目。エンドローゼを傷つけるな。
文面から考えて、エンドローゼは勇者一行の1人だ。しかし、エンドローゼの特徴が書いていない。城から見下ろしても、その髪の色は誰だったとしても特徴的だ。これだけでも記してくれればよかったのに。
門衛が戦い始めた。少しだけ観察してみよう。これで手を抜いて戦わなければならないのか、全力で戦っても負けてしまうのかがはっきりする。どれ、今代の勇者の実力でも見てやるか、と一度も勇者と戦ったことのない魔王が余裕を見せていると、一瞬で部下がやられた。
瞬間的にンッナンシリスの頭に血が上った。よくも私の部下をやってくれたな、とキレたが、実力差がありすぎる。きっと挑んでも、いいところまで行ってもやられてしまうだろう。
え?勇者ってこんな強いの? 勇者をボコボコにしたグレイソレアやフォンって凄くね?
センテンロールも戦い始めたが、勇者の戦い方ではない。殴り飛ばされてもすぐに復帰? 全身焼かれても声一つ出さずに反撃? 戦い方が人のそれではない。あれと戦うの? 無理だろ。死ぬわ、これ。
しかし、センテンロールにまで死なれてしまっては、絶望まっしぐらだ。ンッナンシリスは間に入ることにした。
『待て、貴様等。他人の家の前で何をしている』
センテンロールが歓喜に膝をついた。こういうところが可愛らしく、ずっと側に置いておきたくなる。赤髪の侍がこちらを睨んできた。纏う雰囲気がコレスティアーノのそれだ。殺気が違う。
ぶるぶると震え上がりたいが、魔王という立場上することができない。
『ンッナンシリス様がなぜこちらに。ここは私共に任せてもらえれば、すぐに奴等を排除して見せましょう』
『止めろ。玉砕するだけだ』
ンッナンシリスはセンテンロールの肩に手を置き、諫めた。センテンロールは己の未熟さに奥歯を噛み締める。
ンッナンシリスがどう死なずにやり過ごすかを考えながら顔を上げると、目の前には小さな足の裏があった。完全に戦闘能力を取り戻したシキである。
小柄なシキのドロップキックなどなんともないはずなのに、ンッナンシリスの体は背骨がギシギシ鳴るほど反らされた。鼻が折れ、穴に血が入り込んだせいで息がしづらい。
シキの左手から糸が出てくる。ピアノ線のように細い糸が数本飛び出し、ンッナンシリスの白くて大きな角に巻き付いた。
シキが一気に糸を引くと、ンッナンシリスの頭が前に動かされ、シキとの距離が小さくなる。シキは自身の糸を足場にして力を溜め、踵を落とした。
ンッナンシリスの鼻に詰まっていた血が噴き出た。そこで、ようやくセンテンロールが動いた。
『貴様!』
炎の手で掴み取ろうとするが、糸を素早く取り外し、早々に離脱する。
『待て、貴様等!! もういい。恥も外聞も捨てよう。フォンの言っているエンドローゼはどいつだ』
「わ、私です」
まさかここでフォンの名前を聞くとは思わなかった。その為、警戒が間に合わず、エンドローゼが手を上げてしまった。
『戦場であまり活躍できていない、レベルの低い奴は誰だ?』
全員が手を上げた。焦げ茶髪は手をあげさせられているあたり、戦いたくないのだろう。いや、それよりも。
『お前は違うだろ、赤髪』
「は?」
「そうよ、譲りなさいよ」
「え」
「お前ばっか活躍させてたまるかよ」
「え~~」
肩を落としながら、コストイラは後ろに下がった。
『よし。お前等と戦おう』
「あ? オレ等なら勝てるかもってことか、ごらぁ!?」
『ち、違わい。フォンに命令されたんだよ。もぉ何で俺ばっかりこんな役なんだよぉ』
ンッナンシリスのキャラが壊れている。そんなにフォンが恐ろしいのだろうか。
「フォンってどんだけ強いのよ」
『私では天地がひっくり返っても勝てんな』
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