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21.月の裏側
5.謎の館
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コストイラが苛ついているが、それも仕方ないことだ。今までが何かありすぎたのだ。
コストイラ達は魔物と出会わない世の中を目指しているはずなのに、魔物が出てくる事に違和感を覚えるという矛盾を抱えている。にもかかわらず、それを誰も指摘できない。
魔物に出会ないことで苛ついていたコストイラが、隣の部屋に行くための扉に手を掛けた。
ゴト。
何かが動いた音がした。コストイラが反応して部屋の中を見渡すが、気になるものはない。気のせいにしておきたいが、そんなはずがない。
もう一度ちゃんと観察する。
ところどころ破れているが、それなりに価値があったことを窺わせる絵画。かなりの値打ちが予想される骨董品の壺。かつては青々とした緑が生えていたのであろう、罅割れて放置されたのであろう鉢。おそらくその鉢に植えられていたのだろう植物や土。
明らかに争った形跡があり、それも跡が新しい。やはりディーノイはいる。そしてここで何かと戦った。こんなにも激しい形成があるにもかかわらず、音が聞こえてこなかった。それだけでディーノイの力量の高さが見えてくる。
ディーノイの容姿も戦闘スタイルも何もかもが不明だが、コストイラは戦いたいと考え始めた。
「どうしたの?」
いつまで経ってもノブを握って動こうとしないコストイラに、アストロが声をかける。
「あぁ、何でも……」
コストイラの意識は現実に戻され、何でもないと対応しようとした。しかし、そこで気付いた。今、骨董品の壺がなかったか?
何が動いた音なのか確かめようとした時、向こうから動いてきた。マジックポットの口が光を放ち、魔物が出現した。
人の上半身に蜘蛛の下半身。アラクネが複数体出てきた。どうやらレベルの高いマジックポットは魔物を複数体召喚することができるようだ。
壺があることに気付いておきながら、マジックポットである可能性を考えていなかった己に舌打ちして、刀を抜く。筋骨隆々なアラクネが両手持ちのメイスで頭をかち割ろうとしてくる。コストイラはメイスに軽く刀を当てかち上げると、アラクネの胸が無防備に晒される。その無防備な腹をアシドが突き刺した。
両手に剣を持ったアラクネが2体突っ込んでくる。シキはシロガネから貰った魔剣に魔力を流した。何でもなさそうにぶつかったロングソードが、アツアツのナイフを入れられたバターのように、簡単に切れる。シキはそのままの勢いでアラクネ2体を切った。
『ほぉ、あの勇者は魔剣持ちだったのか。資料に書いていなかったぞ。カンポリーニの奴め、あとで文句を言っておかなければな』
『……』
タジャンクの部屋からでもディーノイは魔剣だと見抜けるほど、ディーノイの魔力探知能力が高い。尻を床につけた状態で、ぐったりと背を壁につけて項垂れているタジャンクにとって、絶望に値する情報だ。お前はどうあがいても勝てない、と言われたに等しい。
ディーノイほどの魔力探知の高さ、それに加えて精度が高く、魔術師が魔力を溜めているのが丸見えであると言っていい。
これと戦って勝てっていうのか? 無理だろ。
しかも、今はとある事情により、声が出せない。魔術を出すのに声は要素として必要ないが、不便である。というか、そもそも声を出すのに必要な、外部からの魔素を取り込む器官が喰われている。
体術もある程度学んでいるとはいえ、相手は月での物理最強だ。挑んだところで勝てるビジョンが浮かばない。
タジャンクは決死の思いで飛び出し、部屋の扉を目指した。ディーノイは何でもないように剣を振るい、タジャンクの左腕を切り落とした。
『フム。これぐらい削ればなんとかなるだろう。……なるよな』
コストイラ達は魔物と出会わない世の中を目指しているはずなのに、魔物が出てくる事に違和感を覚えるという矛盾を抱えている。にもかかわらず、それを誰も指摘できない。
魔物に出会ないことで苛ついていたコストイラが、隣の部屋に行くための扉に手を掛けた。
ゴト。
何かが動いた音がした。コストイラが反応して部屋の中を見渡すが、気になるものはない。気のせいにしておきたいが、そんなはずがない。
もう一度ちゃんと観察する。
ところどころ破れているが、それなりに価値があったことを窺わせる絵画。かなりの値打ちが予想される骨董品の壺。かつては青々とした緑が生えていたのであろう、罅割れて放置されたのであろう鉢。おそらくその鉢に植えられていたのだろう植物や土。
明らかに争った形跡があり、それも跡が新しい。やはりディーノイはいる。そしてここで何かと戦った。こんなにも激しい形成があるにもかかわらず、音が聞こえてこなかった。それだけでディーノイの力量の高さが見えてくる。
ディーノイの容姿も戦闘スタイルも何もかもが不明だが、コストイラは戦いたいと考え始めた。
「どうしたの?」
いつまで経ってもノブを握って動こうとしないコストイラに、アストロが声をかける。
「あぁ、何でも……」
コストイラの意識は現実に戻され、何でもないと対応しようとした。しかし、そこで気付いた。今、骨董品の壺がなかったか?
何が動いた音なのか確かめようとした時、向こうから動いてきた。マジックポットの口が光を放ち、魔物が出現した。
人の上半身に蜘蛛の下半身。アラクネが複数体出てきた。どうやらレベルの高いマジックポットは魔物を複数体召喚することができるようだ。
壺があることに気付いておきながら、マジックポットである可能性を考えていなかった己に舌打ちして、刀を抜く。筋骨隆々なアラクネが両手持ちのメイスで頭をかち割ろうとしてくる。コストイラはメイスに軽く刀を当てかち上げると、アラクネの胸が無防備に晒される。その無防備な腹をアシドが突き刺した。
両手に剣を持ったアラクネが2体突っ込んでくる。シキはシロガネから貰った魔剣に魔力を流した。何でもなさそうにぶつかったロングソードが、アツアツのナイフを入れられたバターのように、簡単に切れる。シキはそのままの勢いでアラクネ2体を切った。
『ほぉ、あの勇者は魔剣持ちだったのか。資料に書いていなかったぞ。カンポリーニの奴め、あとで文句を言っておかなければな』
『……』
タジャンクの部屋からでもディーノイは魔剣だと見抜けるほど、ディーノイの魔力探知能力が高い。尻を床につけた状態で、ぐったりと背を壁につけて項垂れているタジャンクにとって、絶望に値する情報だ。お前はどうあがいても勝てない、と言われたに等しい。
ディーノイほどの魔力探知の高さ、それに加えて精度が高く、魔術師が魔力を溜めているのが丸見えであると言っていい。
これと戦って勝てっていうのか? 無理だろ。
しかも、今はとある事情により、声が出せない。魔術を出すのに声は要素として必要ないが、不便である。というか、そもそも声を出すのに必要な、外部からの魔素を取り込む器官が喰われている。
体術もある程度学んでいるとはいえ、相手は月での物理最強だ。挑んだところで勝てるビジョンが浮かばない。
タジャンクは決死の思いで飛び出し、部屋の扉を目指した。ディーノイは何でもないように剣を振るい、タジャンクの左腕を切り落とした。
『フム。これぐらい削ればなんとかなるだろう。……なるよな』
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