メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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21.月の裏側

14.苦難の道

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「っ!」

 アシドが槍を振るった。

『クェ!?』

 アックスビークが悲鳴を出して倒れていく。これで10体目だ。パレードだと判断するにも少なく、しかし、敵として多い数を倒している。

『ピィ!?』

 シキがハーピーを蹴飛ばしたようだ。はっきり断言しないのは、シルエットでしか見えていないからだ。

 現在、深い霧のようなものに包まれている。ほとんど見えないが、3,4m先は見えている。
 通常、霧に向かって光を発すると、乱反射して視界がホワイトアウトしてしまうが、光を作っていかないからだ。

 コストイラやシキならともかく、アシドが攻撃できている。僅かだが、光がある。奥から光が来ているのだ。奥に何かある。
 光はどこか優しく、まるで蠟燭の火だ。まるで、奥には火を扱える知能のあるものがいるような。

 それを確認する前に、この道を抜けなくてはならない。それがなかなかに難しい。
 抜けるだけじゃん、と思うかもしれないが、それが難しい。理由が今もこの場を支配している深い霧だ。前が分からず、足元が見えないのだ。

 アシドが槍を白状のようにして地面を叩いている。
 コストイラがアシドの前に出る。目の前の霧が割れ、大斧が飛び出してきた。
 視界の通らない白い闇の空間に、人馬が参戦してきた。






『このあたりでもう大丈夫ですよ』

 グレイソレアが目を瞑ったままの顔で微笑んだ。ヲルクィトゥは少し眉根を寄せながら苦笑する。

『あ! 信用してませんねぇ?』

 悪戯っぽい笑みを浮かべながら、人差し指でヲルクィトゥの胸をぐりぐりと押す。随分と子供のような行為だが、昔から知る者と出会えたことで、心が昔に戻っているのだろう。

『ところで』

 指を胸から剥がし、後ろでも手を組んだ。ヲルクィトゥは先程から表情も体勢も変わっていなかったが、話の転換に片眉を上げた。

『ヲルクィトゥ、記憶を失っていませんか?』
「……」

 心から動揺した。カンジャやヴェスタでは一切分からないスピードで、表情を戻した。しかし、相手はグレイソレアだ。薄く目を開けて、心を見透かしてくる。

『やはり』
「私は放浪者だからな」

 ヲルクィトゥは自嘲気味に笑った。グレイソレアはクスクス笑いながら、体を縮めた。

『生物は正気を失い、弱者は獣の心を曇らせ、放浪者はその記憶を盗まれる。でしたっけ』
「えぇ」
『記憶の喪失は進んでいるのですか?』
「分かりません。今、私が持っている記憶がどれ程のものなのか、分からないのです」

 グレイソレアは片目を瞑り、ヲルクィトゥを見る。その圧倒的なシリアスアトモスフィアにヲルクィトゥも口を挟めない。
 子供っぽい言動や見た目をしていることから、この事実に辿り着ける者は少ないが、グレイソレアは原初の魔王だ。その歳はすでに4桁であり、ヲルクィトゥの400年以上も先輩だ。
 その圧倒的お姉ちゃんグレイソレアは、可愛い弟にアドバイスをしてあげる。

『魔大陸に行ってみてはいかがでしょう?』
「魔大陸。行ったことない・・・・・・・ので、少し怖いですね」
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