メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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21.月の裏側

13.異界の客人

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 橋を渡り切ってから数分歩いた。先に少し広い部屋があった。どこか宗教のための部屋に見える。
 天頂はドーム状になっており、自然の光が入ってきている。部屋を構成しているモザイクや大理石が光を反射して増幅している。その光は幻想的な光の空間となって、堂内を満たしていた。
 全体の色調が黄金色であることと、何より黄金モザイクの煌きが、外部とは異なる非日常な光の状態を作り出している。
 その光の中に男が一人立っていた。身長が170㎝程、筋肉ある程度あり、体重は90㎏はありそうだ。格好は見たことない服だ。しかし、その格好について聞いたことがある。異世界から来たものの格好だ。

「君達が俺を呼んだのか?」

 鋭すぎる三白眼がこちらを射抜く。

「いや、違ェけど」

 コストイラが首を振る。しかし、鋭い目つきが変わった。めちゃくちゃに疑っている。

「いや、アンタは武器を持っている。俺を殺す気だろ!」

 どうやら話が通じないタイプかもしれない。

 男が構えた。何の構えか知らないが、おそらく徒手での戦いのための構えだ。

「俺に武器は通じないぞ」

 面倒なので放置したいが、無視したら後ろから殴りかかってきそうだ。

 殺すのは口車に乗った気がしてしまうので、気絶させることにした。しかも武器は使ってやらない。

「フッ!」

 男が拳を突き出してくる。握り拳を潰したような形。やはり、何かしらの拳法を修めているのは明白だ。
 コストイラは男の拳の内側から腕を回し、拳を弾く。その腕の振りの勢いのまま、足を振り上げた。
 男は足と顔の間に手を割り込ませ、受け止めた。そのままキャッチした。男はコストイラの軸足を蹴り、跳ね上げる。男は宙に浮いた体を、力任せに引き上げる。
 コストイラは自慢の腹筋を折り曲げ、急激に顔を近づけた。
 男にとって、その行動は予想外であり、コストイラの頭突きをまともに食らう。しかし、無理な体勢であったため、威力はそこまで高くない。とはいえ、男はコストイラの足から手を離した。
 コストイラが手を床につけた瞬間、クッションのように折り曲げていた肘を伸ばし、腹筋も伸ばす。男の頭が後ろに下がっているため、狙うことができず、胸を蹴り飛ばす。男の体は僅かに浮き、着地と同時に蹈鞴を踏む。
 男に意識はコストイラだけに向いていない。何故なら、男の敵はコストイラだけではないからだ。
 シキは参加しようとしているが、アストロに止められている。コストイラはアストロに感謝しながら、体勢を整えて構えをとる。
 男が鋭く足先蹴りを繰り出すが、コストイラは半身で躱す。そして、足首を下から押し上げた。
 男のバランスが少し崩れる。コストイラはそこを見逃さず、腕を伸ばして顔面をキャッチする。そのまま奥に押し込むと、男の体が後ろに倒れていく。
 コストイラが肘を曲げると、それに合わせて男の体も移動する。男がコストイラの腕を掴み、捻ろうとする。ビクともしない。肘を殴りつけるが、手は開かない。
 男の頭を床に叩きつける。頭が半分めり込み、男の意識が刈り取られた。







「はっ!?」

 異世界から飛ばされてきたばかりの酒井透は、目を覚ました瞬間に上体を起こした。目の前には光の空間に似つかわしくない黒ずくめの男がいる。肌の露出がほとんどなく、何も情報が得られない。

「なんだ、お前」

 透が男に話しかけるが、何も返ってこない。

『お前は”ゴトウシュンタ”を知っているのか?』

 透は眉根を寄せた。ゴトウシュンタはどう考えても日本人だ。自分も同じ出身だが、聞いたことはない。人口が1.2億人の国なのだから、知らない可能性の方が高いし、すでに亡くなっている可能性もある。

『”アンドウケイイチ”はどうだ?』
「っ!? 安藤先輩」

 安藤圭一といえば、正義の押し売り大魔神と恐れられていた先輩だ。確か3年前に亡くなったはずだ。

「安藤先輩がどうし……?」

 透の言葉が終わる前に、胸に剣が刺されていた。

「え?」
『”アンドウケイイチ”ことヴェスタの味方でも敵でも、君に居場所はないんだ』
「な、こい……」

 一気に怒りが沸いてきた透が剣を掴もうとする。しかし、思った通りに体が動かない。すでに剣を掴んでいる想定なのに、まだ辿り着いていない。
 それを見た瞬間、すべてが真っ黒に塗り固められた。
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