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22.月の都
2.秘密の通路
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リリスは男が嫌いだ。いや、嫌いというよりは表現として、易しすぎるか。
リリスの人生は男一色だった。前半は男を愛した期間、後半は男を憎んだ期間だ。
リリスは生涯で1人の男を愛した。その男とその間に何人もの子をもうけたが、別の女が現れて、生活は一変した。
男はその女と結婚した。その事実が憎くて憎くてたまらなかった。だからこそ男全体を憎んだ。そして、男児に害を与えるようになった。
弾かれた魔力弾の陰からコストイラが現れる。空中で抜刀し、伸ばされている腕を狙う。
リリスは咄嗟に手を引っ込めるが、刀の方が早く届く。リリスの右手首がズバリと斬り飛ばされる。
しかし、リリスの意識はコストイラの方にあった。落下地点を予測して尻尾を繰り出す。痛みに叫ぶことはいつでもできる。だが、こいつを殺すのは今しかできない。
リリスが目を丸くする。そのポイントにコストイラが来なかった。コストイラは炎を纏って、螺旋状に空中を飛び上がったのだ。リリスが目を見開く中、コストイラの体から離れた炎が彼女の顔を焼く。どうにか炎を剝がそうと、手を伸ばす。その腕ごと、コストイラは両断した。
『アアアアアアアア!!』
顔の表面は半分に切られ、両手を失った。それでもなお、リリスはコストイラを殺そうと、口内に魔力を溜めた。
リリスの顔の前を、細い糸が通った。何かと思う間に、その糸を伝って白銀の少女が昇ってきた。
リリスが口内に溜めた魔力を吐き出す前に、顎を切り裂かれた。その爆発に巻き込まれて、コストイラが吹き飛ばされる。天井に張り付いていたシキがコストイラを回収して着地する。
「オレいたよな!?」
「アストロが、コストイラなら平気って」
「あの女!」
コストイラはシキの手から解放されると、一気に詰め寄っていった。
「ようこそいらっしゃいました」
旅館の女将、アドミンが丁寧に腰を折った。
「すみませ~ん。突然の来訪とかって受け付けます?」
鮮やかな黄色の髪に付いた雪を払う少女が、快活な声で聴いてきた。
「はい。大丈夫ですよ。うちには今、お客様はおりませんので、実質貸し切り状態です」
「おぉ! やったね、アスミンちゃん。貸し切りだって!」
「は、はい。そうですね。温泉は初めてなので楽しみです」
黄色の髪の少女が、隣の赤髪の少女に抱き着いた。赤髪の少女は委縮しながら、肯定している。
「お客様は2名様ですか?」
「あ、いえ。4人です。後2人はまだ外に」
「ジッタリー!そっち頼む!」
「よし!」
ジッタリーが雪上から杖を向ける。その先には8m級のジャイアントイエティがいた。
普段、魔物が近づかない温泉宿にも、時折魔物が近づいてくることがある。温泉宿には退治できる者がいないので、追い返すことしかできない。
何とかヘイトを稼ぎ、外部へと誘導するのが、男衆の仕事だ。
今回のジャイアントイエティは手強く、なかなか誘導通りに行ってくれない。
「ヤベェ! ジョッツの方に行ったぞ!」
「くそ!」
ジョッツは慌てて魔石を取り出そうとするが、鞄の中で何か引っかかっているのか、全然取り出せない。いくら今、木の上にいるからといって、高さは3m。ジャイアントイエティの一撃を食らってしまう高さだ。
すまない、ゴーラ。そう思った瞬間、
「ウラァ!」
裂帛の込められた声が響いた。
ドゴォンと重たい音がしたかと思うと、ジャイアントイエティが歪んだ。全面がひしゃげ、めり込み、そして弾けた。拳の威力が体内で完結できず、体後方が破裂したのだ。
「平気かい? 兄ちゃん」
「あ、あぁ。アンタは?」
「オレァ、ロッド。あそこにいらっしゃるのがコウガイ様だ」
黒を基調とした服を身に包んだ、軽薄そうな男は、後頭部を掻きながら、申し訳なさそうに言った。
「オレ達迷子なんだよね。温泉宿ってどこか分かる?」
リリスの人生は男一色だった。前半は男を愛した期間、後半は男を憎んだ期間だ。
リリスは生涯で1人の男を愛した。その男とその間に何人もの子をもうけたが、別の女が現れて、生活は一変した。
男はその女と結婚した。その事実が憎くて憎くてたまらなかった。だからこそ男全体を憎んだ。そして、男児に害を与えるようになった。
弾かれた魔力弾の陰からコストイラが現れる。空中で抜刀し、伸ばされている腕を狙う。
リリスは咄嗟に手を引っ込めるが、刀の方が早く届く。リリスの右手首がズバリと斬り飛ばされる。
しかし、リリスの意識はコストイラの方にあった。落下地点を予測して尻尾を繰り出す。痛みに叫ぶことはいつでもできる。だが、こいつを殺すのは今しかできない。
リリスが目を丸くする。そのポイントにコストイラが来なかった。コストイラは炎を纏って、螺旋状に空中を飛び上がったのだ。リリスが目を見開く中、コストイラの体から離れた炎が彼女の顔を焼く。どうにか炎を剝がそうと、手を伸ばす。その腕ごと、コストイラは両断した。
『アアアアアアアア!!』
顔の表面は半分に切られ、両手を失った。それでもなお、リリスはコストイラを殺そうと、口内に魔力を溜めた。
リリスの顔の前を、細い糸が通った。何かと思う間に、その糸を伝って白銀の少女が昇ってきた。
リリスが口内に溜めた魔力を吐き出す前に、顎を切り裂かれた。その爆発に巻き込まれて、コストイラが吹き飛ばされる。天井に張り付いていたシキがコストイラを回収して着地する。
「オレいたよな!?」
「アストロが、コストイラなら平気って」
「あの女!」
コストイラはシキの手から解放されると、一気に詰め寄っていった。
「ようこそいらっしゃいました」
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「すみませ~ん。突然の来訪とかって受け付けます?」
鮮やかな黄色の髪に付いた雪を払う少女が、快活な声で聴いてきた。
「はい。大丈夫ですよ。うちには今、お客様はおりませんので、実質貸し切り状態です」
「おぉ! やったね、アスミンちゃん。貸し切りだって!」
「は、はい。そうですね。温泉は初めてなので楽しみです」
黄色の髪の少女が、隣の赤髪の少女に抱き着いた。赤髪の少女は委縮しながら、肯定している。
「お客様は2名様ですか?」
「あ、いえ。4人です。後2人はまだ外に」
「ジッタリー!そっち頼む!」
「よし!」
ジッタリーが雪上から杖を向ける。その先には8m級のジャイアントイエティがいた。
普段、魔物が近づかない温泉宿にも、時折魔物が近づいてくることがある。温泉宿には退治できる者がいないので、追い返すことしかできない。
何とかヘイトを稼ぎ、外部へと誘導するのが、男衆の仕事だ。
今回のジャイアントイエティは手強く、なかなか誘導通りに行ってくれない。
「ヤベェ! ジョッツの方に行ったぞ!」
「くそ!」
ジョッツは慌てて魔石を取り出そうとするが、鞄の中で何か引っかかっているのか、全然取り出せない。いくら今、木の上にいるからといって、高さは3m。ジャイアントイエティの一撃を食らってしまう高さだ。
すまない、ゴーラ。そう思った瞬間、
「ウラァ!」
裂帛の込められた声が響いた。
ドゴォンと重たい音がしたかと思うと、ジャイアントイエティが歪んだ。全面がひしゃげ、めり込み、そして弾けた。拳の威力が体内で完結できず、体後方が破裂したのだ。
「平気かい? 兄ちゃん」
「あ、あぁ。アンタは?」
「オレァ、ロッド。あそこにいらっしゃるのがコウガイ様だ」
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「オレ達迷子なんだよね。温泉宿ってどこか分かる?」
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