メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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22.月の都

12.静かな海

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 敵対する魔物がほとんどいない海辺。時折ネイビーブルーの啼く声が聞こえてくる。

 それだけだ。

 大型魔物の気迫溢れる鳴き声も、小さくとも大物へと襲い掛かるような魔物の声も聞こえない。

 静かだ。アレン達の歩く音と、NBBの声のみ。海が反射する宙の光と相まって、かなりの幻想を作り出している。
 アレンの目がきらきらと輝いている。コストイラとしては、やっぱり綺麗な景色が好きなんだなと思った。
 静かな方が今はいい。静かな方が世界に合っている。




 村に平然として佇む家は一つとして残っていなかった。8割の家は6割倒壊していた。残りの2割の家は全壊していた。

 その中に人がいた。いや、人だった者がいた。身体は焼かれ、すでに崩れていた。しかも未だ火が消えていない。

 視覚にも嗅覚にも聴覚にも肌感覚にも、ここにはいたくない。

『早く行きましょう』
「うう、鼻が」

 2m大の男が鼻を押さえて嫌そうな顔をする。金髪碧眼の子供は鼻をぐりぐりして臭いを取ろうとしている。

「おう、可哀想な坊じゃ。ほれ、ヴェーの匂いで上書きしてやろう」

 薄紫色の髪をした美女が子供を抱え上げ、自身の胸の谷間に顔を埋めさせる。子供の鼻には美女のいい匂いだけで満たされた。子供はめちゃくちゃドキドキしだした。

 蒼髪の侍と軽薄そうな男が羨ましそうに眺める。美女に睨まれ、目を逸らした。

「んあ? あそこに生きている奴がいるぞ」
『何?』

 3m大の男が蒼髪の侍の視線の先を見る。
 3m大の男と同じ、くすんだブロンドの髪のせいで顔で隠れている。裸の上半身はかなり鍛えられており、軽薄そうな男が目を丸くする。拳闘士である男でも感嘆するほどの筋肉が備わっていたのだ。

『声を掛けよう』
「早う行くのではなかったのか?」
『それとこれとは別問題だよ』

 美女が肩を竦めた。

 3m大の男がうなだれる男に近づく。

『ここで何があったんだ?』
「お前等は勇者か?」
『いや、違うぞ』

 質問を質問で返されたことは気にせず、素直に答える。

「じゃあ、勇者を知っているか?」
『知っているぞ』
「じゃあ、連れて行ってくれ! 場所を教えてくれるだけでいい」

 うなだれていた男が急に立ち上がり、3m大の男の肩を掴もうとした。しかし、大きすぎて肩から肘に、位置を変えた。

『ならば、私達と一緒に来るか?』
「会えるのか?」
『きっと会えるだろうね』
「ならば、行こうじゃないか。俺はニシエ。お前は?」
『私はショカンだ』
「フム。どうやらヴェー達に仲間が増えたらしい」

 レイヴェニアの言葉に、キスレやヲレスタは関係ないとばかりに、舌を出して後頭部に手を回した。サーシャは信用のない人を見る目を向ける。ネレイトスライは眩しそうに眼を逸らした。
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