メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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23.大空洞

3.魔力の澱み

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 エンドローゼはシキが羨ましいと思った。一人で何でもできてしまうからだ。エンドローゼは一人ではほとんどできないことが多い。もし自分に戦う力があったとしても、真っ先に逃げることを考えてしまうだろう。

 私もあんな風になりたいな。

 そう思った時、後ろに何かが落ちてきた。何かを確認するために振り返ると、アレンだった。どうしようとアワアワしてしまう。アストロなら即決しているだろう。

 とりあえずアレンに近づき、回復魔法をかかる。

「アレン。受け身の練習でもするか?」

 アストロを背負ったコストイラが、難なく着地しながら声を掛けた。アレンはうーんと渋っている。

「どうした? 必要だろ? オレ達はいつも落ちているんだから」
「僕にできる気がしないんですけど」
「やってみなきゃ分かんねぇだろ」

 コストイラはアレンの襟を掴むと、ズルズルと引き摺っていった。かなりの回数の怪我をしそうなので、付いていくことにしよう。

 アストロが眉根を寄せた。目を閉じて魔力を集中させると、魔素が感じ取れた。
 アストロのレベルはまだ110だが、魔力の精度だけは伝説の域に入っている。そこまでくると、魔素が感じ取れるだけではなく、流れまで分かった。

 流れが悪い。密閉空間でもない限り、流れがあるはずだ。出入口が一つでも、それなりの流れがあるのだが、それよりも悪い。
 端には年季の入った魔素が浮遊している。いや、今穴が開いたから換気されたか。

 グレートドラゴンは空気の悪さが嫌になり、水泳の息継ぎのように地上に出てきたのかもしれない。

 というか、グレートドラゴンはどうした?

 アストロがキョロキョロと見渡すと、グレートドラゴンがいた。目に光がない。死んでいる。時間短くなかったか? シキってその域なの? コストイラ、追い付ける。

 アシドが落ちた場所の一方に、奥へと続く道を見つけた。ゴブリンソルジャーの死体がゴロゴロと転がっていた。ゴブリンは群れを成す魔物だ。この光景自体に不思議はない。しかし、放置されているのが気になる。

『グルゥ』

 奥からゴブリンソルジャーが出てきた。生きている個体だ。しかし、怪我がひどい。顔の半分が溶けている。いや、抉れているのか? 目が血走っている。恐怖を振りまいている。

『グルルルゥ』

 口から涎がダラダラと垂れているが、拭うことすらしない。

『グガァ!?』

 ゴブリンソルジャーが襲い掛かってくる。右手の剣を体を捻ることで躱し、左手の剣は槍で往なす。アシドはゴブリンの腹を蹴り、動きを止めると、槍を振るって首を折った。

 いつの間にか横にはアストロがいた。

「ん? どうした?」
「魔素があっちに流れているわ。流れているというには速い気がするけど」
「じゃあ、出口はあっち?」
「と、思うわ」
「じゃあ、アレンの受け身特訓はどうなってんの?」

 アストロがアレンのことを見る。

「進捗、駄目ね。実践の役に立たないわ」

 アシドは片手で両目を覆った。

「ま、今できないのはできるようになるってことだろ。成長の塊だな、アイツは」




 奥に進むと、泥が出てきた。コストイラが嫌そうな顔をする。どれだけレベルが上がっても、トラウマは消えてくれない。

 精錬された動きで、魔力を練り上げる。その動きは僅かな時間、コンマの後ろにゼロが8つ並ぶほどだ。どれだけ泥が嫌か分かるだろう。

 しかし、何も出てこなかった。幸いなことに、何も起こらなかった。誰にとって幸いかは分からないが。

 光届かぬ真っ暗な地下空間。その道の半ばに、剣が刺さっていた。なぜここに剣が刺さっているのか、という疑問を持つが、美術館の説明プレートのようなものがあるわけではないので、解決しない。

 滑り止めのような凹凸のついた柄。太陽を模したような装飾が付けられた鍔。エリオ教の誰かが置いていったのかと思ったが、わざわざこんなところに来る奴などいるのだろうか。

 しかもデカい。柄の部分だけでレイドと同じくらいとすると、全体で5,6mはあるだろう。

「何かあれに向かって魔素が動いているわ」
「え?」

 アストロが指をさした時、地面に刺さっていた剣が発行し始めた。
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