メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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23.大空洞

8.威迫の粘獣

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「ポトリン……」
「か、可愛らしい、お、お、お名前ですね」
「貴族の中に、かつてポトリンという家名があったな」

 まさかのところからの情報提示があった。

「ポトリン家は伯爵家でな、何度かお会いにしたことがある。どれだけ優しさで包んでも、出てくる印象は”狂っている”、だ」
「やばっ」

 アシドがアイリススライムから目を離さずに相槌を打つ。

「お前って貴族だったの?」
「え?」
「マジかよ」
「私、言ってなかったか?」
「どうだったかしら」
「覚えてねェ」

 はっきりしない、曖昧な論争を挟みつつ、ポトリン家について話す。

「と、とにかく、ポトリン家が伯爵にまで成ったのは、罪人を捌き続けた初代のおかげだ」
「はぁ、裁く」
「その子孫は代々血を見るのが好きでな。領地から民衆を集めては血を流させていた。
「うぇ」

 ポトリン家の性格に、アシドが顔を歪める。エンドローゼは敵意をバンバンに放っている。若干フォンのものも感じ取れる。

「特にパックンチョ・ポトリンは首刈り卿と呼ばれ、恐れられていた。自らの手で首を落とすのを好んだ。さらに身内に切らせるということもした」
「何でそんなことを、王は許していたんだよ」
「まず、私のような下の位のようなものが指摘しようものなら、即刻打ち首だ。それに、あの家は上に対しては外面がいい」
「最悪だな」

 アシドが吐き捨てる。エンドローゼは首が取れるのではないかと思う程、首を縦に振っている。

 アイリススライムはじゅるじゅると進み、ソードジェネラルに触れる。そして、嬉しそうにしながら、スライム体で包み込んでいく。
 じゅおじゅおとソードジェネラルを溶かしていき、その体を取り込んでいく。
 消化に時間がかかると判断したアレンが動く。

「今のうちに奥へ」

 その言葉を聞き、レイドが両脇にエンドローゼと足の不自由な少女を抱え、立ち上がった。コストイラ達もこの場で戦うのが嫌なのか、素直に従った。

 静かに立ち去る。それを破ったのはエンドローゼだった。

「ゆ、ゆ、許すまじ」
「いや、許すまじって、あのポトリンってのがレイドの言ったポトリン伯爵家の人間って限らねェええええええ!?」

 レイドに抱えられたまま、両手を突き出し、月の光にも似た淡い魔力を撃ち出した。魔力はアイリススライムに当たり、大爆発を起こした。インパクトよりも風の方が凄い。アレン達は風に煽られ、道の奥に飛ばされた。レイドは器用に2人を守りながら、地面を転がった。

「ポトリン家は、お、お、お、お、多くのトッテム教信者をこ、こ、殺したんで、です! ゆ、ゆ、許せません!!」

 足の不自由な少女以外には分かった。

 これ、フォンの怒りだな。

 アイリススライムは消滅していた。
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