メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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23.大空洞

12.御師越

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 自分は綺麗な花になれない。だから、自分は花が咲く土になれればいい。

 アレンの心はそう考えるようになっていた。何がきっかけだったかは覚えていない。なぜそこに辿り着いたのかも分からない。

 しかし、アレンは確実に思っていた。

 とはいえ、今は状況が違う。自分以外に自分を助けてくれる存在はいない。
 アレンの頭上で黒ずくめの男が手袋を嵌め直していた。

「お前の命を奪う」

 その言葉だけで、冷えた手で心臓を握られるように体が固まった。

「別に貴様に恨みがあるわけではな……いや、あるな」

 まったくアレンのことを見ずに行われる独り語り。アレンの足が速ければ、逃走を試みただろう。まったく逃げ切れる気がしない。

「命令と私怨により、貴様を殺す」

 アレンは持っていた解体用ナイフを振るい、男の足の甲を指そうとするが、その前に足が動いた。
 美しい一閃で顎が砕かれる。数個の歯が飛んだ。顔内のものが他に出てこなくてよかったと思う。

 アレンが男の足に絡みつこうとすると、男は鉤のように曲がった指でひっかく。
 偶然にもアレンは躱すことに成功する。ギザギザとなっていない方の耳を掠めた。それだけで耳が切れた。
 激痛が走るが、聴力がどうなったのか分からない。アレンが耳を押さえながらゴロゴロと転がる。

 男はナイフを投げ、服を貫いて縫い留められた。

「逃げるな」

 パキパキと指の骨が鳴らされる。男はアレンを踏みつけて、さらに逃げられないようにする。

 男が腕を振りかぶる。アレンは目を瞑った。もうだめだ。

 ガシャンとガラスを突き破る音がした。

「ん」

 アレンの上にあった重みが消えた。薄く目を開けるとそこにはシキがいた。シキがナイトメアスタイルをとっている。男も同様にナイトメアスタイルをとっている。

「さまになったじゃないか」

 男の言葉に、シキは何も返さない。

 一気に空気が張り詰める。アレンにも分かる。先に動けば死ぬというアトモスフィア。

 男が足の指の力だけで石を弾いた。シキは躱すことなく、頭で受けた。男がそこで脚技を使用してくる。
 シキはバックステップで躱しながら頭を低くした。シキの後ろにある石柱が砕ける。
 シキがナイフを振るうが、男に躱される。その隙を狙った男の爪が迫るが、二振り目のナイフで受け止めた。

 男の爪は普通のものに見えるが、ナイフとぶつかって火花が散っていることから、普通の爪ではないことは確実だろう。

 男が爪とナイフを駆使して戦う。その変幻自在さに困惑しながらシキが戦う。

 あのシキが押されているという事実は、アレンには衝撃でしかなかった。

 そこでアレンが魔眼を使った。一瞬、男の動きが悪くなった。その一瞬はアレンには何もできない時間だが、シキには無限の手数が繰り出せる。
 それを男も理解していた。だからこそ、無理な体勢からシキを蹴飛ばした。

 同時にアレンの体が引っ張られる。糸が巻かれていたらしい。そのまま脇に抱えたシキは、その場を後にする。

 しかし、所詮追いつかれる。そう考えているシキは下を見る。往来にいる人々がこちらを指差している。その中に仲間を見つけようとするが、いない。

 シキが乱雑にアレンを投げて、振り返る。すでに男は追い付いていた。

「父さん」
「構えろ。最終試練だ」

 レンが言葉とともにローリングソバットを叩きつけた。シキが床をバウンドして柵にぶつかった。

 前を見ると、レンがもういる。ターゲットはすでにアレンからシキに移行している。本気で殺しに来ている。

 すぐに横に転がる。暗殺者の爪がコンマ数秒前までシキがいた場所を破壊した。レンは一回転して、傾く柵を蹴って肉薄する。
 ナイフとナイフが交わる。鍔迫り合いを嫌い、今度はシキがレンを蹴る。

 生まれた距離は1秒も満たずして再び埋まる。今度はナイフではなく爪が振られた。魔剣と魔剣がぶつかり合う。

 シキの右腕から血煙が舞う。何の攻撃を受けたのか定かではない。しかし、力が緩んだ。

 レンがナイフを振るう。逃れようと腹を曲げたが、間に合わず薄く切られる。その勢いのまま、レンはローリングソバットを腹に打ち込む。再びバウンドして柵に背をぶつけた。

「カハッ」

 肺の中の空気が吐き出される。

 再び右の爪が振られた。
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