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24.深層の備え
1.抑えられない衝動
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何か、頭の中に声が聞こえてきた気がした。意味の分からない3つの言葉。その言葉の意味が分からないまま、覚醒する。アレンが頭を押さえながら少し振る。
隣にはアストロがいた。ノールックで質問する。
「僕が最後ですか?」
「そうね」
「どうして僕はいつも最後なのでしょうね」
「そうね。魔物、というか死が隣にあるという状況にまだ慣れていないのでしょうね。良くも悪くも」
「皆さんと旅するという意味では悪い意味では?」
「でも、それはもう私達が失ってしまった感覚でもあるわ。羨ましいわね」
アストロがどこか慈しむような顔をしている。
アレンの感覚は世間一般で言えば、普通のものだ。しかし、今は旅をしている。その中では異常な考え方になる。
隣に立っていると、感覚を共有できない。
それが、アレンにとって悲しいのだ。
「私も貴方目線で言えば、狂っているに分類されるわ。その狂いはコストイラに比べれば、平凡なのよ。私が狂人だと判別されるのなら、コストイラ達はそれを遥かに超えた”壊人”よ」
納得してしまった。理解できてしまった。
感覚を共有できない程離れているはずなのに、苦しみが分かってしまう。
「虚勢でもいいから、隣に立ち続けなさい」
「はい」
空気が重くなるのを感じていると、ドンッと地面が揺れ、体が浮いた。
「な、な、何ですか!?」
「今、あそこでその”壊人”が戦っているわ」
指差した先に視線を向けた途端、噴煙が上がった。
「ど、どんな奴と戦っているんですか!?」
何も知らないアレンが焦りながら、アストロに抱き着こうとして殴られた。
「ジャイアントイエティっていたじゃない?」
「はぁ」
「あれから雪山の要素を抜いたような、緑の巨人よ」
ズドンと上から何かが落ちてくる。衝撃で弾けた何かがアレンの頬に付着した。指でそれを拭うと、それは血だった。
「ブフゥ」
落ちてきた肉の中から腕が生えてきた。何かが助けを求めるようにプラプラしている。
「引っ張ってきなさい」
アストロに背中を押された。一応指を見る限り、肉の中にいるのはシキだ。なぜこんな姿に。ちゃんとおしゃれすれば可愛い見た目をしているのに、何とも台無しなことだ。
シキを引っ張り出すと、シキはアストロの方に歩いて行った。
森の奥にはコストイラ達がいた。緑の巨人の死体の上にコストイラは座っており、天を仰いでいた。アシドやレイドはそれぞれしたいときに背を凭れさせている。エンドローゼは忙しく動いている。
「僕が眠っている間に、こんなことに」
「ハッハッハッ。ぐっすりだったな」
自分に呆れるアレンに、コストイラが高笑いする。
「どうせオレ達は戦いから逃れられない。進むたびに戦っているぜ」
血でベタベタになっている手で、髪をかき上げる。そして、そのまま指を一点に向ける。
「未知はいいな。楽しい! だからこそ、あそこで佇む、光の柱が気になるんだろうな」
心底楽しそうなコストイラと、光の柱を交互に見て、アレンは首を折った。どうせロクなことにならない。
しかし、どうせ行く当てなどない。一行は光の柱に向かうことにした。
大量の死体の山、その山の中で特に大きなものの上に、そいつがいる。
「ずいぶん辛そうね」
金髪ロングの美女が日傘を杖のようにして立っている。それを一瞥した美女は溜息を吐いた。
『何の用さ、カーミラ』
「あら、せっかく訪ねた人に邪険ね」
『どうせ監視だろ』
まったく取り合おうとしない姿勢に、カーミラは目を丸くして、すぐに弓なりに曲げた。
「確かに監視の意味もあるわ。貴方に死なれると大変だもの。でも、お話ししたいっていうのも本音よ、アイケルス」
『言ってろ、狸BBA』
「おい、お前の方が年上だろ」
急にドスの利いた声になった。相当気にしているのだろう。確かにアイケルスの方が年上だが、ばあさんなのは変わらない。
『死なれると困るって、過去に私の贋作作って、挿げ替えようとしていた奴とは思えない発言ね』
「えぇ、そうね。でも、そんなことしたら、私はコストイラに殺されかねないわ」
コストイラの名前を聞いて、アイケルスの眉がぴくぴく動く。やはり、今でも気にかけているようだ。
『コストイラはそんなことしないよ。身内には甘いもの』
「そんなに気になるなら、会いに行けばいいじゃない。貴女なら、ここから脱して会いに行くなんて、造作もないことでしょ」
アイケルスは死体の山の上で体育座りをし、膝の中に自身の頭を隠す。
『確かにそうさ。君の言う通りだ、カーミラ。けど、なぜだか分からないけど胸がキューと苦しくなるんだ。何でなのか分からないけど、会いに行きたいとは思えない』
カーミラは片眼を閉じた。
かなり限界が来ている。それがカーミラの所見だ。保って1年あるかないか。そこで封印が解ける。使用した封印は重ね掛けができない。
カーミラはアイケルスとフラメテに申し訳なく思いながら、立ち去ることにした。
隣にはアストロがいた。ノールックで質問する。
「僕が最後ですか?」
「そうね」
「どうして僕はいつも最後なのでしょうね」
「そうね。魔物、というか死が隣にあるという状況にまだ慣れていないのでしょうね。良くも悪くも」
「皆さんと旅するという意味では悪い意味では?」
「でも、それはもう私達が失ってしまった感覚でもあるわ。羨ましいわね」
アストロがどこか慈しむような顔をしている。
アレンの感覚は世間一般で言えば、普通のものだ。しかし、今は旅をしている。その中では異常な考え方になる。
隣に立っていると、感覚を共有できない。
それが、アレンにとって悲しいのだ。
「私も貴方目線で言えば、狂っているに分類されるわ。その狂いはコストイラに比べれば、平凡なのよ。私が狂人だと判別されるのなら、コストイラ達はそれを遥かに超えた”壊人”よ」
納得してしまった。理解できてしまった。
感覚を共有できない程離れているはずなのに、苦しみが分かってしまう。
「虚勢でもいいから、隣に立ち続けなさい」
「はい」
空気が重くなるのを感じていると、ドンッと地面が揺れ、体が浮いた。
「な、な、何ですか!?」
「今、あそこでその”壊人”が戦っているわ」
指差した先に視線を向けた途端、噴煙が上がった。
「ど、どんな奴と戦っているんですか!?」
何も知らないアレンが焦りながら、アストロに抱き着こうとして殴られた。
「ジャイアントイエティっていたじゃない?」
「はぁ」
「あれから雪山の要素を抜いたような、緑の巨人よ」
ズドンと上から何かが落ちてくる。衝撃で弾けた何かがアレンの頬に付着した。指でそれを拭うと、それは血だった。
「ブフゥ」
落ちてきた肉の中から腕が生えてきた。何かが助けを求めるようにプラプラしている。
「引っ張ってきなさい」
アストロに背中を押された。一応指を見る限り、肉の中にいるのはシキだ。なぜこんな姿に。ちゃんとおしゃれすれば可愛い見た目をしているのに、何とも台無しなことだ。
シキを引っ張り出すと、シキはアストロの方に歩いて行った。
森の奥にはコストイラ達がいた。緑の巨人の死体の上にコストイラは座っており、天を仰いでいた。アシドやレイドはそれぞれしたいときに背を凭れさせている。エンドローゼは忙しく動いている。
「僕が眠っている間に、こんなことに」
「ハッハッハッ。ぐっすりだったな」
自分に呆れるアレンに、コストイラが高笑いする。
「どうせオレ達は戦いから逃れられない。進むたびに戦っているぜ」
血でベタベタになっている手で、髪をかき上げる。そして、そのまま指を一点に向ける。
「未知はいいな。楽しい! だからこそ、あそこで佇む、光の柱が気になるんだろうな」
心底楽しそうなコストイラと、光の柱を交互に見て、アレンは首を折った。どうせロクなことにならない。
しかし、どうせ行く当てなどない。一行は光の柱に向かうことにした。
大量の死体の山、その山の中で特に大きなものの上に、そいつがいる。
「ずいぶん辛そうね」
金髪ロングの美女が日傘を杖のようにして立っている。それを一瞥した美女は溜息を吐いた。
『何の用さ、カーミラ』
「あら、せっかく訪ねた人に邪険ね」
『どうせ監視だろ』
まったく取り合おうとしない姿勢に、カーミラは目を丸くして、すぐに弓なりに曲げた。
「確かに監視の意味もあるわ。貴方に死なれると大変だもの。でも、お話ししたいっていうのも本音よ、アイケルス」
『言ってろ、狸BBA』
「おい、お前の方が年上だろ」
急にドスの利いた声になった。相当気にしているのだろう。確かにアイケルスの方が年上だが、ばあさんなのは変わらない。
『死なれると困るって、過去に私の贋作作って、挿げ替えようとしていた奴とは思えない発言ね』
「えぇ、そうね。でも、そんなことしたら、私はコストイラに殺されかねないわ」
コストイラの名前を聞いて、アイケルスの眉がぴくぴく動く。やはり、今でも気にかけているようだ。
『コストイラはそんなことしないよ。身内には甘いもの』
「そんなに気になるなら、会いに行けばいいじゃない。貴女なら、ここから脱して会いに行くなんて、造作もないことでしょ」
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『確かにそうさ。君の言う通りだ、カーミラ。けど、なぜだか分からないけど胸がキューと苦しくなるんだ。何でなのか分からないけど、会いに行きたいとは思えない』
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かなり限界が来ている。それがカーミラの所見だ。保って1年あるかないか。そこで封印が解ける。使用した封印は重ね掛けができない。
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