メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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24.深層の備え

2.殺生の石

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 光の柱へ行く。新たな目標に向かい歩き始めた直後、早速高い壁にぶつかった。壁というか、崖だ。
 切り立つ崖は、角度が90度と少しあり、登るのに苦労しそうだ。特にアレンが。

「おい、崖登りしなくても、洞窟があるぞ」

 アシドの発見により、アレンの不安が消えた。その代わり、アストロは無能と化した。

 見つけた者の責任として、先頭はアシドが歩いている。アストロのことはコストイラが守っている。
 この洞窟の高さは3mあるかないかだ。魔術を放てば、崩落の恐れがあるだろう。

 火を点けるのも躊躇された。火は遠くから観測できてしまうからだ。

 ”壊人”達は火を点けなくとも、各々の感覚で見えていた。景色に色を付けられる強者は、コストイラとシキしかいないが、モノトーンやシルエットで見えている。

 アレンとしては皆の方がよっぽど魔眼持ちな気がしてならない。

 しかし、暗視の出来ないアレンにも、遠くのものが見える瞬間が訪れた。

 遠くでピンク色の光が見えた。

「罠ではなさそうだな。そういう生態っぽそうだ」

 コストイラが光を睨みつける。ピンクの光は上に一個の丸があり、その下部に器のような曲線、その下に文字のようなものが描かれている。

「飛ばしてきた奴と同種か? それとも違う魔物か?」
「分かんねェ。でも要警戒だな」
「まずはオレが速攻で攻撃、撃破を試みる」
「よし」

 アシドが身を低くして、スタートダッシュの姿勢をとる。アストロが許可を出した途端、静かに走り出した。

 近づいても対応するようには見えない。まだ気付いていないのだろうか。

 アシドは洞窟の壁を利用し、音を立てないように上部を狙う。槍を振るう瞬間に、石が気付いた。
 対処してくる前に、丸い部分に槍を叩き込む。

 ガシャンとガラスの割れたような音が響き、文字から光が消えた。

 エンシェントコアのことがあり、倒したことに確信を持てず、割れたところを槍で突き、ぐりぐりと弄りまわす。ガキと何かが引っ掛かる音がして、ピシと罅入る音がした。穴からピシューとオレンジと黒の混じった煙が噴き出してきた。

 アシドは片足をルーンストーンの上に置き、腰に手を当て、胸を反らした。

「大物!」






「大物!」
「ガハハ! いいじゃないか。その調子その調子」

 青紫色の動きやすい服を着た少女が、2m越えの魚を掲げた。蒼髪金目の男は素直に拍手して少女を褒める。

「当然! 私はもっと大物を狙うわ」

 少女は髪を払いながら、薄い胸を張る。

 対照的に紅赤色の服を着ている少女は、つまらなそうに頬に手を当てている。それに気付いた青紫色の少女が近寄り、姉の膝に手を置いて、顔を覗いてくる。

「お姉さま、つまらない?」
「いいえ、アル。釣りとは辛抱強く持つのがいいのよ。私も十分楽しんでいるわ。でも、そうね。私の釣ったお魚でアルが料理する姿を思い浮かべると、早く釣りたくなるわね」

 チラスレアが大人な受け答えをしながら、アルバトエルの頭を撫でる。

「皆様、お昼休憩はいかがでしょうか。おや? サナエラは?」

 執事長のリックが手にカップの乗った盆を乗せて現れる。メイド長の姿が見えず、キョロキョロとしている。

「あの姉ちゃんは、忍び耐えられなくて、海に潜っちまいやがった。メイド服の下に水着着てて、びっくりしたぜ」
「ごめんなさいね、うちのメイドが。私達も驚いたわ。下に着ているだけでなく、この場で脱ぐんですもの。あら?」

 ゾースは泡がブクブク出ているあたりを指差し、チラスレアは岩を指し示す。その岩にかけてあったはずのメイド服がなくなっており、口に手を当てて目を丸くした。

「ムフフ。どうだ、可愛いだろう?」
「ふわぁ!? 可愛いぃいいいいい! 可愛いわ、アル!」

 サナエラのサイズのため、ぶかぶかとなっているアルバトエルが、メイド服を重ね着していた。それを見たチラスレアは胸の前で指を絡め合わせ、涙と鼻血を出しながらのたうち回っている。

 ゾースはその光景を見てドン引きしている。リックは何も動じずに、お茶の準備をしている。これが日常なのか、と考えたくなるが、これが日常なのだ。

 ザパリと海から上がってくる影があった。サナエラである。濡れた髪をかき上げて、釣り場に上がってきた。

 その手には4m大の魚がいた。

「「大物!」」

 チラスレアとアルバトエルは同時に指差し、叫んだ。
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