436 / 684
24.深層の備え
2.殺生の石
しおりを挟む
光の柱へ行く。新たな目標に向かい歩き始めた直後、早速高い壁にぶつかった。壁というか、崖だ。
切り立つ崖は、角度が90度と少しあり、登るのに苦労しそうだ。特にアレンが。
「おい、崖登りしなくても、洞窟があるぞ」
アシドの発見により、アレンの不安が消えた。その代わり、アストロは無能と化した。
見つけた者の責任として、先頭はアシドが歩いている。アストロのことはコストイラが守っている。
この洞窟の高さは3mあるかないかだ。魔術を放てば、崩落の恐れがあるだろう。
火を点けるのも躊躇された。火は遠くから観測できてしまうからだ。
”壊人”達は火を点けなくとも、各々の感覚で見えていた。景色に色を付けられる強者は、コストイラとシキしかいないが、モノトーンやシルエットで見えている。
アレンとしては皆の方がよっぽど魔眼持ちな気がしてならない。
しかし、暗視の出来ないアレンにも、遠くのものが見える瞬間が訪れた。
遠くでピンク色の光が見えた。
「罠ではなさそうだな。そういう生態っぽそうだ」
コストイラが光を睨みつける。ピンクの光は上に一個の丸があり、その下部に器のような曲線、その下に文字のようなものが描かれている。
「飛ばしてきた奴と同種か? それとも違う魔物か?」
「分かんねェ。でも要警戒だな」
「まずはオレが速攻で攻撃、撃破を試みる」
「よし」
アシドが身を低くして、スタートダッシュの姿勢をとる。アストロが許可を出した途端、静かに走り出した。
近づいても対応するようには見えない。まだ気付いていないのだろうか。
アシドは洞窟の壁を利用し、音を立てないように上部を狙う。槍を振るう瞬間に、石が気付いた。
対処してくる前に、丸い部分に槍を叩き込む。
ガシャンとガラスの割れたような音が響き、文字から光が消えた。
エンシェントコアのことがあり、倒したことに確信を持てず、割れたところを槍で突き、ぐりぐりと弄りまわす。ガキと何かが引っ掛かる音がして、ピシと罅入る音がした。穴からピシューとオレンジと黒の混じった煙が噴き出してきた。
アシドは片足をルーンストーンの上に置き、腰に手を当て、胸を反らした。
「大物!」
「大物!」
「ガハハ! いいじゃないか。その調子その調子」
青紫色の動きやすい服を着た少女が、2m越えの魚を掲げた。蒼髪金目の男は素直に拍手して少女を褒める。
「当然! 私はもっと大物を狙うわ」
少女は髪を払いながら、薄い胸を張る。
対照的に紅赤色の服を着ている少女は、つまらなそうに頬に手を当てている。それに気付いた青紫色の少女が近寄り、姉の膝に手を置いて、顔を覗いてくる。
「お姉さま、つまらない?」
「いいえ、アル。釣りとは辛抱強く持つのがいいのよ。私も十分楽しんでいるわ。でも、そうね。私の釣ったお魚でアルが料理する姿を思い浮かべると、早く釣りたくなるわね」
チラスレアが大人な受け答えをしながら、アルバトエルの頭を撫でる。
「皆様、お昼休憩はいかがでしょうか。おや? サナエラは?」
執事長のリックが手にカップの乗った盆を乗せて現れる。メイド長の姿が見えず、キョロキョロとしている。
「あの姉ちゃんは、忍び耐えられなくて、海に潜っちまいやがった。メイド服の下に水着着てて、びっくりしたぜ」
「ごめんなさいね、うちのメイドが。私達も驚いたわ。下に着ているだけでなく、この場で脱ぐんですもの。あら?」
ゾースは泡がブクブク出ているあたりを指差し、チラスレアは岩を指し示す。その岩にかけてあったはずのメイド服がなくなっており、口に手を当てて目を丸くした。
「ムフフ。どうだ、可愛いだろう?」
「ふわぁ!? 可愛いぃいいいいい! 可愛いわ、アル!」
サナエラのサイズのため、ぶかぶかとなっているアルバトエルが、メイド服を重ね着していた。それを見たチラスレアは胸の前で指を絡め合わせ、涙と鼻血を出しながらのたうち回っている。
ゾースはその光景を見てドン引きしている。リックは何も動じずに、お茶の準備をしている。これが日常なのか、と考えたくなるが、これが日常なのだ。
ザパリと海から上がってくる影があった。サナエラである。濡れた髪をかき上げて、釣り場に上がってきた。
その手には4m大の魚がいた。
「「大物!」」
チラスレアとアルバトエルは同時に指差し、叫んだ。
切り立つ崖は、角度が90度と少しあり、登るのに苦労しそうだ。特にアレンが。
「おい、崖登りしなくても、洞窟があるぞ」
アシドの発見により、アレンの不安が消えた。その代わり、アストロは無能と化した。
見つけた者の責任として、先頭はアシドが歩いている。アストロのことはコストイラが守っている。
この洞窟の高さは3mあるかないかだ。魔術を放てば、崩落の恐れがあるだろう。
火を点けるのも躊躇された。火は遠くから観測できてしまうからだ。
”壊人”達は火を点けなくとも、各々の感覚で見えていた。景色に色を付けられる強者は、コストイラとシキしかいないが、モノトーンやシルエットで見えている。
アレンとしては皆の方がよっぽど魔眼持ちな気がしてならない。
しかし、暗視の出来ないアレンにも、遠くのものが見える瞬間が訪れた。
遠くでピンク色の光が見えた。
「罠ではなさそうだな。そういう生態っぽそうだ」
コストイラが光を睨みつける。ピンクの光は上に一個の丸があり、その下部に器のような曲線、その下に文字のようなものが描かれている。
「飛ばしてきた奴と同種か? それとも違う魔物か?」
「分かんねェ。でも要警戒だな」
「まずはオレが速攻で攻撃、撃破を試みる」
「よし」
アシドが身を低くして、スタートダッシュの姿勢をとる。アストロが許可を出した途端、静かに走り出した。
近づいても対応するようには見えない。まだ気付いていないのだろうか。
アシドは洞窟の壁を利用し、音を立てないように上部を狙う。槍を振るう瞬間に、石が気付いた。
対処してくる前に、丸い部分に槍を叩き込む。
ガシャンとガラスの割れたような音が響き、文字から光が消えた。
エンシェントコアのことがあり、倒したことに確信を持てず、割れたところを槍で突き、ぐりぐりと弄りまわす。ガキと何かが引っ掛かる音がして、ピシと罅入る音がした。穴からピシューとオレンジと黒の混じった煙が噴き出してきた。
アシドは片足をルーンストーンの上に置き、腰に手を当て、胸を反らした。
「大物!」
「大物!」
「ガハハ! いいじゃないか。その調子その調子」
青紫色の動きやすい服を着た少女が、2m越えの魚を掲げた。蒼髪金目の男は素直に拍手して少女を褒める。
「当然! 私はもっと大物を狙うわ」
少女は髪を払いながら、薄い胸を張る。
対照的に紅赤色の服を着ている少女は、つまらなそうに頬に手を当てている。それに気付いた青紫色の少女が近寄り、姉の膝に手を置いて、顔を覗いてくる。
「お姉さま、つまらない?」
「いいえ、アル。釣りとは辛抱強く持つのがいいのよ。私も十分楽しんでいるわ。でも、そうね。私の釣ったお魚でアルが料理する姿を思い浮かべると、早く釣りたくなるわね」
チラスレアが大人な受け答えをしながら、アルバトエルの頭を撫でる。
「皆様、お昼休憩はいかがでしょうか。おや? サナエラは?」
執事長のリックが手にカップの乗った盆を乗せて現れる。メイド長の姿が見えず、キョロキョロとしている。
「あの姉ちゃんは、忍び耐えられなくて、海に潜っちまいやがった。メイド服の下に水着着てて、びっくりしたぜ」
「ごめんなさいね、うちのメイドが。私達も驚いたわ。下に着ているだけでなく、この場で脱ぐんですもの。あら?」
ゾースは泡がブクブク出ているあたりを指差し、チラスレアは岩を指し示す。その岩にかけてあったはずのメイド服がなくなっており、口に手を当てて目を丸くした。
「ムフフ。どうだ、可愛いだろう?」
「ふわぁ!? 可愛いぃいいいいい! 可愛いわ、アル!」
サナエラのサイズのため、ぶかぶかとなっているアルバトエルが、メイド服を重ね着していた。それを見たチラスレアは胸の前で指を絡め合わせ、涙と鼻血を出しながらのたうち回っている。
ゾースはその光景を見てドン引きしている。リックは何も動じずに、お茶の準備をしている。これが日常なのか、と考えたくなるが、これが日常なのだ。
ザパリと海から上がってくる影があった。サナエラである。濡れた髪をかき上げて、釣り場に上がってきた。
その手には4m大の魚がいた。
「「大物!」」
チラスレアとアルバトエルは同時に指差し、叫んだ。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる