メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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26.『黄昏の箱庭』

2.異常事態

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「ぐ、ぬ」

 赤い髪をした侍が頭に片手を当てて、ゆっくりと立ち上がる。目をパチクリと瞬きを繰り返した。

「大丈夫か?」

 コストイラは誰か特定の人に対してではなく、不特定多数相手に声を掛ける。

「大丈夫よ。それよりここはどこなのかしら」
「んぬ」
「ふ、ふぇ」

 アストロも片手を頭に当てて、頭を振っている。アストロに続いてレイド、エンドローゼが目を覚ます。上体を起こす3人と違い、アシドは寝た体勢のまま口を開く。

「時間制限はどうなっているんだ?」

 アシドの言葉にコストイラが掌を見て、エンドローゼはぱたぱたと服を乱して慌て始めた。頭の中にフォンの声が聞こえてきたのだろう。

――大丈夫だよ。場所が変わっているからね。まったく、皆瞬間移動するから探し出すのに手間かかっちゃったよ。

 どこか頭の汗を拭い取るような動作を想起させるような言葉に、エンドローゼは安心する。

 しかし、エンドローゼの脳内ではまだ声が続いている。

――でも、ここが安全じゃないのも確かだよ。東側に見えるでっかい山に行くと良いよ。

「で、で、デ、デカい山」

 エンドローゼはキョロキョロと探すと、すぐに見つかった。流石、デカい山だ。デカいが、かなり遠くにあるように見える。
 エンドローゼが肘を触りながら、アストロを頼ることを決定した。エンドローゼはアストロの袖を引いた。

「ん? 何?」
「あ、あ、アの山に行きたいです」
「あの山ね」

 エンドローゼの指差した先に見える山を、同じ目線からコストイラが眺める。手で笠を作って、目を細めると、何か館のようなものが見えた。

「ん? あぁ、いいな。あの山なら迷子にならずに済みそうだな」
「なぁ、いい加減現実を見ないか?」

 アシドが言葉に出したことできちんと現実を見る。全員が周りを見る。やはりアレンがいない。シキが珍しく落ち込んでいる。

「駄目ね。半径10㎞近くまで範囲を広げたけど、見つからないわ」

 アストロがこめかみ辺りを触りながら汗を流した。

「歩こう。歩きながら探そう。それで見つかるかもしれねェ」
「あ、あぁ。留まっていてもいいことはねェ」

 少し焦りながらコストイラとアシドが提案する。全員がそれを飲み、歩き始める。

 そして、何かの装置を発見した。




 ヒソヒソと話す声が聞こえてくる。理由は分かる。この包帯のせいだろう。

 ここは海を渡った先にある砂漠の街。

 自分と同じような肌の者はいない。皆健康的に焼けた肌をしている。火傷痕の肌を持っている者はいない。

 今は昼間。太陽が南中していて、日射がきつい。汗が上手く分泌できない肌では、体温が上がるばかりだ。早く宿に帰りたい。
 活動限界がもう近い。あと10分もすれば倒れてしまう。

 サヒミサセイは痒みを発する喉を押さえながら、宿の戸を開けた。

「よぉ、嬢ちゃん。どうしたんだ? そんなに包帯で巻いてよ。その顔を見せてくれよ」

 2m近い大柄な男が絡んでくる。早く包帯を巻きなおしたいにもかかわらず、絡まれたことで時間がとられてしまった。

「お前には関係なイ。そこヲどケ」
「ヒュー。声が美人だ。こりゃ顔が期待できるぜ」
「剛腕のエンリに絡まれちまってるぜ。助けるか?」
「止めとけ止めとけ。面倒になるぞ」

 助けに来る者はいないようだ。対処など簡単なのだが、活動限界が近いため、激しく動くことが不可能だ。

「いいじゃねェかよ。ちょっとつきあってくれてもよ」

 厭らしい笑みを浮かべるエンリに、嫌な顔をする。それだけで顔の皮が張り、痛みが走る。
 膝から力が抜け、観葉植物に体が突っ込む。

「お、おい」
「大丈夫か?」
「体が悪いのか? 最初から俺の誘いに乗っておけばよかったのによ」

 どけ、とエンリが集まってきた冒険者を散らし、サヒミサセイの腕を掴んだ。

 激痛。

 目の前に火花が散ったような感覚を得た。思わず腕を引っ込めた。その速度はこの地を根城にしている冒険者のレベルでは、到底辿り着けない領域にいる。

「え?」

 エンリが声を上げた時、すでに壁に激突の寸前だった。声を上げ終える前に激突した。
 サヒミサセイは右腕を押さえながら蹲った。

「だ、大丈夫か?」
「へ、部屋を一部屋、頼む」
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