メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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26.『黄昏の箱庭』

7.白き兵隊

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 メルとルーサを置いて、勇者一行は出発した。自分で決断したわりには、エンドローゼは不安を顕にしている。

「だ、だ、大丈夫でしょうか?」
「さぁな。でも、あのフォンに祈ったんだろ? じゃあ何とかしてくれるだろ。っと、魔物だ」

 コストイラはエンドローゼのことを慰めながら刀を抜いた。

 現れたのは3体のガーゴイル。こちらを視認すると、何かに驚いたような顔をした。しかし、すぐに覚悟を決めたように突っ込んできた。
 コストイラは焦ることなく2体を瞬殺し、1体はアストロの闇の魔力に沈んだ。

「何でガーゴイル?」
「さぁ?」
『今のは闇の魔力』

 声がした方に視線を向けると、レイドと同様に2m越えの身長をした騎士がいた。

 銀に輝く重厚な鎧に、紺青のマント、身長と同じくらいある大剣。どこをどう見ても立派な重騎士だ。

「闇の魔力なんて珍しくねェだろ。八つの魔力はバランスが取れているんだからよ」
『確かにそうだ。しかし、この地においては意味合いが違う』

 ホワイトジェネラルが大剣を振るった。コストイラは刀を合わせるが、瞬時に理解した。こいつはかなりの馬鹿力だ。圧し潰される。

 コストイラは力を合わせるのではなく、技に逃げて往なした。大剣が地面を叩く。地面が大きく罅割れ、威力を見せつけてきた。
 エンドローゼ以外の5人は、この相手は鈍足型の重歩兵だと確信した。その場合、普通は遠距離射撃型か近距離スピード型のどちらかは必ずいる。

 炙り出すためにはもう一度アタックする必要がある。

 コストイラが4人にアイコンタクトを試みる。全員に伝わったようだ。
 仲間外れにされたエンドローゼが少し寂し幼な顔をしている。後でしっかりフォローしておこう。

 アシドが槍を構えると、ピクリと相手が反応した。
 その瞬間、動き出したのはシキの方だった。シキが飛び蹴りを繰り出すと、ホワイトジェネラルは左手につけられている丸盾で防いだ。

 草陰からレイピアを持った白き兵が飛び出してきた。白き兵がレイピアを振るうが、シキは丸盾を利用して軽々と躱した。
 その間に、コストイラとスイッチする。飛び出してきた白き兵は見た目がヴァルキリーだ。
 白地の布に赤い刺繡があしらわれた服に手袋、ブーツを身に着けており、白銀の剣身に赤い線が描かれたレイピアを持っている。

 しかし、そのレイピアは振り切られている。コストイラの攻撃を防げない。

 何とか動きを止め、身を戻そうとするが、間に合わない。顔に一閃される。ヴァルキリーは傷を押さえながら、ホワイトジェネラルの後ろを陣取った。

 ヴァルキリーが手をどかすと、顔に縦の赤い線が走っていた。その線は左目の上を通っており、視力は失われていた。
 ホワイトジェネラルが左側を護るように立つ。

「コストイラ! アシド!」

 要件の言われない名前だけの叫び。それだけで意図を察したコストイラとアシドは、振り返ることなく横に跳んだ。
 コストイラとアシドとアストロの間にはある取り決めがある。戦闘中に名前だけ呼んだ時は、お前射線上にいるから邪魔なんだよ、という意味だ。

 だから横に跳んだ、何が飛んでくるのか知らないけど。

 両者の間ギリギリを、黒い靄のようなものが通った。

 これは、なんだ?

 コストイラもアシドも見たことがない。アストロの扱う闇魔法は、何かこう、足元を覆う感じのやつだ。煙っぽい感じであって、こんな靄のようなものではない。
 
 ホワイトジェネラルが黒い靄に、不用意に大剣を振り下ろす。

 シャゴリと音がした。

 一切聞いたことがない音だ。しかし、どこか本能が訴えている。この感情は恐怖か?
 その後も2回音が鳴り、黒い靄が消えた。

『ゴフ?』
『アバ?』

 ホワイトジェネラルの大剣、右半身、ヴァルキリーの左半身がなくなっていた。焼失した部分からは血さえ出てこない。口からは噴水のように絶え間なく血が出ている。

 2人が重なるように倒れた。一撃での絶命。この威力はアストロでは出せない。これは誰の何だ?

 アストロは目を逸らした。

「よかったわね、エンドローゼ。あの2人お迎えが来たわね」
「ふぉ~」

 エンドローゼが拳を握って興奮している。何か可愛いので放置しておこう。
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