メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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26.『黄昏の箱庭』

23.戦姫の神殿

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 レイドが首に手を当て、ゴキゴキと鳴らした。
 昨夜行われた闘技もそうだが、正直なところ、無茶の体勢で眠ってしまったのが大きい。

「体がガチガチだ」
「アテテテ。まぁ、エンドローゼとの約束通り、アレンのところに行くぞ!」
「おぉ!」

 歩き始めて約七分、視線に傾斜がついてきた。

「や、山。と、と、ということは、この、こ、この頂上にあ、ア、アレンさん、が」
「悪ィな、エンドローゼ。この山じゃねぇんだ。これ登って、次の山だ」
「ムムム」

 まだまだ遠い、と言われ、眼がきつくなる。おそらく時間がかかると分かっていながら、参加したんだな、とでも言いたいのだろう。
 もしそれを言われたら、全力で謝り倒すしかあるまい。

「……。早く、い、行きましょう」

 許された。コストイラはホッと一息ついた。




 ポラリスは自分の顎を触れている指を止めた。彼(彼女?)の中で一つの答えが決まったのだろう。

 白き者は指をアレンに向けた。その途端、アレンは首元に鎌が突きつけられている場面を想起した。瞬間的に身を屈める。

『お?』

 アレンの頭上を光線が通った。屈んでいなければ即死だっただろう。後ろでめきめきと木が倒れていくのが聞こえた。

『今のも躱すのか。成る程。貴君は選ばれた側の人間のようじゃな。フム。殺すのはやめておこう』

 光線が通った。殺す気だった。確実に殺そうとしていた。朝の優雅な散歩のように。午後のまったりとしたティータイムのように。自然と殺そうとしてきた。
 殺すのはやめておこう? 信じられると思うか、阿呆!

『お? 今の音を聞きつけて、誰か来よったな?』

 誰か来た。ということは、この場には他にも誰かいる。パーティメンバーがいるかもしれない。

「おぉ! 二人! 人が二人!」

 喜んでいる。向こうも苦しかったのだろう。その感情がアレンには痛いほど分かった。

『貴君はここで何をしているのじゃ?』
「俺ァここで出口を探していたんだ。気付いたらここに来ていたんだ」
『フム。そうか』

 ポラリスが叢から出てきた騎士風の男に指を向けた。
 光線を出す、と直感で理解し、体が動いた。アレンがポラリスにタックルする。ポラリスの体が当然にように傾く。
 光線がズレ、男の顔を通過する。

「え?」

 液体の混じった声。男の顔の半分がなくなっている。

 ポラリスはタックルされると気付いた直後、指の向きを変え、当たるように調整したようだ。

 構えた楯を関係なしに貫く光線。これをさっき放たれたのか。そう思うと、アレンの背中に冷たいものが走った。

『済まんの、貴君に提供できるほど、私には膨らみがない』
「ふぇあっ!?」

 ポラリスがアレンの後頭部を掴み、自身の胸に押し付けたり離したりして堪能させてくる。

『貴君が味方しても奴は助からんかった。ということは、運がなかったのじゃ。気に病む必要はない』

 今までのことを何も感じていないのか、全身真っ白な者はそう言ってのけた。

『おっと、死体は残しておくと、怨念になるからな。ウム』

 そう言うと、ポラリスは死者を食べ始めた。

『ウン? ウンウン。成る程の。ウン? 戦姫? フム。神殿? まぁ、あれらは祈らねばならぬ性分故にな』

 喋りながら食べているため、ポロポロと贓物が零れている。口走る内容は今の死体の記憶か?

『ウム。これで我は強く、賢くなった。ウム? はて、我の一人称は我であったか?』

 アレンはもの凄く逃げたくなった。
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