メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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26.『黄昏の箱庭』

24.選定の試練

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『ところで、じゃ、アレン』

 口の周りを真っ赤に染めたポラリスがアレンを見る。ビビりなアレンにhきつい見た目となっている。
 しかし、ここで機嫌を損ねさせるはマズイ。

「な、何でしょう?」
『貴君はこの体に興味はあるか? こう、穢したいとかいう欲は?』
「な、な、何を言っているんですかっ!!?」

 アレンが耳まで顔を真っ赤にして、腕をワタワタと振り回した。

『もの凄く焦るな。さてはアレンは童貞か?』
「そ、それはいいじゃないですかっ! 今、関係あるんですかっ!?」

 真顔のままさらに突っ込んだことを聞いてくるポラリスに、焦りすぎて機嫌とかなんとか何も気にせずに叫んでしまう。

『君は、君?き、き、貴君。貴君! そうだ、我は相手のことを貴君と呼んでおったな。そうじゃ、そうじゃ。あぁ、そうじゃ、貴君が童貞であるところの話じゃ。捨てたくばいつでも言うという。相手になってやろう』
「何で、こんなことに」
『我の攻撃を避けたのは貴君が初めてなのじゃ。身を寄せても構わないじゃろうと思ったのじゃ』
「え、と」
『おっと、済まない。話を変えるが、貴君は前衛か? それとも後衛か?』

 これは素直に答えるべきだろう。

「後衛です」
『後衛。魔術、いや、弓術士じゃな?』
「はい、そうです」
『では、次に遭う者がいれば、連携を取ろうぞ。貴君の実力が知りたい』

 満面の笑みで告げてくるポラリスに、苦笑を漏らしてしまう。実力を知って殺すなんてことがあり得てしまう。できるなら戦いたくない。

 しかし、自分の不運を考えるならば、2,3回は戦いそうだ。

『早速だ』

 ポラリスが何かに気付いたように目線を移す。その先にある森の中から明るい光が漏れている。

「何ですか? あれ」
『フム。天使であろうな。我が父が完全敵対と言っていた。一切分かり合えぬ相手であるとも言っていたぞ』

 天使の敵だと言った。天使は”天界の使徒”を除けば、悪魔としか敵対しない。つまり、この者は悪魔である可能性がある。いや、高確率で悪魔だ。

 森の中から翼を大きくはためかせ、天使が現れた。純白な翼と銀の剣楯、そして足首をくるむようにしているサンダル。

『残念。”天界の使徒”じゃ。ちょっと強くて嫌な奴じゃ』

 ポラリスがペロと薄い唇を舐めた。
 今まで人っ子一人で会えていないことを嘆いていたというのに、いざ出会い始めたら敵だらけ。なんて日だ!

『まずは矢を撃ってくれないか?牽制でも的中でも構わない。我は飛べんからの。奴を堕としてくれ』

 面倒事だと思いつつ、アレンは従う。相手も狙われているのは気付いているはずだ。無遠慮に頭と翼を狙う。アレンは軋む腕を黙らせつつ、二射同時撃ちをし、直後に一本速射する。
 ポラリスは目を丸くした。卑屈な色が見えており、情けなささえ感じていた。しかし、その実力は本物。両腕があの状態であるにもかかわらず、このパフォーマンス。万全であったならば恐ろしい結果を招いていただろう。

 ヴァナディースは無礼にも頭と翼に向かってくる矢を剣で叩き落とした。
 その時、目の前にはもう一本の矢があった。今叩き落とした矢はフェイントだというのか?

 矢が翼を貫いた。飛ぶ力を失った片羽の天使は地面に落ちた。
 まず、足の裏を着けて折り曲げていき、両手をついて肘を曲げ、さらなるクッションにする。

 すぐさま剣と楯を掴んで立ち上がる。目の前には白すぎて目を傷める程白い者がいた。手の中には対称的に遠近が分からなくなるほどの黒い剣がある。

 すでに振るわれている。手段を選んでいられない。ヴァナディースは楯を振るって弾こうとする。

 剣が楯に触れた。そこに音はない。ただ次元の違う者同士であるかのように触れあった。そして、切れた。楯がバターを熱したナイフで切るように、簡単に通過した。

『え』

 それはもう生存本能だった。顔を後ろに下げていた。

 ズバリと横一文字に顔が切れた。
 相手は切った後、ここが勝機。そう思ったヴァナディースの左目に矢が突き刺さった。ヴァナディースの動きが止まる。
 ポラリスは何も理解していないが、ラッキーを噛み締めながら、漆黒の剣を振るった。

『混在種が……』

 ヴァナディースが何かを口走った。アレンの耳ではすべてを聞き取ることができなかった。その為、独特な断末魔だな、としか思わなかった。

 ポラリスが全身の中で唯一白ではない目をアレンに向けた。

『今の断末魔は聞こえたのかい?』
「いえ。何か”こん”とは聞こえてきましたけど、全部は無理でした」
『……』

 一切の無表情はシキで慣れていると思っていた。しかし、ポラリスの無表情は違う。明確な恐怖を抱いてしまった。

 シキの無表情は表情が表に出てこないだけであって、無関心でも無感動でも無感情でもない。しかし、ポラリスは全くの無感情だった。

 アレンの苦手な人種だ。

 ポラリスがある瞬間を境に満面の笑みに変わった。

『そうか。聞こえなかったか。なればよい』

 今の反応は何だったのか。
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