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26.『黄昏の箱庭』
29.聖魔融合
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ペテロシウス。”天界の使徒”に属する存在。獲物は大きなハンマーであり、戦闘ではあらゆるものを破壊することから、天界の壊し屋と呼ばれている。
その思想は良くも悪くも”天界の使徒”そのものだった。”天界の使徒”の考えをかなり濃縮させた、超過激派だ。同じ”天界の使徒”でも煙たがられていた。レベルはすでに五百に達しており、ゴイアレよりも高いとされている。
戦は量か質か。そんな議論がある。
現在の戦闘は質を重視する傾向にある。魔力を獲得してから、人類は個の力が膨大になっていった。
だが、それでも量が必要になっている。
今がまさにそうだ。
質を極めんとするペテロシウスの前に、コストイラはつばを飲み込んだ。相手は魔王ではないが、それでも満足だ。こいつは強い。
ペテロシウスがハンマーを振り下ろす。ゴイアレが大剣で防ぐが、戦神はパワーで圧し潰そうとする。
大剣を両手で持ち耐えようとする。両足が地面に埋まり、プルプルと膝が笑ってしまう。
コストイラが即座に後ろに回り、刀を振るおうとする。
パワー型は速度がない。そう思っていた。しかし、コストイラが刀を振るう前に脚が出ていた。
「ブッ!?」
コストイラが鼻から血を流しながら吹き飛ばされた。元魔王城に体を突っ込んだ。
瓦礫が音を鳴らして崩れ、コストイラの体が向こうに消える。
「かぁ~~、まだ一対一は張れねぇか」
コストイラが額を覆う。
「つーか、オレの横、何か通らなかったか?」
セプオクの右腕がくるくると回転しながら、高速で飛来してくる。それはペテロシウスに向かっていた。
とはいえ、ペテロシウスの速さであれば避けることが可能だ。だからこそ、余裕をもって躱そうとした。
そこにアシドが割って入った。槍を大きく振るい、足を縫い留めた。
動けない。いや、力を籠めれば動けるか。
そう考えた一瞬、セプオクの右腕が右脇腹に当たった。その少し前にアシドが逃げた。
爆発。
レイドが楯を構え、後ろの者達を護ろうとする。しかし、爆風は不定形だ。流れる水流を楯一つで防ぐことができないように、爆風は防げない。
エンドローゼが丸まり、その上にアストロが覆いかぶさる。その上にアシド。
レイドが奥歯を噛み締める。信用されていない。その事実がレイドを苦しめる。
レイドの体を覆う影が現れた。
ゴイアレだ。
『協力関係だからな』
その後は風で何も分からなくなった。
『ゴ、ア』
ペテロシウスはまだ死んでいない。体の右側はほとんど消失している。右腕はもちろん、下顎も臓器も右側がなくなっている。右の目玉はドロリと飛び出しており、鼻はねじ曲がっていた。目は虚ろで口からは血とともに何かをブツブツと呟いている。
『まだ死んでいないか』
ゴイアレがその巨体を起こす。何があったのか、右腕の一部が白骨化していた。
「腕が……」
『天使の命の残滓に当たったのだ。これぐらいは覚悟をしていた』
ゴイアレは受け入れているが、レイドは飲み込めない。それはエンドローゼも同じだ。
回復の本質はくっつくることだ。消失したものを生み出すことできない。
『バ、』
その言葉を遺して、ペテロシウスが倒れた。
『出てきたか』
『フーム。随分な姿になったものよな、父よ』
「ち、」
「父!?」
驚愕するアストロ達の前に現れたのは、全身が白黒の縞模様になっている者だ。
『フム。我が力が戻ってくるのを感じるよ。父よ! 礼を言おう! 我は強くなれた! 父の計画通りにな! ま、父の計画通りに動いてやるつもりはないがな! ハハハハハッ!!』
言うだけ言って、子はどこかへ飛び去って行った。
「ありゃ何だ? 天使とも悪魔とも言いづれぇ奴だったぞ」
「あの方はポラリスさん、魔王ゴイアレのお子さんですね。ただ、天使を食べることで天使の力を取り込んだと考えられます」
「それは視た情報。聞いた情報、どっちからの推測。このうちどれだ? アレン」
コストイラの問いを受け、左目に手を添えた。
「視た情報です」
「そうか」
アレンの柔らかい笑みに、コストイラは爽やかな笑みで返す。
アレンが戻ってきたことに喜んでいるが、どう表現したらいいのか分からず、もじもじしたり近づこうとして離れたりしているシキに苦笑を送りつつ、コストイラは親指を立てた。
「戻ってきてよかったぜ」
「はい。ところで」
「ん?」
話の転換を行おうとするアレンに、コストイラがキョトンとする。
「何で逆さになっているんですか?」
コストイラは戦いで転がされたままの姿勢だ。戦いの状況を知らないアレンにどう説明したらいいのか考えて、途中で面倒になった。
「あ~~、ま、いいじゃん」
『では、我々も合流しましょう』
「えっ!? あっ!? ま、魔物!?」
「味方だぞ? アレン」
いつの間にか後ろにいたリュリュレに、初対面のアレンはビビってしまった。コストイラは逆さのまま手をひらひらさせて誤解を解く。
シキがその手を掴んで立ち上がらせる。
「ありがと、ありがと」
コストイラは腰と尻を叩き、砂を落とす。
「さて、どこに行こうか」
『それならゴイアレ様にお聞きしましょう。きっといいアドバイスをしてくださるに違いありません』
「おぉ、いいね」
何か仲良さげにしている、というか、この魔物何者だ?
魔王の側近だった。
アレンの汗が止まらないが、リュリュレは何も気にしていない。
『フム。魔王にはもう会ったか? 私以外の魔王に』
「オレ達が会ったのは、インサーニア、ジャスレ、ンッナンシリス、フォン、でアンタだな」
『フム。そんなに会っているのか? では、魔王の最後の一人、グレイソレアの元に行けるようにしよう。あの河に沿っていくといい。魔物が強力だが、あの淑女であれば歓迎してくれるだろう』
素直に教えてくれた。
「じゃあ、向かうか、原初の元へ」
その思想は良くも悪くも”天界の使徒”そのものだった。”天界の使徒”の考えをかなり濃縮させた、超過激派だ。同じ”天界の使徒”でも煙たがられていた。レベルはすでに五百に達しており、ゴイアレよりも高いとされている。
戦は量か質か。そんな議論がある。
現在の戦闘は質を重視する傾向にある。魔力を獲得してから、人類は個の力が膨大になっていった。
だが、それでも量が必要になっている。
今がまさにそうだ。
質を極めんとするペテロシウスの前に、コストイラはつばを飲み込んだ。相手は魔王ではないが、それでも満足だ。こいつは強い。
ペテロシウスがハンマーを振り下ろす。ゴイアレが大剣で防ぐが、戦神はパワーで圧し潰そうとする。
大剣を両手で持ち耐えようとする。両足が地面に埋まり、プルプルと膝が笑ってしまう。
コストイラが即座に後ろに回り、刀を振るおうとする。
パワー型は速度がない。そう思っていた。しかし、コストイラが刀を振るう前に脚が出ていた。
「ブッ!?」
コストイラが鼻から血を流しながら吹き飛ばされた。元魔王城に体を突っ込んだ。
瓦礫が音を鳴らして崩れ、コストイラの体が向こうに消える。
「かぁ~~、まだ一対一は張れねぇか」
コストイラが額を覆う。
「つーか、オレの横、何か通らなかったか?」
セプオクの右腕がくるくると回転しながら、高速で飛来してくる。それはペテロシウスに向かっていた。
とはいえ、ペテロシウスの速さであれば避けることが可能だ。だからこそ、余裕をもって躱そうとした。
そこにアシドが割って入った。槍を大きく振るい、足を縫い留めた。
動けない。いや、力を籠めれば動けるか。
そう考えた一瞬、セプオクの右腕が右脇腹に当たった。その少し前にアシドが逃げた。
爆発。
レイドが楯を構え、後ろの者達を護ろうとする。しかし、爆風は不定形だ。流れる水流を楯一つで防ぐことができないように、爆風は防げない。
エンドローゼが丸まり、その上にアストロが覆いかぶさる。その上にアシド。
レイドが奥歯を噛み締める。信用されていない。その事実がレイドを苦しめる。
レイドの体を覆う影が現れた。
ゴイアレだ。
『協力関係だからな』
その後は風で何も分からなくなった。
『ゴ、ア』
ペテロシウスはまだ死んでいない。体の右側はほとんど消失している。右腕はもちろん、下顎も臓器も右側がなくなっている。右の目玉はドロリと飛び出しており、鼻はねじ曲がっていた。目は虚ろで口からは血とともに何かをブツブツと呟いている。
『まだ死んでいないか』
ゴイアレがその巨体を起こす。何があったのか、右腕の一部が白骨化していた。
「腕が……」
『天使の命の残滓に当たったのだ。これぐらいは覚悟をしていた』
ゴイアレは受け入れているが、レイドは飲み込めない。それはエンドローゼも同じだ。
回復の本質はくっつくることだ。消失したものを生み出すことできない。
『バ、』
その言葉を遺して、ペテロシウスが倒れた。
『出てきたか』
『フーム。随分な姿になったものよな、父よ』
「ち、」
「父!?」
驚愕するアストロ達の前に現れたのは、全身が白黒の縞模様になっている者だ。
『フム。我が力が戻ってくるのを感じるよ。父よ! 礼を言おう! 我は強くなれた! 父の計画通りにな! ま、父の計画通りに動いてやるつもりはないがな! ハハハハハッ!!』
言うだけ言って、子はどこかへ飛び去って行った。
「ありゃ何だ? 天使とも悪魔とも言いづれぇ奴だったぞ」
「あの方はポラリスさん、魔王ゴイアレのお子さんですね。ただ、天使を食べることで天使の力を取り込んだと考えられます」
「それは視た情報。聞いた情報、どっちからの推測。このうちどれだ? アレン」
コストイラの問いを受け、左目に手を添えた。
「視た情報です」
「そうか」
アレンの柔らかい笑みに、コストイラは爽やかな笑みで返す。
アレンが戻ってきたことに喜んでいるが、どう表現したらいいのか分からず、もじもじしたり近づこうとして離れたりしているシキに苦笑を送りつつ、コストイラは親指を立てた。
「戻ってきてよかったぜ」
「はい。ところで」
「ん?」
話の転換を行おうとするアレンに、コストイラがキョトンとする。
「何で逆さになっているんですか?」
コストイラは戦いで転がされたままの姿勢だ。戦いの状況を知らないアレンにどう説明したらいいのか考えて、途中で面倒になった。
「あ~~、ま、いいじゃん」
『では、我々も合流しましょう』
「えっ!? あっ!? ま、魔物!?」
「味方だぞ? アレン」
いつの間にか後ろにいたリュリュレに、初対面のアレンはビビってしまった。コストイラは逆さのまま手をひらひらさせて誤解を解く。
シキがその手を掴んで立ち上がらせる。
「ありがと、ありがと」
コストイラは腰と尻を叩き、砂を落とす。
「さて、どこに行こうか」
『それならゴイアレ様にお聞きしましょう。きっといいアドバイスをしてくださるに違いありません』
「おぉ、いいね」
何か仲良さげにしている、というか、この魔物何者だ?
魔王の側近だった。
アレンの汗が止まらないが、リュリュレは何も気にしていない。
『フム。魔王にはもう会ったか? 私以外の魔王に』
「オレ達が会ったのは、インサーニア、ジャスレ、ンッナンシリス、フォン、でアンタだな」
『フム。そんなに会っているのか? では、魔王の最後の一人、グレイソレアの元に行けるようにしよう。あの河に沿っていくといい。魔物が強力だが、あの淑女であれば歓迎してくれるだろう』
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