メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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27.川の流れ着く先

1.西の河原

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「綺麗ね」

 左腕に巻かれた包帯を解いたアストロが、断面を見て呟いた。魔道具のおかげなので、エンドローゼはシュンとしている。
 アストロは残っている右手でエンドローゼの頭を撫でた。

「あ、あの、い、い、い、痛くないですか?」
「腕がない状態だしな。普通にしているけど、大丈夫なのか?」
「えぇ、大丈夫よ。レンオニオールのおかげで痛みはなくなったわ」
「レンオニオールはアストロさんの会ったことのない唯一のグランセマイユですよね」
「そうね。貴方が箱の中にいる間に私達は死者に会っていたのよ」

 アストロの言葉を受け、コストイラ達がうんうんと頷いている。アストロの言葉とコストイラ達の反応を見て、アレンは困惑している。
 死者と会っていた、と言われて、あまり強く否定できない。コストイラの信仰している宗教の教祖は現在は幽霊として活動している。さらに冥界にだって行ったことがある。
 死者と会ったくらいでは驚かない。

「それは別にいいんだけどよ。原初グレイソレアはメチャ強ッて聞くぜ。本当に歓迎してくれるのかよ」

 アシドが岩に脚を乗っけて手で笠を作り、川の先を見ている。口角がもにょもにょと動いている。目線の先に海があるのだろうか。
 コストイラ達は面倒くさいことになると考え、あえて触れない。アシドも無視されていることに気付いているが、笑みが止められない。

「な、な、何か、笑っていませんか?」
「シッ! ほっときなさい! 戻ってこれなくなるわよ」
「な、成る程」

 エンドローゼの声を押さえながら、アストロが離れていく。

「あの、コストイラさん」
「んぁ? 何だ?」
「今は離れていますけど、何か最近シキさんがすごく近いんですけど、う、嬉しいんですけど、何でか知ってます?」

 コストイラの口の端が引き攣っていく。ゆっくりと左手を持ち上げ、え~と言いながら揉み解していく。アレンは何か知っているのだな、と思い、前のめりになった。
 コストイラは答えてもいいのだが、先ほどからアレンに分からぬ威圧を向けてきているのが怖すぎる。奪るなよって? 誰が獲るか。オレはアストロ推しだ。

「コストイラさん?」
「シキは基本無口だからなぁ。何か要求する時は口を開くだろ、うん」
「つまり?」
「つまり!? えぇ、む、無視しとけ」

 なかなか察してくれない鈍感系主人公に、痺れを切らしてぶん殴りたい衝動に駆られるが、そんなことしたらシキに殺される。
 そもそもシキの態度が変わったのなど、かなり前からだ。ここまで露骨になったのはミラージュでも一件以降である。
 ここまで来て気付いていないとなると、このカップルはだいぶ難しそうだ。とりあえず今は激励でも送っておこう。

「がんばれよ」
「え? あ、はい。え?」

 何を応援されたのか分かっていないのだろう。しかし、もう説明してやる気などない。

「よし、休憩終わり、もう行くぜ」
「そうね。行きましょ」
「ウム」
「は、はい」
「よっしゃ」
「ン」

 もう歩き出している仲間達に、一歩遅れる形で、アレンも出発した。
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