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27.川の流れ着く先
4.眠りの森
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河が下り坂とともについてくる。土地が渓谷から森へ変わっても同じだった。
「楽だな。道がきちんとわかっているってよ」
「だ、大丈夫ですか?」
地層が悪いのか、根が表に露出しており、躓きそうになる。片腕しかないアストロはさらにつらいことになっている。隣にエンドローゼが支えながら進行していた。
「おい、何か聞こえないか?」
「は?」
先頭を歩くコストイラが不穏なことを言った。アシドが片眉を上げて耳を澄ませる。
確かに聞こえる。どこか歌のような綺麗な声だ。
「聞こえただろ?」
「あぁ、幽かにだけどな」
「何かの歌みたいに聞こえんだけど、知っているか?」
「いや?」
「他の奴は知っているか?」
「……」
「あれ?」
返答が返ってこないことで変に思い、振り返る。フラリと頭が落ちそうになった。
「あん?」
アレンやレイドが倒れている。毒かと疑い、すぐさま口鼻を手で覆う。目玉だけを動かし、無事なものを見つける。
無事なのはアストロとシキのみ。
アストロはもうきついのか、木に寄りかかり、何とか耐えている印象だ。シキはある一点を見つめ続けている。
「コストイラ、シキ、これは、毒、じゃない。う、歌よ。歌手を、止めなさい」
眠気に抗いながら、ぶつ切りで考えを述べる。眠気に包まれ始めたコストイラが納得し、シキを見た。
「オレの勘は眠気で鈍っちまっている。敵の位置が把握できねぇ。シキはどうだ?」
「見える」
「アストロはあとどれくらい耐えられる?」
「確実なことは言えないわ。でも、5分は耐えて見せるわ」
コストイラが重い瞼に抗いながら、必死に頭を働かせる。
「アストロは遠距離なうえ、片腕だ。心配だからオレは残るぜ。シキ、頼むぜ。5分以内の決着を」
「承知」
命令を受けたシキは直ちに走り出した。
ショカン一行は休憩していた。メンバーの一人であるレイヴェニアは、サーシャとともに街に出ていた。新しい街に来たのなら、これをやらねば楽しくない。
「お酒は駄目ですからね」
サーシャに釘を刺された。この町は地酒が美味しくて有名だというのに、あんまりな仕打ちだ。とはいえ、この童には嫌われたくないので、一応は従う。
「おん?」
「居酒屋をご覧になっていても、僕は許可しませんからね」
「それは許可してほしいところじゃが、今の関心はそれではない。あの男じゃ」
レイヴェニアが指を差す先をサーシャも見る。
白。しかし、眩しくない、落ち着いた印象を受ける白だ。背中しか見えないため、すべての印象は決められないが、白を基調としたキモノからは強者の雰囲気を嗅ぎ取れた。
「あの人、人? あの方は?」
「面倒じゃ、人で構わんじゃろ。あれはヴェーの昔馴染みじゃ」
「おぉ」
サーシャが目を輝かせている。謎が多い仲間の中でも特に謎が多い。レイヴェニアの謎が分かるかもしれない。
「話しかけてみましょう」
「……ま、よいか」
可愛い顔を向けられ、レイヴェニアは折れた。
これまでに感じたことのない高揚を抱えながら男に近づく。
「久方振りすぎる再会じゃな、ヲルクィトゥ」
これまでに聞いたことのないほど、出したことのないほどの優しい声で話しかけた。白髪の男はゆっくりと振り返った。
「誰かと思えば、レイヴェニアか」
「懐かしいの」
「殺し合いをしていた頃に比べれば、珍しいな、話しかけるなど」
自然な動きでヲルクィトゥの隣に座った。
「飲むか?」
「うんにゃ。愛い童に止められてしまった」
「それで止めるなど、かつての魔女ぶりはどこへやら。では、ジュースでも」
「うんと甘いやつを頼もう」
出てきたコップに口をつけた直後、レイヴェニアの眉が顰められた。
「もっとサラサラしておると思った」
コップを真横に倒しても、ドロドロと動いており、まだ垂れない。これ、液体じゃねーだろ。
「ぼ、僕はスッキリするものを頼もうと思います」
「おぉ、童の敬語」
「童なら失礼なくらいがちょうどいいのでは?」
3人が飲み物を口をつける。
「ヲルクィトゥは何をしておるのじゃ」
「私か? 私は魔大陸を目指して旅をしているよ。そういう君達はどうなのだ?」
「ヴェ―達もじゃ。魔大陸を目指しておるよ」
ヲルクィトゥとレイヴェニアの視線が絡まる。無言のやり取り。そして、レイヴェニアは首を振った。ドロドロと甘ったるいジュースを飲み干すと、立ち上がった。
「行くぞ、童。帰る」
「え?」
サーシャがヲルクィトゥのことを見る。
「我等は目的地は同じだが、目的が違う。我等は別々に行動した方がよいだろう」
「あ」
レイヴェニアに腕を引かれ、サーシャはその場を離れることとなった。
「楽だな。道がきちんとわかっているってよ」
「だ、大丈夫ですか?」
地層が悪いのか、根が表に露出しており、躓きそうになる。片腕しかないアストロはさらにつらいことになっている。隣にエンドローゼが支えながら進行していた。
「おい、何か聞こえないか?」
「は?」
先頭を歩くコストイラが不穏なことを言った。アシドが片眉を上げて耳を澄ませる。
確かに聞こえる。どこか歌のような綺麗な声だ。
「聞こえただろ?」
「あぁ、幽かにだけどな」
「何かの歌みたいに聞こえんだけど、知っているか?」
「いや?」
「他の奴は知っているか?」
「……」
「あれ?」
返答が返ってこないことで変に思い、振り返る。フラリと頭が落ちそうになった。
「あん?」
アレンやレイドが倒れている。毒かと疑い、すぐさま口鼻を手で覆う。目玉だけを動かし、無事なものを見つける。
無事なのはアストロとシキのみ。
アストロはもうきついのか、木に寄りかかり、何とか耐えている印象だ。シキはある一点を見つめ続けている。
「コストイラ、シキ、これは、毒、じゃない。う、歌よ。歌手を、止めなさい」
眠気に抗いながら、ぶつ切りで考えを述べる。眠気に包まれ始めたコストイラが納得し、シキを見た。
「オレの勘は眠気で鈍っちまっている。敵の位置が把握できねぇ。シキはどうだ?」
「見える」
「アストロはあとどれくらい耐えられる?」
「確実なことは言えないわ。でも、5分は耐えて見せるわ」
コストイラが重い瞼に抗いながら、必死に頭を働かせる。
「アストロは遠距離なうえ、片腕だ。心配だからオレは残るぜ。シキ、頼むぜ。5分以内の決着を」
「承知」
命令を受けたシキは直ちに走り出した。
ショカン一行は休憩していた。メンバーの一人であるレイヴェニアは、サーシャとともに街に出ていた。新しい街に来たのなら、これをやらねば楽しくない。
「お酒は駄目ですからね」
サーシャに釘を刺された。この町は地酒が美味しくて有名だというのに、あんまりな仕打ちだ。とはいえ、この童には嫌われたくないので、一応は従う。
「おん?」
「居酒屋をご覧になっていても、僕は許可しませんからね」
「それは許可してほしいところじゃが、今の関心はそれではない。あの男じゃ」
レイヴェニアが指を差す先をサーシャも見る。
白。しかし、眩しくない、落ち着いた印象を受ける白だ。背中しか見えないため、すべての印象は決められないが、白を基調としたキモノからは強者の雰囲気を嗅ぎ取れた。
「あの人、人? あの方は?」
「面倒じゃ、人で構わんじゃろ。あれはヴェーの昔馴染みじゃ」
「おぉ」
サーシャが目を輝かせている。謎が多い仲間の中でも特に謎が多い。レイヴェニアの謎が分かるかもしれない。
「話しかけてみましょう」
「……ま、よいか」
可愛い顔を向けられ、レイヴェニアは折れた。
これまでに感じたことのない高揚を抱えながら男に近づく。
「久方振りすぎる再会じゃな、ヲルクィトゥ」
これまでに聞いたことのないほど、出したことのないほどの優しい声で話しかけた。白髪の男はゆっくりと振り返った。
「誰かと思えば、レイヴェニアか」
「懐かしいの」
「殺し合いをしていた頃に比べれば、珍しいな、話しかけるなど」
自然な動きでヲルクィトゥの隣に座った。
「飲むか?」
「うんにゃ。愛い童に止められてしまった」
「それで止めるなど、かつての魔女ぶりはどこへやら。では、ジュースでも」
「うんと甘いやつを頼もう」
出てきたコップに口をつけた直後、レイヴェニアの眉が顰められた。
「もっとサラサラしておると思った」
コップを真横に倒しても、ドロドロと動いており、まだ垂れない。これ、液体じゃねーだろ。
「ぼ、僕はスッキリするものを頼もうと思います」
「おぉ、童の敬語」
「童なら失礼なくらいがちょうどいいのでは?」
3人が飲み物を口をつける。
「ヲルクィトゥは何をしておるのじゃ」
「私か? 私は魔大陸を目指して旅をしているよ。そういう君達はどうなのだ?」
「ヴェ―達もじゃ。魔大陸を目指しておるよ」
ヲルクィトゥとレイヴェニアの視線が絡まる。無言のやり取り。そして、レイヴェニアは首を振った。ドロドロと甘ったるいジュースを飲み干すと、立ち上がった。
「行くぞ、童。帰る」
「え?」
サーシャがヲルクィトゥのことを見る。
「我等は目的地は同じだが、目的が違う。我等は別々に行動した方がよいだろう」
「あ」
レイヴェニアに腕を引かれ、サーシャはその場を離れることとなった。
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