メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
496 / 684
27.川の流れ着く先

4.眠りの森

しおりを挟む
 河が下り坂とともについてくる。土地が渓谷から森へ変わっても同じだった。

「楽だな。道がきちんとわかっているってよ」
「だ、大丈夫ですか?」

 地層が悪いのか、根が表に露出しており、躓きそうになる。片腕しかないアストロはさらにつらいことになっている。隣にエンドローゼが支えながら進行していた。

「おい、何か聞こえないか?」
「は?」

 先頭を歩くコストイラが不穏なことを言った。アシドが片眉を上げて耳を澄ませる。
 確かに聞こえる。どこか歌のような綺麗な声だ。

「聞こえただろ?」
「あぁ、幽かにだけどな」
「何かの歌みたいに聞こえんだけど、知っているか?」
「いや?」
「他の奴は知っているか?」
「……」
「あれ?」

 返答が返ってこないことで変に思い、振り返る。フラリと頭が落ちそうになった。

「あん?」

 アレンやレイドが倒れている。毒かと疑い、すぐさま口鼻を手で覆う。目玉だけを動かし、無事なものを見つける。
 無事なのはアストロとシキのみ。

 アストロはもうきついのか、木に寄りかかり、何とか耐えている印象だ。シキはある一点を見つめ続けている。

「コストイラ、シキ、これは、毒、じゃない。う、歌よ。歌手を、止めなさい」

 眠気に抗いながら、ぶつ切りで考えを述べる。眠気に包まれ始めたコストイラが納得し、シキを見た。

「オレの勘は眠気で鈍っちまっている。敵の位置が把握できねぇ。シキはどうだ?」
「見える」
「アストロはあとどれくらい耐えられる?」
「確実なことは言えないわ。でも、5分は耐えて見せるわ」

 コストイラが重い瞼に抗いながら、必死に頭を働かせる。

「アストロは遠距離なうえ、片腕だ。心配だからオレは残るぜ。シキ、頼むぜ。5分以内の決着を」
「承知」

 命令を受けたシキは直ちに走り出した。




 ショカン一行は休憩していた。メンバーの一人であるレイヴェニアは、サーシャとともに街に出ていた。新しい街に来たのなら、これをやらねば楽しくない。

「お酒は駄目ですからね」

 サーシャに釘を刺された。この町は地酒が美味しくて有名だというのに、あんまりな仕打ちだ。とはいえ、この童には嫌われたくないので、一応は従う。

「おん?」
「居酒屋をご覧になっていても、僕は許可しませんからね」
「それは許可してほしいところじゃが、今の関心はそれではない。あの男じゃ」

 レイヴェニアが指を差す先をサーシャも見る。

 白。しかし、眩しくない、落ち着いた印象を受ける白だ。背中しか見えないため、すべての印象は決められないが、白を基調としたキモノからは強者の雰囲気を嗅ぎ取れた。

「あの人、人? あの方は?」
「面倒じゃ、人で構わんじゃろ。あれはヴェーの昔馴染みじゃ」
「おぉ」

 サーシャが目を輝かせている。謎が多い仲間の中でも特に謎が多い。レイヴェニアの謎が分かるかもしれない。

「話しかけてみましょう」
「……ま、よいか」

 可愛い顔を向けられ、レイヴェニアは折れた。

 これまでに感じたことのない高揚を抱えながら男に近づく。

「久方振りすぎる再会じゃな、ヲルクィトゥ」

 これまでに聞いたことのないほど、出したことのないほどの優しい声で話しかけた。白髪の男はゆっくりと振り返った。

「誰かと思えば、レイヴェニアか」
「懐かしいの」
「殺し合いをしていた頃に比べれば、珍しいな、話しかけるなど」

 自然な動きでヲルクィトゥの隣に座った。

「飲むか?」
「うんにゃ。愛い童に止められてしまった」
「それで止めるなど、かつての魔女ぶりはどこへやら。では、ジュースでも」
「うんと甘いやつを頼もう」

 出てきたコップに口をつけた直後、レイヴェニアの眉が顰められた。

「もっとサラサラしておると思った」

 コップを真横に倒しても、ドロドロと動いており、まだ垂れない。これ、液体じゃねーだろ。

「ぼ、僕はスッキリするものを頼もうと思います」
「おぉ、童の敬語」
「童なら失礼なくらいがちょうどいいのでは?」

 3人が飲み物を口をつける。

「ヲルクィトゥは何をしておるのじゃ」
「私か? 私は魔大陸を目指して旅をしているよ。そういう君達はどうなのだ?」
「ヴェ―達もじゃ。魔大陸を目指しておるよ」

 ヲルクィトゥとレイヴェニアの視線が絡まる。無言のやり取り。そして、レイヴェニアは首を振った。ドロドロと甘ったるいジュースを飲み干すと、立ち上がった。

「行くぞ、童。帰る」
「え?」

 サーシャがヲルクィトゥのことを見る。

「我等は目的地は同じだが、目的が違う。我等は別々に行動した方がよいだろう」
「あ」

 レイヴェニアに腕を引かれ、サーシャはその場を離れることとなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...