メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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28.岩礁の遺跡

7.河岸の段丘

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 アレンは情けない奴だと思っている。たいして参加できるような攻撃力はなく、度胸もない。何とか皆に付いて行こうとする意思はあるようだが、そこに体が追い着けていない。

 しかし、そこでアレンを見捨てられるほど、アレンを嫌っていない。むしろ好き。

 アレンのここに至るまでで、変わってきている。いわゆる役割の話だ。最初は互いが互いをそれどころか自分さえ何の役割を持っているのか分かっていなかった。アレンは勇者の眼としてやる気に満ち溢れていた。

 すでに自分が無能だと分かり、腐り始めた。

 勇者一行→司令塔→無能・お荷物に変化した。そして、現在のアレンは、お荷物から心の拠り所に進化した。まぁ、そもそもの話。シキは例の一件までの間でアレンを意識をしたことなどほとんどない。しかも、その印象は同郷の弱いやつ。申し訳ないが、眼中になかった。
 幸いなことは、仲間という意識だけは持たれていた点だろう。

 そんな評価だったのが、今や心の拠り所。頑張れる要因。人生何があるか分からないものだ。

 しかし、当の本人であるアレンは、そのことに気付いていない。彼の中では自身の評価はいまだに無能かつお荷物なのだ。原因は三つある。

 一つ目はアレンの思い込みだ。シキが自分を好きになるはずがない、と心のどこかで思ってしまっている。
 二つ目はアレンの意識だ。アレンにとって、戦いで活躍することは、敵を倒すことや味方を回復することのどちらかに分類される。何も考えていないRPGの攻略のように、バフ、デバフを使わない、脳筋ゴリ押し戦法が主流になっているのだ。その為、どちらにも分類できないアレンは、ただのお荷物だ。
 三つ目はシキにある。シキは無口で無表情であることが多いが、特定の相手であれば、無口でなくなる。表情は乏しいが、感情を示す時がある。その相手と言うのは、家族と勇者一行だ。アレンを除いた。

 シキは一度意識してしまったからなのか、アレンの前だとぎこちなくなる。
 現に、アレンが段丘を一段下りたところで顔を洗っているのだが、シキはと言うと、その後ろでなぜかモジモジしている。なぜか洗っているところを見られたくないという、シキに女の子的感覚が芽生え始めているようなのだ。

「し、し、シキさんって不器用だったんですね」
「得手不得手があるってことね。これはちょっと意外だったけど」
「と言っても、オレ達が何アドバイスすんだよ」
「言えてる」

 見守る三人の言葉をしっかりと聞き、シキが意を決して川に手をつける。しかし、女の子的感覚が邪魔してくる。男の前で汚れを落とすなんて、はしたないのでは? いや、しかし、汚れたままだと、それはそれで失礼になるのではないか?
 ぐるぐると回る二つの疑問。そこで強引に答えを出さざるを得ない瞬間が来る。

「シキさん?」

 そう、アレンが気付いたのだ。とはいえ、当然のことだ。シキは川に手をつけたまま固まっている。流石のアレンでも気付いてしまった。 

 その結果、ポーンとシキは川に飛び込んだ!

「シキさん!?」

 これにはアレンが叫んだ。予想外の行動すぎる。普段落ち着いた雰囲気のあるアストロやレイドでさえ目が飛び出さんばかりに見開いた。声が出なかったのは、そういう性格だっただけだ。

 シキが飛び込んだところの水が赤く染まっていく。

 アレンがオロオロしながら川の中に入ろうとするが、アシドに止められた。

「水かなオレが行くぜ」

 そういうアシドの口は緩んでいる。単に泳ぎたいだけでは? という質問は無粋か。
 ものすごく綺麗なフォームでアシドが入水する。それと入れ替わるようにシキが水から上がってきた。

「なぜアシドが入水を?」
「お前じゃい」

 髪の端から水を落としながら、首を傾げた。コストイラからの鋭いツッコミに、目を丸くする。
 本当に自分が原因と分かっていない顔だ。アレンはシキの表情からそう読み取った。自分に向かってはここまでの表情の変化を見せたことがない。

 やはりシキは僕の事なんて見ていないのではないか?
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