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28.岩礁の遺跡
8.湾口での予兆
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アシドが不機嫌である。理由は分かっている。助けようとした相手が自力で戻ってきたのだ。自分の行動の意味がなくなってしまう。
とはいえ、アシドはシキを責めているわけではない。単純に自分のせいなのだから、責めている相手は自分だ。
何だ、オレ? まだ仲間が信用できないか?
水浴びができたので、どん底ではないが、自分が嫌になる。
「あぁ、海に着かねぇかなぁ」
何か悩みがあると、アシドは海を見に行く。海の雄大さが、自分の悩みの小ささを痛感させてくれる。それを実感した時、その悩みの解決策が思い浮かぶ。
気持ちの整理が間に合っていないアシドは願いを口にした。
勇者一行が海を目指してすでに数日が経過している。コストイラにとってたった数日でも、アシドにとっては数か月にも感じられている。
ないと分かっている時の我慢は数か月できるが、もうすぐで着くと分かっている時の我慢は一か月も持たない。
願いを口にした十分後、その願いが実現した。
コストイラが森を抜け、海へと辿り着いたのだ。
「うおおおおおおおおおお!!」
アシドのテンションの上がった。
ここは海と言っても湾であるため、視界百八十度すべてが海であるわけではない。それでもここが海であるという事実が、アシドのテンションを上げた。
アシドが一目散に森を抜け、砂浜に立った。
陽光に晒されアツアツになっている砂浜だが、今はこれでさえ心地よい。
「罠とか考えないのかよ。アイツ海を目の前にしてテンション上がりすぎだろ」
「強敵を目の前にした貴方そっくりね」
「え? マジ?」
文句がブーメランとなって返ってくると思っていなかったのか、コストイラが驚いている。
勇者パーティは全員が何か熱中するものを持っている。コストイラが気付いていなかっただけだ。
海に近づいたアシドがいち早く気付いた。海の中に何かいる。それが何かは分からないが、魔物であるのは間違いない。
海に入るか? この海に入りたいが、魔物がいる。でも、入りたい。
よし、魔物を排除しよう。
アシドが槍をくるくる回し、集中していく。魔物はどこだ?
水の流れが感じ取れる。その流れの速さから速度を、流れの幅から体の大きさを推測していく。
どこまでも深く、深く落ちていく。
沈み、沈み、さらに沈み、深海へと。
多い。あまりにも多い。何だ? この数は? 異常。これはパレードか? ヴァイパー、シーサーペント、エルダーサーペント、イビルマーメイド。水棲生物系の魔物のオンパレードだ。
数が二千を超えたあたりから数えるのを諦めた。これ以上は意味がない。
アシドが全員に声を掛けようとした。
その時、後ろから魔物達が波となって飛び出してきた。
ザザーと波が音を立てている。
荒れが一切ない、静かな海に向かい、金髪の少女が岩に座っていた。
この海の向こう側にアシドがいる。そう考えると、少し頬が緩んできた。
妹のアルバトエルの夢は姉としてなんでも叶えてあげたい。飴と鞭は使い分けている気なのだが、飴が八割あるのは事実だ。
少し厳しくしようとしているのだが、アシドとの結婚は叶えてあげたい。アシドの父ゾースの許可はもう貰っている。アシドが帰ってきたら即挙式というのも可能だ。
ここで一つの問題が出てくる。人間の結婚は一夫一妻制なのだ。アルバトエルとチラスレアが同時に結婚できない。しかし、吸血鬼は一夫多妻でも一妻多夫でも当人が優秀であれば何人でも結婚できるのだ。
異種族の違い。これがどこまで認められるのか。
「うーん」
チラスレアは一人で悩む。
「あん?」
三十代後半の中堅冒険者マッハがその後ろ姿を見た。
「こんなところに少女が一人。クリストロだと認められているのね」
「それだけ安全ってことなんだろうな」
マッハに続いて、同パーティのテントラム、ヒューリが感想を述べる。彼等の故郷の町ならば、同様の行為をしようものなら、その子の親は禁錮刑だ。
そこで斥候を務めているピュリシュがあることに気付いた。
あれ? この子、吸血鬼じゃね?
とはいえ、アシドはシキを責めているわけではない。単純に自分のせいなのだから、責めている相手は自分だ。
何だ、オレ? まだ仲間が信用できないか?
水浴びができたので、どん底ではないが、自分が嫌になる。
「あぁ、海に着かねぇかなぁ」
何か悩みがあると、アシドは海を見に行く。海の雄大さが、自分の悩みの小ささを痛感させてくれる。それを実感した時、その悩みの解決策が思い浮かぶ。
気持ちの整理が間に合っていないアシドは願いを口にした。
勇者一行が海を目指してすでに数日が経過している。コストイラにとってたった数日でも、アシドにとっては数か月にも感じられている。
ないと分かっている時の我慢は数か月できるが、もうすぐで着くと分かっている時の我慢は一か月も持たない。
願いを口にした十分後、その願いが実現した。
コストイラが森を抜け、海へと辿り着いたのだ。
「うおおおおおおおおおお!!」
アシドのテンションの上がった。
ここは海と言っても湾であるため、視界百八十度すべてが海であるわけではない。それでもここが海であるという事実が、アシドのテンションを上げた。
アシドが一目散に森を抜け、砂浜に立った。
陽光に晒されアツアツになっている砂浜だが、今はこれでさえ心地よい。
「罠とか考えないのかよ。アイツ海を目の前にしてテンション上がりすぎだろ」
「強敵を目の前にした貴方そっくりね」
「え? マジ?」
文句がブーメランとなって返ってくると思っていなかったのか、コストイラが驚いている。
勇者パーティは全員が何か熱中するものを持っている。コストイラが気付いていなかっただけだ。
海に近づいたアシドがいち早く気付いた。海の中に何かいる。それが何かは分からないが、魔物であるのは間違いない。
海に入るか? この海に入りたいが、魔物がいる。でも、入りたい。
よし、魔物を排除しよう。
アシドが槍をくるくる回し、集中していく。魔物はどこだ?
水の流れが感じ取れる。その流れの速さから速度を、流れの幅から体の大きさを推測していく。
どこまでも深く、深く落ちていく。
沈み、沈み、さらに沈み、深海へと。
多い。あまりにも多い。何だ? この数は? 異常。これはパレードか? ヴァイパー、シーサーペント、エルダーサーペント、イビルマーメイド。水棲生物系の魔物のオンパレードだ。
数が二千を超えたあたりから数えるのを諦めた。これ以上は意味がない。
アシドが全員に声を掛けようとした。
その時、後ろから魔物達が波となって飛び出してきた。
ザザーと波が音を立てている。
荒れが一切ない、静かな海に向かい、金髪の少女が岩に座っていた。
この海の向こう側にアシドがいる。そう考えると、少し頬が緩んできた。
妹のアルバトエルの夢は姉としてなんでも叶えてあげたい。飴と鞭は使い分けている気なのだが、飴が八割あるのは事実だ。
少し厳しくしようとしているのだが、アシドとの結婚は叶えてあげたい。アシドの父ゾースの許可はもう貰っている。アシドが帰ってきたら即挙式というのも可能だ。
ここで一つの問題が出てくる。人間の結婚は一夫一妻制なのだ。アルバトエルとチラスレアが同時に結婚できない。しかし、吸血鬼は一夫多妻でも一妻多夫でも当人が優秀であれば何人でも結婚できるのだ。
異種族の違い。これがどこまで認められるのか。
「うーん」
チラスレアは一人で悩む。
「あん?」
三十代後半の中堅冒険者マッハがその後ろ姿を見た。
「こんなところに少女が一人。クリストロだと認められているのね」
「それだけ安全ってことなんだろうな」
マッハに続いて、同パーティのテントラム、ヒューリが感想を述べる。彼等の故郷の町ならば、同様の行為をしようものなら、その子の親は禁錮刑だ。
そこで斥候を務めているピュリシュがあることに気付いた。
あれ? この子、吸血鬼じゃね?
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