メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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28.岩礁の遺跡

9.暴れん坊の玄能

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 勇者一行全体を見た際、総合力に関する弱点がある。
 もちろん対空戦のことだ。空に対する明確な対策を持ち合わせているのは、アレン、アストロ、エンドローゼしかいなかった。エンドローゼに攻撃意識がなく、アレンの手が弓矢向きではなくなったことで、空に対してさらに弱くなってしまった。

 しかしながら、シキやコストイラが原始的な遠距離攻撃である投石を身につけたことで、多少の解消を見せた。

 その時、もう一つの弱点が浮き彫りになった。

 広範囲攻撃ができる奴、少なくね?

 実は広範囲攻撃ができる者が少なく、アストロ、アレン、エンドローゼの、これまた三人なのだ。そして、先程と同じ理由から、頼れるのはアストロだけなわけだ。
 しかし、これまでそのことが発覚していなかった。理由は簡単だ。必要な場面になる機会がなかったのだ。ただそれだけだ。
 これまでも広範囲攻撃が必要そうな場面はあった。ゴブリンパレードや砂漠でのパレード、その他パレードの時だ。

 ただ、ここまで読んできた方々ならお察しだろう。使うことなく対処できてしまったのだ。

 考えていない、想定していないことは対応策を持ち合わせていない。
 それをアシドは呪った。




 波。

 通常海で見られる波に恐怖を感じる者は少ないだろう。ただ、穏やかに寄せては返す。静けささえ感じる者もいるだろう。

 その波に恐怖している。この波をどう対処すればいい?

 アシドは反射的に体が動いた。槍を振るい、先頭にいたブルードラゴンを叩く。その巨大な体に押され、ドミノ倒し的に後ろの魔物も倒れていく。
 しかし、物量が多いというのは馬力が違うということだ。百体以上、軽く百tを超えているにもかかわらず、後ろにいた魔物達が押し返した。

 アシドは作った一瞬の隙で、後方へ駆け出した。この数は流石に相手できない。

「ここは私が」

 アストロが右手を突き出し、丁寧に魔力を練り上げる。今この場で出せる魔術は水に弱い火魔術。

 しかし、魔力は十分。火力も十分。

 水棲生物の体を覆う水分が蒸発し、その下に隠された肌を焼いていく。生臭く嫌な臭いをさせながら倒れる魔物を潰して、後続の魔物が進行してくる。

 止まらない。

 アストロが奥歯を噛み締める。初めて気づいた弱点。それに対する策は思いついていない。ゴリ押しは確実に死ぬ。マズイ、どうしたらいい?

 ドン! と、後ろにいた魔物が跳ね上げられた。
 その原因に目が行く。そこには鉦を鳴らすためのT字形の棒のようなものが見えた。その両端は生命体の象徴ともいえる目が見える。

 相手はハンマーヘッドか。




 ピュリシュはテントラムの背負うリュックから魔道具を取り出す。これを使えば吸血鬼かどうかが分かる。

 吸血鬼は恐怖の対象であり、討伐の対象だ。
 約四百年前にとある吸血鬼が、敵も味方も関係なく大虐殺を行ったという歴史がある。
 このただ一人の吸血鬼のせいで、吸血鬼全体が恐怖で見られることになった。見かけ次第叩く。それが吸血鬼に対する考えだ。

 それを聞いた剣士のバリトンが剣に手を伸ばす。叩くなら早い方がいい。虫と同じだ。

 バリトンの暮らしていた町は、吸血鬼に壊滅させられた場所だ。その気持ちが、重いが、情動が体を動かす。

 その殺気のようなものが感じ取れ、マッハが女剣士を止めようとする。しかし、バリトンは仲間も涙も置き去りにした。

 そして、レベル三十八の本気の居合をぶつけた。
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