511 / 684
28.岩礁の遺跡
9.暴れん坊の玄能
しおりを挟む
勇者一行全体を見た際、総合力に関する弱点がある。
もちろん対空戦のことだ。空に対する明確な対策を持ち合わせているのは、アレン、アストロ、エンドローゼしかいなかった。エンドローゼに攻撃意識がなく、アレンの手が弓矢向きではなくなったことで、空に対してさらに弱くなってしまった。
しかしながら、シキやコストイラが原始的な遠距離攻撃である投石を身につけたことで、多少の解消を見せた。
その時、もう一つの弱点が浮き彫りになった。
広範囲攻撃ができる奴、少なくね?
実は広範囲攻撃ができる者が少なく、アストロ、アレン、エンドローゼの、これまた三人なのだ。そして、先程と同じ理由から、頼れるのはアストロだけなわけだ。
しかし、これまでそのことが発覚していなかった。理由は簡単だ。必要な場面になる機会がなかったのだ。ただそれだけだ。
これまでも広範囲攻撃が必要そうな場面はあった。ゴブリンパレードや砂漠でのパレード、その他パレードの時だ。
ただ、ここまで読んできた方々ならお察しだろう。使うことなく対処できてしまったのだ。
考えていない、想定していないことは対応策を持ち合わせていない。
それをアシドは呪った。
波。
通常海で見られる波に恐怖を感じる者は少ないだろう。ただ、穏やかに寄せては返す。静けささえ感じる者もいるだろう。
その波に恐怖している。この波をどう対処すればいい?
アシドは反射的に体が動いた。槍を振るい、先頭にいたブルードラゴンを叩く。その巨大な体に押され、ドミノ倒し的に後ろの魔物も倒れていく。
しかし、物量が多いというのは馬力が違うということだ。百体以上、軽く百tを超えているにもかかわらず、後ろにいた魔物達が押し返した。
アシドは作った一瞬の隙で、後方へ駆け出した。この数は流石に相手できない。
「ここは私が」
アストロが右手を突き出し、丁寧に魔力を練り上げる。今この場で出せる魔術は水に弱い火魔術。
しかし、魔力は十分。火力も十分。
水棲生物の体を覆う水分が蒸発し、その下に隠された肌を焼いていく。生臭く嫌な臭いをさせながら倒れる魔物を潰して、後続の魔物が進行してくる。
止まらない。
アストロが奥歯を噛み締める。初めて気づいた弱点。それに対する策は思いついていない。ゴリ押しは確実に死ぬ。マズイ、どうしたらいい?
ドン! と、後ろにいた魔物が跳ね上げられた。
その原因に目が行く。そこには鉦を鳴らすためのT字形の棒のようなものが見えた。その両端は生命体の象徴ともいえる目が見える。
相手はハンマーヘッドか。
ピュリシュはテントラムの背負うリュックから魔道具を取り出す。これを使えば吸血鬼かどうかが分かる。
吸血鬼は恐怖の対象であり、討伐の対象だ。
約四百年前にとある吸血鬼が、敵も味方も関係なく大虐殺を行ったという歴史がある。
このただ一人の吸血鬼のせいで、吸血鬼全体が恐怖で見られることになった。見かけ次第叩く。それが吸血鬼に対する考えだ。
それを聞いた剣士のバリトンが剣に手を伸ばす。叩くなら早い方がいい。虫と同じだ。
バリトンの暮らしていた町は、吸血鬼に壊滅させられた場所だ。その気持ちが、重いが、情動が体を動かす。
その殺気のようなものが感じ取れ、マッハが女剣士を止めようとする。しかし、バリトンは仲間も涙も置き去りにした。
そして、レベル三十八の本気の居合をぶつけた。
もちろん対空戦のことだ。空に対する明確な対策を持ち合わせているのは、アレン、アストロ、エンドローゼしかいなかった。エンドローゼに攻撃意識がなく、アレンの手が弓矢向きではなくなったことで、空に対してさらに弱くなってしまった。
しかしながら、シキやコストイラが原始的な遠距離攻撃である投石を身につけたことで、多少の解消を見せた。
その時、もう一つの弱点が浮き彫りになった。
広範囲攻撃ができる奴、少なくね?
実は広範囲攻撃ができる者が少なく、アストロ、アレン、エンドローゼの、これまた三人なのだ。そして、先程と同じ理由から、頼れるのはアストロだけなわけだ。
しかし、これまでそのことが発覚していなかった。理由は簡単だ。必要な場面になる機会がなかったのだ。ただそれだけだ。
これまでも広範囲攻撃が必要そうな場面はあった。ゴブリンパレードや砂漠でのパレード、その他パレードの時だ。
ただ、ここまで読んできた方々ならお察しだろう。使うことなく対処できてしまったのだ。
考えていない、想定していないことは対応策を持ち合わせていない。
それをアシドは呪った。
波。
通常海で見られる波に恐怖を感じる者は少ないだろう。ただ、穏やかに寄せては返す。静けささえ感じる者もいるだろう。
その波に恐怖している。この波をどう対処すればいい?
アシドは反射的に体が動いた。槍を振るい、先頭にいたブルードラゴンを叩く。その巨大な体に押され、ドミノ倒し的に後ろの魔物も倒れていく。
しかし、物量が多いというのは馬力が違うということだ。百体以上、軽く百tを超えているにもかかわらず、後ろにいた魔物達が押し返した。
アシドは作った一瞬の隙で、後方へ駆け出した。この数は流石に相手できない。
「ここは私が」
アストロが右手を突き出し、丁寧に魔力を練り上げる。今この場で出せる魔術は水に弱い火魔術。
しかし、魔力は十分。火力も十分。
水棲生物の体を覆う水分が蒸発し、その下に隠された肌を焼いていく。生臭く嫌な臭いをさせながら倒れる魔物を潰して、後続の魔物が進行してくる。
止まらない。
アストロが奥歯を噛み締める。初めて気づいた弱点。それに対する策は思いついていない。ゴリ押しは確実に死ぬ。マズイ、どうしたらいい?
ドン! と、後ろにいた魔物が跳ね上げられた。
その原因に目が行く。そこには鉦を鳴らすためのT字形の棒のようなものが見えた。その両端は生命体の象徴ともいえる目が見える。
相手はハンマーヘッドか。
ピュリシュはテントラムの背負うリュックから魔道具を取り出す。これを使えば吸血鬼かどうかが分かる。
吸血鬼は恐怖の対象であり、討伐の対象だ。
約四百年前にとある吸血鬼が、敵も味方も関係なく大虐殺を行ったという歴史がある。
このただ一人の吸血鬼のせいで、吸血鬼全体が恐怖で見られることになった。見かけ次第叩く。それが吸血鬼に対する考えだ。
それを聞いた剣士のバリトンが剣に手を伸ばす。叩くなら早い方がいい。虫と同じだ。
バリトンの暮らしていた町は、吸血鬼に壊滅させられた場所だ。その気持ちが、重いが、情動が体を動かす。
その殺気のようなものが感じ取れ、マッハが女剣士を止めようとする。しかし、バリトンは仲間も涙も置き去りにした。
そして、レベル三十八の本気の居合をぶつけた。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる