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28.岩礁の遺跡
11.海の猛者
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レイドが飛ばされた。海食洞の天井まで上がり、地面に落ちた。それでも威力が抜けきっておらず、ゴロゴロと転がった。
「ぐ」
レイドの気は落ちていない。手放すことがなかった楯を握る手に力を籠める。反対の手で浅く水の張っている地面に手を置いて立ち上がる。
この程度の浅い水でもハンマーヘッドならば泳ぐことができる。
海食洞の入口が破られてしまった。魔物達が遠慮なしに入ってくる。
アレンはもう絶望のどん底だ。いくらシキやコストイラがいるとしても、これを倒し切ることはできない。
アレンが思わず逃げてしまった。どこまで通じているのか分からないが、その場にいるのが耐えられなかった。
「ヤバ」
「追うわよ。ここに留まっていても死んでしまうわ」
「殿は私が」
アシドがアレンと魔物達を交互に見る。アストロが一行に指示を出すと、シキが殿を務める。
アシドが全力でアレンを追いかける。最近のアレンはかなり弱腰だ。しかも情けない。
とはいえ、仕方のないことだ。アレンの感覚は未だ凡人。この戦いに付いて行けるメンタルを持っていない。
全力で現実から逃げるアレンをアシドが抜く。
「斥候は任せろ」
先頭をアレンが走っていても魔物が出てきた瞬間にとまることを強要される。後ろに戻れないのなら、このまま進んだ方がいい。
シキがバックステップをしながらナイフを振るう。ハンマーヘッドは痛みに苦しみながらも前に出る。
シキの強みは縦横無尽に駆け回って戦うことにある。
今はそれが封じられている。戦い方が限られてしまっている。目の前の鮫を倒すことは可能だ。
しかし、その後に続く戦闘の勝ち目が薄い。
その時、ハンマーヘッドの体が爆散した。
「え?」
さしものシキもびっくりした。目の前のことに集中しすぎて気付かなかった。
鮫の後ろに紫の殻をもつ人魚がいる。その人魚が棒の先に着いた黒鉄球を振り回した。黒鉄球が壁や天井に当たり、破壊していく。
マズイ。このままだと洞窟が崩れてしまう。
シキが水柱を上げて走り出す。意識的に然のナイフを振るった。
黒鉄球を人魚ごと切り裂く。そして、宙に浮いている黒鉄球を蹴飛ばして、敵にぶつける。イビルマーメイドの顔やエルダーサーペントの体が弾け飛んだ。
ある程度の距離が空いたため、シキが走り出した。
シキはこの時、違和感を覚えたが、今は検証している暇はない。
早く追い着かなければ。
「な」
バリトンが思わず声を出してしまう。奇襲を仕掛けておきながら、自分からばらしてしまうなんて、失格だ。
チラスレアは見てもいないのに、剣を摘まんで止めた。それだけで強者だと分かる。
逃げたい。しかし、目の前の敵は吸血鬼だ。逃げてはいけない。
「な」
剣が動かない。押しても引いてもビクともしない。
その光景を見た仲間がフリーズする。バリトンは別に仲間の中で最速というわけではない。しかし、それでもこの町では上位に位置する冒険者だ。強いことは数字が裏付けている。
「私はただ黄昏ていただけなのに、いったい何用で刃を向けるのです?」
限りなく底冷えする、重い声だ。普通の声で、当たり前の台詞で、何の変哲もない言葉。だというのに許多の恐怖さえ感じる。
そもそも剣を摘まんで止めるとき、掌が外側に向いているはずだ。しかし、今、この吸血鬼の掌は内側に向いている。つまり、剣を振る速度の数倍の速さで剣を止めたことになる。
レベルでいえば十や二十ではきかない程の差だ。
チラスレアは親指と人差し指で挟んだ剣の先を薬指で叩く。すると、剣の根元が砕けた。
「くっ! 吸血鬼のくせに!」
「……」
「さっさと滅べ!」
バリトンが予備の剣を抜く。上から振り下ろされる剣に対して、チラスレアは爪で受け止める。爪すら欠けない。
これが吸血鬼か!
「ぐ」
レイドの気は落ちていない。手放すことがなかった楯を握る手に力を籠める。反対の手で浅く水の張っている地面に手を置いて立ち上がる。
この程度の浅い水でもハンマーヘッドならば泳ぐことができる。
海食洞の入口が破られてしまった。魔物達が遠慮なしに入ってくる。
アレンはもう絶望のどん底だ。いくらシキやコストイラがいるとしても、これを倒し切ることはできない。
アレンが思わず逃げてしまった。どこまで通じているのか分からないが、その場にいるのが耐えられなかった。
「ヤバ」
「追うわよ。ここに留まっていても死んでしまうわ」
「殿は私が」
アシドがアレンと魔物達を交互に見る。アストロが一行に指示を出すと、シキが殿を務める。
アシドが全力でアレンを追いかける。最近のアレンはかなり弱腰だ。しかも情けない。
とはいえ、仕方のないことだ。アレンの感覚は未だ凡人。この戦いに付いて行けるメンタルを持っていない。
全力で現実から逃げるアレンをアシドが抜く。
「斥候は任せろ」
先頭をアレンが走っていても魔物が出てきた瞬間にとまることを強要される。後ろに戻れないのなら、このまま進んだ方がいい。
シキがバックステップをしながらナイフを振るう。ハンマーヘッドは痛みに苦しみながらも前に出る。
シキの強みは縦横無尽に駆け回って戦うことにある。
今はそれが封じられている。戦い方が限られてしまっている。目の前の鮫を倒すことは可能だ。
しかし、その後に続く戦闘の勝ち目が薄い。
その時、ハンマーヘッドの体が爆散した。
「え?」
さしものシキもびっくりした。目の前のことに集中しすぎて気付かなかった。
鮫の後ろに紫の殻をもつ人魚がいる。その人魚が棒の先に着いた黒鉄球を振り回した。黒鉄球が壁や天井に当たり、破壊していく。
マズイ。このままだと洞窟が崩れてしまう。
シキが水柱を上げて走り出す。意識的に然のナイフを振るった。
黒鉄球を人魚ごと切り裂く。そして、宙に浮いている黒鉄球を蹴飛ばして、敵にぶつける。イビルマーメイドの顔やエルダーサーペントの体が弾け飛んだ。
ある程度の距離が空いたため、シキが走り出した。
シキはこの時、違和感を覚えたが、今は検証している暇はない。
早く追い着かなければ。
「な」
バリトンが思わず声を出してしまう。奇襲を仕掛けておきながら、自分からばらしてしまうなんて、失格だ。
チラスレアは見てもいないのに、剣を摘まんで止めた。それだけで強者だと分かる。
逃げたい。しかし、目の前の敵は吸血鬼だ。逃げてはいけない。
「な」
剣が動かない。押しても引いてもビクともしない。
その光景を見た仲間がフリーズする。バリトンは別に仲間の中で最速というわけではない。しかし、それでもこの町では上位に位置する冒険者だ。強いことは数字が裏付けている。
「私はただ黄昏ていただけなのに、いったい何用で刃を向けるのです?」
限りなく底冷えする、重い声だ。普通の声で、当たり前の台詞で、何の変哲もない言葉。だというのに許多の恐怖さえ感じる。
そもそも剣を摘まんで止めるとき、掌が外側に向いているはずだ。しかし、今、この吸血鬼の掌は内側に向いている。つまり、剣を振る速度の数倍の速さで剣を止めたことになる。
レベルでいえば十や二十ではきかない程の差だ。
チラスレアは親指と人差し指で挟んだ剣の先を薬指で叩く。すると、剣の根元が砕けた。
「くっ! 吸血鬼のくせに!」
「……」
「さっさと滅べ!」
バリトンが予備の剣を抜く。上から振り下ろされる剣に対して、チラスレアは爪で受け止める。爪すら欠けない。
これが吸血鬼か!
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