メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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28.岩礁の遺跡

12.海賊の砦

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 アシドが槍を振るう。先頭を走るアシドは必然的に接敵が多くなる。
 体をなくした蛇の頭や額に穴が開いた人魚が宙を舞う。

「まだ奥があるな」
「結構深いわね」
「ハァ、ハァ、ハァ」

 アシドが手で笠を作り奥を眺める。アストロが額に伝う汗を拭きながら、アシド同様奥を見た。アレンは息が切れていて、会話ができない。
 アレンがアストロの横に辿り着いた途端、床が崩れた。

「へ?」
「は?」
「フェ?」

 中心部にいたアレン、アストロ、エンドローゼが下に落ちる。アシドやレイドが手を伸ばすが、届かない。コストイラは二人より早く下に降りた。
 元の道に流れていた水が滝のように落ちている。

「イタた」

 アレンが瓦礫から体を剥がし、肩や首の調子を確かめる。

「まさか海食洞の下に隠し通路があるなんてね」
「は、はい。お、驚きです」

 アストロがペタペタと壁を触っている。エンドローゼは不安そうにアストロにくっついている。

「これ、かなり人工的だわ。素材は石だけど、人の手が入っている」
「本当ですか?」

 アストロの言葉が本当かどうか探るために、アレンも壁に触れる。アレンには何も分からないので、魔眼を発動させる。

 ”壁”。

 もう泣きたい。

「ど、ど、どうしたのでーしょうか」
「多分己の無力さを憂いているのよ」

 バシャとコストイラが下りてきた。

「どうなってんだ、ここは」

 コストイラが壁に触れる。コストイラが壁を殴ると、ボロボロと剥がれてきた。中に何かあるわけではない。

「脆いな」
「そうね」
「何だ、貴様等」

 隠し通路の先から声がした。そこには青いバンダナを巻いた女が立っている。幅を持つカットラスのような剣を構えている。
 女が懐から笛を取り出して、素早く吹く。コストイラ達はそれを止めることができなかった。

 甲高い音が通路内に響く。
 これは間違いない。仲間を呼ばれた。




 バリトンは易々と一線を越えた。

 しかし、それでもチラスレアに理性が残っていたのは、ここがアシド生誕の地がからだろう。

 チラスレアの怒りは二段階ある。

 一段階目は大切なものを壊されたものの怒りだ。

 二段階目は「家族」や種族を馬鹿にされた時の怒りだ。

 バリトンの言動はいきなり二段階目の怒りを引き出した。

 本来ならここで大暴れして、国ごと破壊してもいいのだが、怒りがスッと冷めた。もしこのまま暴れても、やっていることは目の前の女と変わらないではないか。
 この女の怒りはあの吸血鬼ばか一人の行動の評価を、全体の評価に置き換えて恨んでいるだけだ。それは一部の過激派だけを見て、それそのものを怖がるような愚考だ。

 チラスレアはそんな救いようのない阿呆になりたいわけではない。

「帰れ。見なかったことにするわ」
「何だと!」
「バリトン!」

 チラスレアがぶっきらぼうに言うと、バリトンが切れた。それを仲間のマッハが諫める。仲間は止める姿勢を見せているものの、臨戦態勢を崩していない。チラスレアは溜息を吐きたくなった。
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