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28.岩礁の遺跡
16.狂気の海淵
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アストロとエンドローゼの前にレイドが出る。今この場にいる前衛はレイドのみだ。しかし、レイドの前衛としての仕事はいわゆる後衛に攻撃を通さないことだ。つまり、攻撃をすることではなく防御することなのだ。
レイドは一人しかいない。相手は複数護り切るには、自分の力は弱すぎる。
レイドが筋力にものを言わせて、大楯と大剣をそれぞれの腕に装備する。その規格外の筋力を見せつけられた海賊は、ビビりまくる。え? 今から俺達、これと戦うの?
「ヒッ」
誰かが怯えた声を出した。それが引き鉄となり、堰を切ったように海賊が逃げ出した。
「何かよく分からないけど、よし」
アストロがガッツポーズをして、前に進もうとする。レイドとエンドローゼがそれを追うようにして走り始める。
アストロが魔力探知をしながら、海賊の根城迷路に挑む。ゴールは分かっているのだが、道が分かっていない。
「ここも行き止まり」
「かなり迷路しているな」
「ねェレイド」
「ん?」
アストロがレイドを頼るなど珍しい。レイドがアストロの顔を見る。
「この壁って壊しても大丈夫かな?」
「おい、分かって聞いているだろ。駄目に決まっている」
レイドが思わず声を大きくする。流石に認められず、アストロが舌打ちした。エンドローゼが少し目を細くした。
アストロはそれでも引かない。
「最短距離でコストイラ達の元に向かえるとしたら、どうかしら?」
「ん?」
「早く辿り着けば、その分護ることができると思わない? 怪我人が減るわよ」
アストロが的確にポイントを押さえてくる。レイドとエンドローゼが揺らいだ。
「そ、それなら」
「ま、まぁ」
折れた。アストロが魔力で壁に穴をあける。
「よし、行くわよ」
行動が大胆となったアストロのことを追う。
横槍が入ることなく、六つ目の壁に穴を作った時、ゴールに辿り着いた。
そこには巨大な烏賊の足に切りかかるコストイラと、壁を利用して宙を跳ぶアシドがいた。
「フ!」
反射的に魔力を放った。その魔力は的確に巨大烏賊の目を穿った。
『グォオオオオ!!』
キングクラーケンが触手を振り回して、痛みに悶える。
そんな中、触手が通らない。絶対的な安全圏である頭上。巨大な頭を覆う栄螺のような殻がいきなり砕けた。
アストロ達三人は何か見ることができなかった。コストイラとアシドは目撃できた。
勇者が烏賊内部に入ったぞ?
『ギィ』
どこか弱弱しい声を出した。ザパリと海水の泉からシキが出てくる。どうやらあのまま貫通したらしい。
キングクラーケンが海水に沈んでいく。
「シキ、お前どっから来たんだよ」
「あそこ」
コストイラの問いに指差しで答える。その先には横穴があり、横穴があり、アレンがめっちゃ震えていた。
「……アレンって高所恐怖症じゃなかたっけ?」
シキ、衝撃の事実! アレン、高いところ駄目なの? え、じゃあ、あの道は恐怖の連続だった?
シキは無表情のままわなわなと震えた。コストイラは思う。シキ、アレンに何をやらかした?
何にも気づいていないアシドがシキの異変に気付く。
「え、何? どったの?」
その言葉を受けて、返答することなく跳んだ。シキは一瞬でアレンの元に辿り着くと、肩を抱いた。
アレンを下に持っていこうとして気付いた。その行為、高所恐怖症的に大丈夫なのか?
「アレン、今から下に行く。耐えて」
アレンは必死にシキに抱き着こうとして止まる。
え、僕、今から好きな人に自分から抱き着こうとしているのか?
意識してしまったら、急に顔が熱くなってきた。
そこでシキが離れる。アレンは自分が嫌われてしまったのではないかと、と思ったが、どうやら違うらしい。
アレンがシキにつられて下を見る。泉に黒く大きな影があった。
眼鏡をかけた痩身の男がボサボサノ髪を掻いた。
爆弾魔の事件が十五件目となっていた。国王との謁見から三件も増えている。
十四件目と十五件目はそれぞれ一人ずつの死者を出した。どちらも輸送会社関連の人物だ。
どう考えても、このままでは無能の烙印が押されてしまう。
しかし、警邏隊司令部長のティエリ・パラレルが頭を掻いたのは、別の要因がある。それは、警邏隊実動部長であり、実の妹であるティエナ・パラレルの持ってきたメッセージによるものだ。
犯人が初めて自分の意志をこちらに表明してきたのだ。
「何がしたいのだ、この爆弾魔は」
ティエリはもう一度、添付されていた木片に刻まれたメッセージを見る。
”近いうちに目的を伝える”
「マジでこいつ、何がしたいんだよ~」
王国一の頭脳は今日も苦悩する。
レイドは一人しかいない。相手は複数護り切るには、自分の力は弱すぎる。
レイドが筋力にものを言わせて、大楯と大剣をそれぞれの腕に装備する。その規格外の筋力を見せつけられた海賊は、ビビりまくる。え? 今から俺達、これと戦うの?
「ヒッ」
誰かが怯えた声を出した。それが引き鉄となり、堰を切ったように海賊が逃げ出した。
「何かよく分からないけど、よし」
アストロがガッツポーズをして、前に進もうとする。レイドとエンドローゼがそれを追うようにして走り始める。
アストロが魔力探知をしながら、海賊の根城迷路に挑む。ゴールは分かっているのだが、道が分かっていない。
「ここも行き止まり」
「かなり迷路しているな」
「ねェレイド」
「ん?」
アストロがレイドを頼るなど珍しい。レイドがアストロの顔を見る。
「この壁って壊しても大丈夫かな?」
「おい、分かって聞いているだろ。駄目に決まっている」
レイドが思わず声を大きくする。流石に認められず、アストロが舌打ちした。エンドローゼが少し目を細くした。
アストロはそれでも引かない。
「最短距離でコストイラ達の元に向かえるとしたら、どうかしら?」
「ん?」
「早く辿り着けば、その分護ることができると思わない? 怪我人が減るわよ」
アストロが的確にポイントを押さえてくる。レイドとエンドローゼが揺らいだ。
「そ、それなら」
「ま、まぁ」
折れた。アストロが魔力で壁に穴をあける。
「よし、行くわよ」
行動が大胆となったアストロのことを追う。
横槍が入ることなく、六つ目の壁に穴を作った時、ゴールに辿り着いた。
そこには巨大な烏賊の足に切りかかるコストイラと、壁を利用して宙を跳ぶアシドがいた。
「フ!」
反射的に魔力を放った。その魔力は的確に巨大烏賊の目を穿った。
『グォオオオオ!!』
キングクラーケンが触手を振り回して、痛みに悶える。
そんな中、触手が通らない。絶対的な安全圏である頭上。巨大な頭を覆う栄螺のような殻がいきなり砕けた。
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勇者が烏賊内部に入ったぞ?
『ギィ』
どこか弱弱しい声を出した。ザパリと海水の泉からシキが出てくる。どうやらあのまま貫通したらしい。
キングクラーケンが海水に沈んでいく。
「シキ、お前どっから来たんだよ」
「あそこ」
コストイラの問いに指差しで答える。その先には横穴があり、横穴があり、アレンがめっちゃ震えていた。
「……アレンって高所恐怖症じゃなかたっけ?」
シキ、衝撃の事実! アレン、高いところ駄目なの? え、じゃあ、あの道は恐怖の連続だった?
シキは無表情のままわなわなと震えた。コストイラは思う。シキ、アレンに何をやらかした?
何にも気づいていないアシドがシキの異変に気付く。
「え、何? どったの?」
その言葉を受けて、返答することなく跳んだ。シキは一瞬でアレンの元に辿り着くと、肩を抱いた。
アレンを下に持っていこうとして気付いた。その行為、高所恐怖症的に大丈夫なのか?
「アレン、今から下に行く。耐えて」
アレンは必死にシキに抱き着こうとして止まる。
え、僕、今から好きな人に自分から抱き着こうとしているのか?
意識してしまったら、急に顔が熱くなってきた。
そこでシキが離れる。アレンは自分が嫌われてしまったのではないかと、と思ったが、どうやら違うらしい。
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眼鏡をかけた痩身の男がボサボサノ髪を掻いた。
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十四件目と十五件目はそれぞれ一人ずつの死者を出した。どちらも輸送会社関連の人物だ。
どう考えても、このままでは無能の烙印が押されてしまう。
しかし、警邏隊司令部長のティエリ・パラレルが頭を掻いたのは、別の要因がある。それは、警邏隊実動部長であり、実の妹であるティエナ・パラレルの持ってきたメッセージによるものだ。
犯人が初めて自分の意志をこちらに表明してきたのだ。
「何がしたいのだ、この爆弾魔は」
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