517 / 684
28.岩礁の遺跡
15.深海の悪魔
しおりを挟む
隻腕の海賊は2mの体をしていながらも、かなりの速度で走っている。部下の一般海賊達は頭のその姿を見て、不審に思った。なぜこのようなところで必死に走っているのだろうか。
部下の一人が頭に尋ねようとすると、頭は後ろを指差した。
「備えろ!」
その一言だけを残して去っていった。何に対して備えるのか分からないので、海賊達はのほほんとしている。
その空気を苛烈なまでに燃やす雰囲気が入ってきた。赤と蒼が他海賊を気にせずに通り抜けようとしてしまう。
「は?」
「え?」
海賊達は無視されることに憤りを覚える。武器を手にした海賊達が行く手を阻もうとした。
しかし、燃え続ける炎色の悪魔の前では、その程度の肉壁はないに等しい。そもそも海賊達の方がビビってしまっている。
アシドが激流のように走り続け、コストイラが炎雷のように過ぎ去っていった。
海賊達はポカンとしていたが、己の置かれている状況に気付いた。先程の備えろと言うのは、足止めをしろという意味だったのではないか? もしそうだとしたら、それが一切できていない我々は無能という扱いになる。
基本的な考えとして、無能は要らない。海賊となれば、この考えはさらに過激になる。
無能は殺して魔物の餌。
そうなると、今ここにいる者達は全員殺処分の対象ということになる。
それは受け入れ難い。
「おい! 第二陣だ!」
ここで無能の汚名を雪ぐ。そして処刑を免れる。
武器を握る手の力を強め、志を燃料に闘争心を燃やす海賊達は、アストロ達に襲い掛かった。
「あの、シキさん?」
「……何?」
シキが走りながら、アレンの質問に耳を傾ける。少し不安げなアレンの声が、シキの胸をざわつかせる。
「これ、道合っているんですか? 凄いところ走っていますけど」
アレンの口端がぴくぴく動いている。
今走っているのは、高さ200mはあろう場所に横たわっている石柱の上だ。しかも両端が固定されているわけではない。それどころか半分のところまですら伸びていない。
正直、こんなところをアストロやエンドローゼが通ったとは考えられない。
「フ」
シキが柱の先で踏み切って跳んだ。アレンは高所恐怖症であるため、不安を解消させたい。何も考えられないアレンは無意識のうちにシキに抱き着く力を強めた。
シキは興奮した。気になっている相手に抱き着かれたのだ、当然だろう。
しかし、冷静になった。この体の抱き心地っていいのか? それとも悪いのか? 以前、エンドローゼがアストロの肉付きについて話していた。どうやら私は肉付きが悪いらしい。女はもう少しふくよかな方がずっと抱き着いていたくなるとか何とか。
おかしな雑念を抱きながら、二人は着地した。このまま抱き合い続けるのはいかがなものか、と思う。とはいえ、アレンを下ろさない。だって、アレンの足、遅いんだもん。
「アレン、到着する」
「は、はい」
世界の主役と役立たずが戦場に到着した。
隻腕の海賊が海に辿り着く。洞窟の奥、海に最も近い場所だ。懐から一つの袋を取り出す。
「目覚めよ、キングクラーケン」
「待て!」
アシドが辿り着き、行為を制止させようとするが、もう遅い。袋はすでに海水の泉の中に投げ入れられていた。
「これでお前等はお終いだ!」
新たな戦力が投下されると直感で理解し、三歩後ろに下がった。
ゴボゴボと水が泡立ち始め、出現を予感させる。
次の瞬間、隻腕が立っている場所が崩れた。
「え?」
隻腕も予想外だったのか、間の抜けた声が出てしまう。下半身まで水に入り、まだまだ沈んでいく。このまま沈んでいくと思った時、2m越えの海賊の胸を職種が貫いた。
「ガ、フ?」
一切制御のできていない魔物が目を覚ました。
部下の一人が頭に尋ねようとすると、頭は後ろを指差した。
「備えろ!」
その一言だけを残して去っていった。何に対して備えるのか分からないので、海賊達はのほほんとしている。
その空気を苛烈なまでに燃やす雰囲気が入ってきた。赤と蒼が他海賊を気にせずに通り抜けようとしてしまう。
「は?」
「え?」
海賊達は無視されることに憤りを覚える。武器を手にした海賊達が行く手を阻もうとした。
しかし、燃え続ける炎色の悪魔の前では、その程度の肉壁はないに等しい。そもそも海賊達の方がビビってしまっている。
アシドが激流のように走り続け、コストイラが炎雷のように過ぎ去っていった。
海賊達はポカンとしていたが、己の置かれている状況に気付いた。先程の備えろと言うのは、足止めをしろという意味だったのではないか? もしそうだとしたら、それが一切できていない我々は無能という扱いになる。
基本的な考えとして、無能は要らない。海賊となれば、この考えはさらに過激になる。
無能は殺して魔物の餌。
そうなると、今ここにいる者達は全員殺処分の対象ということになる。
それは受け入れ難い。
「おい! 第二陣だ!」
ここで無能の汚名を雪ぐ。そして処刑を免れる。
武器を握る手の力を強め、志を燃料に闘争心を燃やす海賊達は、アストロ達に襲い掛かった。
「あの、シキさん?」
「……何?」
シキが走りながら、アレンの質問に耳を傾ける。少し不安げなアレンの声が、シキの胸をざわつかせる。
「これ、道合っているんですか? 凄いところ走っていますけど」
アレンの口端がぴくぴく動いている。
今走っているのは、高さ200mはあろう場所に横たわっている石柱の上だ。しかも両端が固定されているわけではない。それどころか半分のところまですら伸びていない。
正直、こんなところをアストロやエンドローゼが通ったとは考えられない。
「フ」
シキが柱の先で踏み切って跳んだ。アレンは高所恐怖症であるため、不安を解消させたい。何も考えられないアレンは無意識のうちにシキに抱き着く力を強めた。
シキは興奮した。気になっている相手に抱き着かれたのだ、当然だろう。
しかし、冷静になった。この体の抱き心地っていいのか? それとも悪いのか? 以前、エンドローゼがアストロの肉付きについて話していた。どうやら私は肉付きが悪いらしい。女はもう少しふくよかな方がずっと抱き着いていたくなるとか何とか。
おかしな雑念を抱きながら、二人は着地した。このまま抱き合い続けるのはいかがなものか、と思う。とはいえ、アレンを下ろさない。だって、アレンの足、遅いんだもん。
「アレン、到着する」
「は、はい」
世界の主役と役立たずが戦場に到着した。
隻腕の海賊が海に辿り着く。洞窟の奥、海に最も近い場所だ。懐から一つの袋を取り出す。
「目覚めよ、キングクラーケン」
「待て!」
アシドが辿り着き、行為を制止させようとするが、もう遅い。袋はすでに海水の泉の中に投げ入れられていた。
「これでお前等はお終いだ!」
新たな戦力が投下されると直感で理解し、三歩後ろに下がった。
ゴボゴボと水が泡立ち始め、出現を予感させる。
次の瞬間、隻腕が立っている場所が崩れた。
「え?」
隻腕も予想外だったのか、間の抜けた声が出てしまう。下半身まで水に入り、まだまだ沈んでいく。このまま沈んでいくと思った時、2m越えの海賊の胸を職種が貫いた。
「ガ、フ?」
一切制御のできていない魔物が目を覚ました。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる