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29.暴霊の傷跡
8.業火の舞う道
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暑い。
海賊の居城である隠し通路は海の側にあり、太陽光が届かないことも加わり、少し涼しかった。
だというのに、今は暑い。もしかしたら蒸されている状態なのかもしれない。
原因が他にもあるのは分かっている。壁が燃えているのだ。先程のムスペルの蒼い炎だ。
蒼い炎は温度が違う。コストイラの扱う紅い炎は1530セルシウス度くらい。ムスペルの蒼い炎は15730セルシウス度くらいある。正直10倍はある。
その高温が熱と光を発しているのだ。
暑い。めっちゃ暑い。
眩しい。めっちゃ眩しい。
「何かオレの感覚が安定しないんだけど」
「熱のせいかしら?」
「今、暑いからなぁ。ところで、オレ達は原初グレイソレアのところに向かっているんだよな?」
「そうね」
コストイラが頭の後ろで腕を組んだ。アストロも素直に答える。
「オレって原初グレイソレアの情報って絵本のやつくらいしかないんだよな。十年戦争と魔眼の話くらい?」
「私もね。十年戦争で相手したフォンから、エンドローゼは何か聞いている?」
「い、いいえ」
「魔眼関係でアレンの方は、ごめん、期待しないわ」
「はい、ごめんなさい。僕はその絵本すら読んでいません。ごめんなさい」
グレイソレアについて情報収集を始めるコストイラに代わり、アストロが関係していそうな者達に話を振る。エンドローゼもアレンも首を横に振った。
しかし、この時、エンドローゼの脳裏に電流が走る! 月からの交信! いわば天啓!!
「い、い、今は、め、滅茶苦茶な、な、仲良しさんらーしいですよ」
「だから何だ感のある報告だな。オレ達はグレイソレアのことが知りたいんだけど」
「それだけは伝えたかったんでしょ。何でかは知らないけど」
エンドローゼが目を強く瞑る。
「来た」
シキが呟いた。
魔物を警戒しながら鯉口を切る。シキがナイフを抜き、アシドが槍を握る力を強めた。アストロが手を開閉させる。レイドが楯を地に着け、アレンは何もできずに立っている。エンドローゼはまだ目を瞑っている。
曲がり角からドラゴンの頭が出てくる。頭が燃えている。炎で作られた髭やオーラが出ており、口の端からも炎が出ていた。オレンジの瞳を光らせ、赤い鱗から炎を滾らせていた。
『ハァアア』
息が赤い。赤いというよりは炎だ。先にあった水分が湯気になっている。
「サラマンドラでもフレアドラゴンでもなさそうだな」
「何かしらね」
「魔眼使いますか?」
「よし、やれ」
ぐっと目に魔力を集めていく。
ピクッとドラゴンの頭が魔眼に反応する。ヌッと通路を動くが、動きがどこか不自然だ。どこか浮遊しているような。
その頭の全貌が明らかになる。コストイラの予感は当たっていた。
炎に包まれた頭は、浮いていた。
ヘルフレイムは、頭だけの存在だった。
2年が経過した。
爆弾魔が目的を明かす、と宣言してから、すでに2年だ。我々警邏は、ただ弄ばれただけなのかもしれない。
長であるティエリ・パラレルは椅子に背を預け、天井を眺める。ここ最近は新しく出てきた新興宗教の団体があちこちで問題を起こしており、そちらは付きっ切りで爆弾魔のことは風化されつつあった。
そこに思い出す出来事が起きた。
手紙が届いたのだ。内容は論文を掲載しろ、というもの。タイトルは。
「産業と未来」
ティエリは経済系の学問を修めている。そのティエリが読んだ感想は、思想が強すぎる。
論文の内容を要約すると、人間は技術を頼るあまり、技術に苦しめられ、自然性を失っている、ということだ。
犯行の動機について、が同封されていた。全30ページもあるが、要約すれば、一つの事しか言っていない。自由は力。他人をコントロールする力と、自分をコントロールする力がそこにある。コントロールするためには、人を殺すしかなかった。
ティエリは小さく溜息を吐いた。
これは有力な情報である。
絶対に捕まえてやる。
海賊の居城である隠し通路は海の側にあり、太陽光が届かないことも加わり、少し涼しかった。
だというのに、今は暑い。もしかしたら蒸されている状態なのかもしれない。
原因が他にもあるのは分かっている。壁が燃えているのだ。先程のムスペルの蒼い炎だ。
蒼い炎は温度が違う。コストイラの扱う紅い炎は1530セルシウス度くらい。ムスペルの蒼い炎は15730セルシウス度くらいある。正直10倍はある。
その高温が熱と光を発しているのだ。
暑い。めっちゃ暑い。
眩しい。めっちゃ眩しい。
「何かオレの感覚が安定しないんだけど」
「熱のせいかしら?」
「今、暑いからなぁ。ところで、オレ達は原初グレイソレアのところに向かっているんだよな?」
「そうね」
コストイラが頭の後ろで腕を組んだ。アストロも素直に答える。
「オレって原初グレイソレアの情報って絵本のやつくらいしかないんだよな。十年戦争と魔眼の話くらい?」
「私もね。十年戦争で相手したフォンから、エンドローゼは何か聞いている?」
「い、いいえ」
「魔眼関係でアレンの方は、ごめん、期待しないわ」
「はい、ごめんなさい。僕はその絵本すら読んでいません。ごめんなさい」
グレイソレアについて情報収集を始めるコストイラに代わり、アストロが関係していそうな者達に話を振る。エンドローゼもアレンも首を横に振った。
しかし、この時、エンドローゼの脳裏に電流が走る! 月からの交信! いわば天啓!!
「い、い、今は、め、滅茶苦茶な、な、仲良しさんらーしいですよ」
「だから何だ感のある報告だな。オレ達はグレイソレアのことが知りたいんだけど」
「それだけは伝えたかったんでしょ。何でかは知らないけど」
エンドローゼが目を強く瞑る。
「来た」
シキが呟いた。
魔物を警戒しながら鯉口を切る。シキがナイフを抜き、アシドが槍を握る力を強めた。アストロが手を開閉させる。レイドが楯を地に着け、アレンは何もできずに立っている。エンドローゼはまだ目を瞑っている。
曲がり角からドラゴンの頭が出てくる。頭が燃えている。炎で作られた髭やオーラが出ており、口の端からも炎が出ていた。オレンジの瞳を光らせ、赤い鱗から炎を滾らせていた。
『ハァアア』
息が赤い。赤いというよりは炎だ。先にあった水分が湯気になっている。
「サラマンドラでもフレアドラゴンでもなさそうだな」
「何かしらね」
「魔眼使いますか?」
「よし、やれ」
ぐっと目に魔力を集めていく。
ピクッとドラゴンの頭が魔眼に反応する。ヌッと通路を動くが、動きがどこか不自然だ。どこか浮遊しているような。
その頭の全貌が明らかになる。コストイラの予感は当たっていた。
炎に包まれた頭は、浮いていた。
ヘルフレイムは、頭だけの存在だった。
2年が経過した。
爆弾魔が目的を明かす、と宣言してから、すでに2年だ。我々警邏は、ただ弄ばれただけなのかもしれない。
長であるティエリ・パラレルは椅子に背を預け、天井を眺める。ここ最近は新しく出てきた新興宗教の団体があちこちで問題を起こしており、そちらは付きっ切りで爆弾魔のことは風化されつつあった。
そこに思い出す出来事が起きた。
手紙が届いたのだ。内容は論文を掲載しろ、というもの。タイトルは。
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ティエリは小さく溜息を吐いた。
これは有力な情報である。
絶対に捕まえてやる。
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