メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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29.暴霊の傷跡

10.囚われの魔物

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 石造りの通路は錯綜していた。分かれ道や十字路など、規則正しい形状と整然とした秩序をもって、まさに人口の迷路の如き様相を呈している。

「危ね!」

 アシドがゼラチナスキューブの放つ水のビームをギリギリで避ける。

 今、勇者一行は逃げていた。ゼラチナスキューブ一体であればなんでもなかったが、続々と巨大な魔物が現れたのだ。流石に無理だ。

「くそ!」

 歯止めの利かない本能に突き動かされる魔物達は勇者達と違う。

「ここは……!?」

 石段を駆け上がった先、広がるのは、これまでの通路と比べ物にならない開けた空間だった。
 そこには無数に並べられる漆黒の檻。いくつもの列を作る牢の中に閉じ込められているのは、アイリススライムやティタノサウルス、ドゥームビートル、多くの凶暴な巨大モンスター。痛めつけられた傷跡を残す魔物達は例外なく檻と繋がる鎖に束縛されている。

 しかし、この魔物達に鎖は意味ない。ただの気まぐれでそこに留まっているだけにしか思えない。

 フレアドラゴンが脚を引き、簡単に鎖を引き千切った。

「おいおいおい。それやばくね」

 コストイラが焦る。本能で刀を抜いたが、どこから相手するのだ。

 シキが両手に魔剣を装備していた。巨大な魔物がすでに二桁を超えていた。アストロがシキの肩を掴んだ。今行っても無謀すぎる。

 ゼラチナスキューブが水のビームを放った。勇者達は上手に躱したが、その先にいたアイリススライムに当たった。
 それをきっかけにして、大怪獣バトルが始まった。勇者一行は隙を見て、端に寄っておく。

「四の五の言っている余裕がオレ達にはもうねェ。ぶっ倒れちまう前に決着がつくのを祈るしかねぇ」
「そうね。逃げ場はないんだから諦めなさい」
「わ、分かっていますよ」

 魔眼は使えない。こちらが気付かれれば、対処しきれないからだ。

 流れ弾をレイドの楯で往なす。

 ドンとドゥームビートルが目の前に来た。もうこちらには気付いている。戦いは避けられない。
 ドゥームビートルが自身の巨大な角を振り回す。コストイラとシキは上手く躱しながら距離を詰めていった。

 ドゥームビートルが小さな口で噛みつこうとする。シキが魔剣を振るい、巨大なカブトムシの歯をどんどんと切り捨てていく。歯茎が露出した口の中に、コストイラが炎を入れる。
 ドゥームビートルが悶えようとする前に、シキが下顎を蹴り上げた。自らの口の中に炎を閉じ込める形となる。然属性のカブトムシに火属性の炎は効果抜群だ。

 ドゥームビートルの全身を燃え上がらせると、同じ然属性のクイーンアルラウネに投げつけた。

「もう一回言うぜ。ここって海賊の居城じゃねぇの?」
「どうやらこいつらを調教して売っていたっぽいわね」
「誰が買うんだよ」

 ハイオーガが八岐大蛇の頭を三つ掴み取ると、地面に叩きつけた。他三つが噛みついてくるが、物ともしていない。残る二つはすでに引き千切られている。

『ゴォア!』

 ハイオーガが三つの頭を無理矢理引き千切った。

 燃え盛るドゥームビートルがクイーンアルラウネを燃やす。蔦で無理矢理くるませ、酸素を与えないようにする。
 そこにラーヴァゴーレムが突っ張りをする。燃えている手が顔を覆ってきて、クイーンアルラウネの頭が燃える。蔦を扱い、あらゆる手段でもって抵抗する。しかし、ラーヴァゴーレムはその蔦を燃やしてしまう。
 ブチブチブチと溶岩巨人ラーヴァゴーレム妖花女王クイーンアルラウネの首を引き千切った。

 ゼラチナスキューブが水のビームを発射する。対していたフレアドラゴンが炎を吐いた。炎の火力が高く、アストロの水魔力ならば届く前に蒸発してしまうだろう。

 しかし、水のビームは炎を掻き分け、フレアドラゴンの口の中に飛び込んだ。火炎竜フレアドラゴンの頭が爆発した。

「あのゼラチナスキューブ、ヤバいぞ」
「水のビームが鋭すぎる」
「と、とにかく、ここから、離れませんか? ほら、ゆっくり」
「賛成だ。レイドの負担がすごいことになっているからな」
「私は平気だぞ。今、この場では、私は楯に成れている。役目を果たせている気がするのだ」

 レイドの目が輝いている。どこか危ない気を発しているが、同じようなことがあるコストイラは止められない。何様だ、と言われたら、何も言えない。

 しかし、レイドの輝く時間はすぐに終わった。最強の冒険者エンドローゼの壁である。

「い、い、いつまで、続けーますか?」

 別段責めているわけではない。むしろ、もっと輝いてほしいとさえ思っている。しかし、体を壊してしまっては意味がない。エンドローゼにとって、それは激怒案件である。
 だからこそ、支え続けるために引き際を知りたいのだ。

 それがレイドを苦しめた。ヤバい、怒られる?

 その邪念が入ったことで、往なしに失敗し、バランスを崩した。

 アレンが急いで動いた。早く逃げたかったのだろう。

 やはりアレン。期待を裏切らない。その運の悪さは、もはや一種の才能だ。

 カチと何かのスイッチを押してしまった。

「え」

 ガコと床が割れた。幸いだったのは、アレンの立つ場所は割れなかったことだ。魔物が暴れた時の緊急措置用の装置だったようだ。

「は?」
「え?」

 前に出て戦いを引き受けていたコストイラとシキが落下に巻き込まれた。
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