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30.月の船
9.天才と狂人
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パラパラと天井から埃が落ちてくる。カランと螺子が目の前に現れた。
困ったことに、これが何の螺子なのか分からない。重要な部品ならば非常にまずいが、重要な部品がそんなに簡単に外れるわけないと思うので、端に寄せておく。
それよりも気にするべきなのは、扉の爆弾が発動したことだ。
「入ってきたようだが、足音が一人分だ。ティエナか?」
己の考えを呟きながら、椅子から立ち上がる。短剣を手に取り、ホルダーではなく、内ポケットに無理矢理入れた。魔術工学の粋である、器具のいくつかを作動させておく。
残りの魔法工学器具のいくつかを持ち出し、隣の部屋に移動する。作業部屋は入られたくない。
隣室を作業部屋のように作り変える。扉には小型の爆弾を仕込んでおく。
紅い剣身をした短剣を抜いておく。懐のものとは別だ。この短剣は魔紅石で作られており、特注のため、30万リラと値が張る。
しかし、切れ味抜群であり、かつ魔力伝導率が高いため、主武器として重宝している。
ガチとノブが装置を噛んだ。爆弾が作動する。
ドンと塔が揺れた。
「何だ!?」
奎のメンバーの一人がその揺れにビビり、塔に入るのを躊躇い始める。ティエナは無言で口を引き結び、塔の中に入っていく。
「驚いたな。君とは予想していなかった」
「あら、天才の貴方を欺けたなんて、私も成長したわね」
「君は常に成長を続けているよ。学舎時代に狂ったように他人から技術を盗み、ものにしていった君は、特に、ね」
驚いた、と口では言うが、態度には出ていない。パズレイスの手には紅の短剣が握られている。
「もうじきここに警邏がやってくる。それまで話さないか」
「あら、珍しい。良いですよ?」
パズレイスが椅子に座り、脚を組んだ。アストロも正直に椅子に座る。
「どうした?」
「……食われました」
パズレイスの視線が左腕に集中する瞬間があったため、聞いていることが辛うじて分かった。
「左腕はあるのか?」
「……もうなくなりました」
「ドクロか?」
「……色の違うやつですね」
パズレイスがじっくりと色の違うドクロを見ている。調べてみたいのだろう。腐っても魔法工学研究者ということだろう。
「機械に頼っていることに何も思わないのか?」
「先達からの贈り物なので、愛を感じますね」
「感情か」
パズレイスがこめかみに指をあてる。
「感情はいるのか?」
「私は要りますが、貴方は必要ないでしょう。私は魔法使い、貴方は工学博士、そして自然家。全然違います」
「そうか」
「工学博士なら論理と事実によって動くべき。自然家なら感情と理想によって動くべきね」
「……そうか」
「動くな!」
ぞろぞろと警邏が入ってきた。魔術用の杖や剣を向けられている。
「そこの女性はさっき塔に入っていった人だね。君は後だ。パズレイス! 連続爆破殺人で逮捕する!」
「私は何のアドバイスをしません。どうかご自身で」
「……そうだな」
パズレイスが項垂れる。アストロが部屋を出る。警邏の一人がパズレイスに近づく。パズレイスに手を伸ばし、手首を縄で縛ろうとする。
パズレイスは動かない。
何かおかしい。ティエナの勘が告げている。これで終わりではない。
その瞬間、パズレイスが動いた。魔紅石の短剣を振るい、警邏の腕を切ろうとする。
レベル63のパズレイスの速さに、近づいた警邏は動けない。ティエナの目で追うことはできても、止めることができない
その横を魔力が通り過ぎた。
パズレイスの顔面に当たる。体が浮き上がり、椅子を薙ぎ倒し、机に突っ込んだ。道具がガシャガシャと落ち、いくつかがパズレイスに当たった。
「そうよね。貴方ならそっちを選ぶわよね」
パズレイスは満足気な顔をしたまま失神した。
困ったことに、これが何の螺子なのか分からない。重要な部品ならば非常にまずいが、重要な部品がそんなに簡単に外れるわけないと思うので、端に寄せておく。
それよりも気にするべきなのは、扉の爆弾が発動したことだ。
「入ってきたようだが、足音が一人分だ。ティエナか?」
己の考えを呟きながら、椅子から立ち上がる。短剣を手に取り、ホルダーではなく、内ポケットに無理矢理入れた。魔術工学の粋である、器具のいくつかを作動させておく。
残りの魔法工学器具のいくつかを持ち出し、隣の部屋に移動する。作業部屋は入られたくない。
隣室を作業部屋のように作り変える。扉には小型の爆弾を仕込んでおく。
紅い剣身をした短剣を抜いておく。懐のものとは別だ。この短剣は魔紅石で作られており、特注のため、30万リラと値が張る。
しかし、切れ味抜群であり、かつ魔力伝導率が高いため、主武器として重宝している。
ガチとノブが装置を噛んだ。爆弾が作動する。
ドンと塔が揺れた。
「何だ!?」
奎のメンバーの一人がその揺れにビビり、塔に入るのを躊躇い始める。ティエナは無言で口を引き結び、塔の中に入っていく。
「驚いたな。君とは予想していなかった」
「あら、天才の貴方を欺けたなんて、私も成長したわね」
「君は常に成長を続けているよ。学舎時代に狂ったように他人から技術を盗み、ものにしていった君は、特に、ね」
驚いた、と口では言うが、態度には出ていない。パズレイスの手には紅の短剣が握られている。
「もうじきここに警邏がやってくる。それまで話さないか」
「あら、珍しい。良いですよ?」
パズレイスが椅子に座り、脚を組んだ。アストロも正直に椅子に座る。
「どうした?」
「……食われました」
パズレイスの視線が左腕に集中する瞬間があったため、聞いていることが辛うじて分かった。
「左腕はあるのか?」
「……もうなくなりました」
「ドクロか?」
「……色の違うやつですね」
パズレイスがじっくりと色の違うドクロを見ている。調べてみたいのだろう。腐っても魔法工学研究者ということだろう。
「機械に頼っていることに何も思わないのか?」
「先達からの贈り物なので、愛を感じますね」
「感情か」
パズレイスがこめかみに指をあてる。
「感情はいるのか?」
「私は要りますが、貴方は必要ないでしょう。私は魔法使い、貴方は工学博士、そして自然家。全然違います」
「そうか」
「工学博士なら論理と事実によって動くべき。自然家なら感情と理想によって動くべきね」
「……そうか」
「動くな!」
ぞろぞろと警邏が入ってきた。魔術用の杖や剣を向けられている。
「そこの女性はさっき塔に入っていった人だね。君は後だ。パズレイス! 連続爆破殺人で逮捕する!」
「私は何のアドバイスをしません。どうかご自身で」
「……そうだな」
パズレイスが項垂れる。アストロが部屋を出る。警邏の一人がパズレイスに近づく。パズレイスに手を伸ばし、手首を縄で縛ろうとする。
パズレイスは動かない。
何かおかしい。ティエナの勘が告げている。これで終わりではない。
その瞬間、パズレイスが動いた。魔紅石の短剣を振るい、警邏の腕を切ろうとする。
レベル63のパズレイスの速さに、近づいた警邏は動けない。ティエナの目で追うことはできても、止めることができない
その横を魔力が通り過ぎた。
パズレイスの顔面に当たる。体が浮き上がり、椅子を薙ぎ倒し、机に突っ込んだ。道具がガシャガシャと落ち、いくつかがパズレイスに当たった。
「そうよね。貴方ならそっちを選ぶわよね」
パズレイスは満足気な顔をしたまま失神した。
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