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30.月の船
18.双子の気持ち
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『その気持ち、いつまで持つかなぁ?』
『早く話した方が楽ですよぉ?』
「ぐ!?」
現在のアレンは、死なない程度に手加減をされながら、いたぶられていた。要は拷問である。
呼吸器を血で塞がれ、うまく呼吸できない。
『ねぇ、エンドローゼはどこにいるの?』
『私達から寵愛を奪った、あの悪魔』
チャジュアが蹴り上げる。アレンの歯がカキーンと合わさり、何本かは抜ける。その際に、舌の一部を嚙み千切ってしまった。
木に背を打ちつけて座り込む。自分の意志では動かせなくなってしまった舌が、デロリと外に出てきた。
「僕は、あの人を悪魔だとは思わない」
アレンは大胆にも中指を立てて言い返した。
『そうか、そうか』
『そんなに死にたいですか? この自殺願望者』
金髪の少女の右手が光に包まれ、その光を反射するような銀の剣を取り出した。赤髪の少女の左手が闇に包まれ、光反射せぬ黒の剣が取り出された。
止めを刺す気だ。遂に手加減を辞めたか。
双子が剣を振り上げ、アレンを殺そうとする。
その時、二人がアレンから距離をとった。
殴られすぎてぼんやりしている頭で原因を考える。腫れている目で自分の横を見る。足だ。誰か立っている。この靴はシキだ。やった、これで勝てる。
安堵したアレンは、緊張が解け、意識を手放した。
「アレン?」
すでに気絶した男は返答しない。
「これをやったのは二人?」
『そうだよ~? それよりさ』
『貴女はエンドローゼを知っていますか? 今、どこにいるかも教えてほしいです』
「許可が出ていない。話すことはできない」
シキのプレッシャーが強く、双子は気圧されてしまう。もしかして、何かマズいことした? 地雷踏んだ?
しかし、双子の気持ちは本物だ。愛しき相手であるフォンの寵愛を取り戻す。エンドローゼを殺すことでこちらに目を向けさせる。
それが双子の狙い。
だから、目の前の女も殺す。双子が剣をシキに向けた。
シキは燃えていた。エンドローゼの件があり、もう仲間を傷つけさせたくない。そう思っていたはずなのにアレンがこんな状態だった。いったい私は何を誓ったというのだ。
シキの内側から黒い靄のようなものが噴き出した。
金髪が陽光煌めく銀剣を振るった。銀髪が無感動にナイフを振るい、銀剣を受け止める。その隙を狙って赤髪が黒剣を振るう。銀髪は右手にもナイフを持っていた。闇色のナイフで受け止める。左のナイフが銀剣を半ばで切った。
金髪の顔に、横一文字に赤い線が入る。
『ガッ!?』
チュジュアが剣を捨て、顔を両手で覆った。チャジュアが妹の様子を見て助けようとしたが、シキがチャジュアの腹を蹴った。
『ちょっと待ってもらおうか』
シキの目の前に現れたのは月に住む魔王フォンだった。
『この子達は私の大事な民だ。これ以上イジメるのはやめてほしい』
「アレンがこの状態」
『それは詫びさせてもらおう。この薬はその傷も一瞬で治せる禁制の品だ』
シキが回復薬を強奪し、アレンに使う。アレンの傷が瞬きする間で回復した。
「ありがとう」
『こっちはこの二人を回収するよ。迷惑をかけたね。ちなみにエンドローゼちゃんの傷はこれで治せるよ。こっちは禁制じゃないよ』
素直に謝るシキの頭を撫で、回復薬を渡した。
『ふ、フォン様』
『どうしてここに』
『手のかかる双子だよ。チャジュアもチュジュアも帰ったらお尻ぺんぺんの刑だな。その小さくて可愛いお尻を真っ赤にしてやる』
『ふぇ?』
『へはぁあ』
どんな感情が渦巻いているのか分からないが、双子は泣き始めてしまった。
『私達の主人が済まないな。月の者が迷惑をかけた』
「いえ」
『ちなみにあちらに向かえばグレイソレア様に会える』
ディーノイが森の奥を指差した。
「あ! ディ、ディーノイ様! あ! ふ、ふ、フォン様!」
『エンドローゼちゃん!』
『エンド!』
『ローゼ!』
はしゃぐエンドローゼに喜ぶフォン、そして殺気を放つチャジュアとチュジュア。ディーノイは小さく溜息を吐いた。
「貴方も大変ね」
『陰口で苦労人と呼ばれているらしい。それを聞いた時、持っていた資料を落としたよ』
「ホ、本当に大変ね」
肩を落とし、猫背となったディーノイが双子を抱えた。その背にフォンが乗る。
『じゃあね、エンドローゼちゃん、他諸君。ずっと見守っているからね☆』
「すっごいストーカー発言、あいて」
アストロがポツリと突っ込むと、軽い天罰が下った。
『早く話した方が楽ですよぉ?』
「ぐ!?」
現在のアレンは、死なない程度に手加減をされながら、いたぶられていた。要は拷問である。
呼吸器を血で塞がれ、うまく呼吸できない。
『ねぇ、エンドローゼはどこにいるの?』
『私達から寵愛を奪った、あの悪魔』
チャジュアが蹴り上げる。アレンの歯がカキーンと合わさり、何本かは抜ける。その際に、舌の一部を嚙み千切ってしまった。
木に背を打ちつけて座り込む。自分の意志では動かせなくなってしまった舌が、デロリと外に出てきた。
「僕は、あの人を悪魔だとは思わない」
アレンは大胆にも中指を立てて言い返した。
『そうか、そうか』
『そんなに死にたいですか? この自殺願望者』
金髪の少女の右手が光に包まれ、その光を反射するような銀の剣を取り出した。赤髪の少女の左手が闇に包まれ、光反射せぬ黒の剣が取り出された。
止めを刺す気だ。遂に手加減を辞めたか。
双子が剣を振り上げ、アレンを殺そうとする。
その時、二人がアレンから距離をとった。
殴られすぎてぼんやりしている頭で原因を考える。腫れている目で自分の横を見る。足だ。誰か立っている。この靴はシキだ。やった、これで勝てる。
安堵したアレンは、緊張が解け、意識を手放した。
「アレン?」
すでに気絶した男は返答しない。
「これをやったのは二人?」
『そうだよ~? それよりさ』
『貴女はエンドローゼを知っていますか? 今、どこにいるかも教えてほしいです』
「許可が出ていない。話すことはできない」
シキのプレッシャーが強く、双子は気圧されてしまう。もしかして、何かマズいことした? 地雷踏んだ?
しかし、双子の気持ちは本物だ。愛しき相手であるフォンの寵愛を取り戻す。エンドローゼを殺すことでこちらに目を向けさせる。
それが双子の狙い。
だから、目の前の女も殺す。双子が剣をシキに向けた。
シキは燃えていた。エンドローゼの件があり、もう仲間を傷つけさせたくない。そう思っていたはずなのにアレンがこんな状態だった。いったい私は何を誓ったというのだ。
シキの内側から黒い靄のようなものが噴き出した。
金髪が陽光煌めく銀剣を振るった。銀髪が無感動にナイフを振るい、銀剣を受け止める。その隙を狙って赤髪が黒剣を振るう。銀髪は右手にもナイフを持っていた。闇色のナイフで受け止める。左のナイフが銀剣を半ばで切った。
金髪の顔に、横一文字に赤い線が入る。
『ガッ!?』
チュジュアが剣を捨て、顔を両手で覆った。チャジュアが妹の様子を見て助けようとしたが、シキがチャジュアの腹を蹴った。
『ちょっと待ってもらおうか』
シキの目の前に現れたのは月に住む魔王フォンだった。
『この子達は私の大事な民だ。これ以上イジメるのはやめてほしい』
「アレンがこの状態」
『それは詫びさせてもらおう。この薬はその傷も一瞬で治せる禁制の品だ』
シキが回復薬を強奪し、アレンに使う。アレンの傷が瞬きする間で回復した。
「ありがとう」
『こっちはこの二人を回収するよ。迷惑をかけたね。ちなみにエンドローゼちゃんの傷はこれで治せるよ。こっちは禁制じゃないよ』
素直に謝るシキの頭を撫で、回復薬を渡した。
『ふ、フォン様』
『どうしてここに』
『手のかかる双子だよ。チャジュアもチュジュアも帰ったらお尻ぺんぺんの刑だな。その小さくて可愛いお尻を真っ赤にしてやる』
『ふぇ?』
『へはぁあ』
どんな感情が渦巻いているのか分からないが、双子は泣き始めてしまった。
『私達の主人が済まないな。月の者が迷惑をかけた』
「いえ」
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ディーノイが森の奥を指差した。
「あ! ディ、ディーノイ様! あ! ふ、ふ、フォン様!」
『エンドローゼちゃん!』
『エンド!』
『ローゼ!』
はしゃぐエンドローゼに喜ぶフォン、そして殺気を放つチャジュアとチュジュア。ディーノイは小さく溜息を吐いた。
「貴方も大変ね」
『陰口で苦労人と呼ばれているらしい。それを聞いた時、持っていた資料を落としたよ』
「ホ、本当に大変ね」
肩を落とし、猫背となったディーノイが双子を抱えた。その背にフォンが乗る。
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アストロがポツリと突っ込むと、軽い天罰が下った。
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