メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
558 / 684
31.サディスホユー

3.鈍色の祠

しおりを挟む
 湖に沿うように歩いていると、じきに祠が見えてきた。ディーノイの言っていた祠だろう。
 鈍色に光を反射するこの祠は、湖の近くに建っているため、水を司る神であるという予想がついた。

「やっぱり水の近くだと、神様はいっぱいいるのね」

 人は水がなければ生きていけない。飲み水という形で目に見える状態のものはもちろんのこと、食物を育てるのにも使う。それで収穫された飼料を用いて家畜は育つ。そこから工業製品も魔道具も作る。良質な製品は良質な水から作成される。

 この世に生を受けた者は少なからず水の恩恵を受けている。

 そのため、人は水の近くに集落を造った。当然の結果である。

 しかし、同時に自らの身を危険に晒した。水が荒れると村が崩壊する。
 その時、人々に目覚めたのが、自然崇拝である。

 これは自然への崇拝ではない。自然という概念が生まれる以前からの崇拝形態だ。しかし、その自然以前に自然そのものを表せる言葉がなかった。そのため、”自然”崇拝と呼ばれるのだ。
 自然物、自然現象に対する尊敬や畏怖が態度として表れたものだ。
 人が最も触れる場所だからこそ、崇拝し、いくつもの神を生み出してきた。
 この場所でも水を神だと崇拝していた。

 ガササと叢が揺れた。
 魔物か。そう思った。思ったしまった。凡人であれば、ここで疑うべきなのは獣だ。一般人は魔物のことを疑わない。疑ったとしても獣はないというという証拠が出てきてしまった時だ。

 しかし、”凡人”を自称しているアレンは魔物の字が頭に浮かんだ。これは仕方のないことだ。魔物に出会いすぎたからだ。
 勝手に疑い、勝手に恐怖している。

 グルルと獣が唸り声を出しながら出てくる。その額には鋭い一本角が聳えていた。どう見ても獣ではなく魔物だ。

 いつかの復讐劇によって討伐されたガルムである。
 死を管理する獣ガルムが祠を背にするように立ちはだかった。早く立ち去ってほしいのだろう。




 男達がニヤニヤしている。
 男達の視線は白黒の少女に向けられている。
 白黒の少女は良くも悪くも人の目を引いていた。白の部分は淡く光っている。黒の部分は遠近感覚を狂わせるほど暗い。
 その絶妙なバランスで成り立つ姿は奇妙な興奮を覚えてしまう。

 女は胸部と下腹部が黒かった。光の一切を反射しない黒のせいで、直接見ることができない。

 だが、想像力は力だ。見えないからこそエロティックさを感じてしまう。光が反射されないことは身を隠すのに助けるが、昼の光がある空間では、異様な雰囲気を醸し出している。
 下腹部の形はよく分からないが、胸部の形が何となく分かってしまう。

 そして、頭のおかしいことに、この少女は服を着ていないのだ。全裸で徘徊する女など、痴女にしか思えない。しかも、誘ったらほいほいついてくる。

「おう、ここだここだ」
「この中に入ろうぜ」
『ほう。この建物にて、楽しむというのか。貴君等が言うのであれば行こう』

 何も疑うことなく女が建物の中へ入っていく。こうも上手くいくと、笑いがこみあげてくる。

『この部屋かえ?』

 少女が指を差す部屋の扉を、男が開けた。その中に入るように促す。

『ここで何をするのじゃ?』

 発育の良い少女が不思議そうに首を傾げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...