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31.サディスホユー
3.鈍色の祠
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湖に沿うように歩いていると、じきに祠が見えてきた。ディーノイの言っていた祠だろう。
鈍色に光を反射するこの祠は、湖の近くに建っているため、水を司る神であるという予想がついた。
「やっぱり水の近くだと、神様はいっぱいいるのね」
人は水がなければ生きていけない。飲み水という形で目に見える状態のものはもちろんのこと、食物を育てるのにも使う。それで収穫された飼料を用いて家畜は育つ。そこから工業製品も魔道具も作る。良質な製品は良質な水から作成される。
この世に生を受けた者は少なからず水の恩恵を受けている。
そのため、人は水の近くに集落を造った。当然の結果である。
しかし、同時に自らの身を危険に晒した。水が荒れると村が崩壊する。
その時、人々に目覚めたのが、自然崇拝である。
これは自然への崇拝ではない。自然という概念が生まれる以前からの崇拝形態だ。しかし、その自然以前に自然そのものを表せる言葉がなかった。そのため、”自然”崇拝と呼ばれるのだ。
自然物、自然現象に対する尊敬や畏怖が態度として表れたものだ。
人が最も触れる場所だからこそ、崇拝し、いくつもの神を生み出してきた。
この場所でも水を神だと崇拝していた。
ガササと叢が揺れた。
魔物か。そう思った。思ったしまった。凡人であれば、ここで疑うべきなのは獣だ。一般人は魔物のことを疑わない。疑ったとしても獣はないというという証拠が出てきてしまった時だ。
しかし、”凡人”を自称しているアレンは魔物の字が頭に浮かんだ。これは仕方のないことだ。魔物に出会いすぎたからだ。
勝手に疑い、勝手に恐怖している。
グルルと獣が唸り声を出しながら出てくる。その額には鋭い一本角が聳えていた。どう見ても獣ではなく魔物だ。
いつかの復讐劇によって討伐されたガルムである。
死を管理する獣が祠を背にするように立ちはだかった。早く立ち去ってほしいのだろう。
男達がニヤニヤしている。
男達の視線は白黒の少女に向けられている。
白黒の少女は良くも悪くも人の目を引いていた。白の部分は淡く光っている。黒の部分は遠近感覚を狂わせるほど暗い。
その絶妙なバランスで成り立つ姿は奇妙な興奮を覚えてしまう。
女は胸部と下腹部が黒かった。光の一切を反射しない黒のせいで、直接見ることができない。
だが、想像力は力だ。見えないからこそエロティックさを感じてしまう。光が反射されないことは身を隠すのに助けるが、昼の光がある空間では、異様な雰囲気を醸し出している。
下腹部の形はよく分からないが、胸部の形が何となく分かってしまう。
そして、頭のおかしいことに、この少女は服を着ていないのだ。全裸で徘徊する女など、痴女にしか思えない。しかも、誘ったらほいほいついてくる。
「おう、ここだここだ」
「この中に入ろうぜ」
『ほう。この建物にて、楽しむというのか。貴君等が言うのであれば行こう』
何も疑うことなく女が建物の中へ入っていく。こうも上手くいくと、笑いがこみあげてくる。
『この部屋かえ?』
少女が指を差す部屋の扉を、男が開けた。その中に入るように促す。
『ここで何をするのじゃ?』
発育の良い少女が不思議そうに首を傾げた。
鈍色に光を反射するこの祠は、湖の近くに建っているため、水を司る神であるという予想がついた。
「やっぱり水の近くだと、神様はいっぱいいるのね」
人は水がなければ生きていけない。飲み水という形で目に見える状態のものはもちろんのこと、食物を育てるのにも使う。それで収穫された飼料を用いて家畜は育つ。そこから工業製品も魔道具も作る。良質な製品は良質な水から作成される。
この世に生を受けた者は少なからず水の恩恵を受けている。
そのため、人は水の近くに集落を造った。当然の結果である。
しかし、同時に自らの身を危険に晒した。水が荒れると村が崩壊する。
その時、人々に目覚めたのが、自然崇拝である。
これは自然への崇拝ではない。自然という概念が生まれる以前からの崇拝形態だ。しかし、その自然以前に自然そのものを表せる言葉がなかった。そのため、”自然”崇拝と呼ばれるのだ。
自然物、自然現象に対する尊敬や畏怖が態度として表れたものだ。
人が最も触れる場所だからこそ、崇拝し、いくつもの神を生み出してきた。
この場所でも水を神だと崇拝していた。
ガササと叢が揺れた。
魔物か。そう思った。思ったしまった。凡人であれば、ここで疑うべきなのは獣だ。一般人は魔物のことを疑わない。疑ったとしても獣はないというという証拠が出てきてしまった時だ。
しかし、”凡人”を自称しているアレンは魔物の字が頭に浮かんだ。これは仕方のないことだ。魔物に出会いすぎたからだ。
勝手に疑い、勝手に恐怖している。
グルルと獣が唸り声を出しながら出てくる。その額には鋭い一本角が聳えていた。どう見ても獣ではなく魔物だ。
いつかの復讐劇によって討伐されたガルムである。
死を管理する獣が祠を背にするように立ちはだかった。早く立ち去ってほしいのだろう。
男達がニヤニヤしている。
男達の視線は白黒の少女に向けられている。
白黒の少女は良くも悪くも人の目を引いていた。白の部分は淡く光っている。黒の部分は遠近感覚を狂わせるほど暗い。
その絶妙なバランスで成り立つ姿は奇妙な興奮を覚えてしまう。
女は胸部と下腹部が黒かった。光の一切を反射しない黒のせいで、直接見ることができない。
だが、想像力は力だ。見えないからこそエロティックさを感じてしまう。光が反射されないことは身を隠すのに助けるが、昼の光がある空間では、異様な雰囲気を醸し出している。
下腹部の形はよく分からないが、胸部の形が何となく分かってしまう。
そして、頭のおかしいことに、この少女は服を着ていないのだ。全裸で徘徊する女など、痴女にしか思えない。しかも、誘ったらほいほいついてくる。
「おう、ここだここだ」
「この中に入ろうぜ」
『ほう。この建物にて、楽しむというのか。貴君等が言うのであれば行こう』
何も疑うことなく女が建物の中へ入っていく。こうも上手くいくと、笑いがこみあげてくる。
『この部屋かえ?』
少女が指を差す部屋の扉を、男が開けた。その中に入るように促す。
『ここで何をするのじゃ?』
発育の良い少女が不思議そうに首を傾げた。
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