560 / 684
31.サディスホユー
5.珍奇な廃墟
しおりを挟む
勇者一行は薄霧の中を進む。このままだと迷子になりかねないため、互いに手を繋いでいる。
物理的に接触をする大義名分があるのは良いのだが、少しばかり緊張してしまう。
「アレン?」
「だ、大丈夫ですよ?」
「まだ何も言ってない」
焦りすぎてまともな会話ができなくなっている。
「どこかに休めるポイントはないかしら。一度状況を確認しておきたいわ」
「そうだな。とりあえず雨風凌げたらいいんだけど」
「そこまでの贅沢は言わないわ」
「あれとか行けそうじゃね?」
アシドがある一点を指差した。そこには明らかに何かありそうな家があった。
「あぁ、確かに防げそうだ」
「大丈夫なんですか? 明らかに何かいますよ」
「何とかなるさ」
「楽観」
たった一言で突っ込まれ、自身の扱いの雑さに、少し肩を落とした。
「少しお邪魔させてもらうか」
「ほんじゃ、ま、邪魔するぜ~」
「その入り方、盗賊か借金取りでしょ」
またしても要らないボケ、しかも分かりづらいものをかますコストイラに、溜息を吐いた。
コストイラが扉を押すと、それに合わせて扉が外れた。バタンと倒れた扉が誇りを舞い上げる中、コストイラが呆然とする。まさか、そう開くとは思わなかったのだ。
「え、これオレ? オレが悪いのか?」
「いえ、ただの老朽だと思うけど、煙ったいわね。喉がイガイガする」
アストロが何度も咳払いして、気持ち悪いものを取ろうとする。
「こんなボロボロで埃だらけ。こんな廃墟に何がいるんだよ」
「足のない幽霊」
アシドの疑問にコストイラが即答した。アシドはうげ、という顔をしながらあたりを見るが、蜘蛛やゴキブリくらいしかいない。
「腰を下ろすのに抵抗はあるわね」
そもそもこの家に入った理由は、現状を確認したいからだ。本当にここは休めるか?
家具を改めて見る。ちょっとだけ大きい。どこか通常のそれよりかなり大きい。
木製の机や椅子には喰われた跡が見える。
「いるわよね。やっぱり」
「デッカイ虫がな」
「種類によりますよね。取り乱すか否か」
「ゴキなら悲鳴出すわ」
アストロの確認にコストイラは確信めいて答える。アレンがブルリと身を震わせると、アシドが冗談のように事実を返した。
そして、少し奥に進んだだけで、大きな虫を発見してしまった。
ガチャリとドアが開いた。
おこぼれを貰おうと思っていた不良達が、ニヤつき顔をしながら女を待つ。もう少しで発育の良い少女の体を堪能できる。
不良達が目を丸くした。少女から女に変わっていることや、瞳が赤くなっていること、髪が腰元まで伸びていることなど、気になる点はいくらでもあげられる。しかし、不良達の反応の要因はそこではない。
女の体に白濁の液はなく、真っ赤な液しかなかったのだ。その赤は最も身近でよく知る赤、血だ。女に目立った外傷はない。では、何の血だ?
そんな事詳しく調べなくても分かる。同輩の血だ。
「おい、姉ちゃん。一緒に入った奴等はどうした。部屋の中か?」
『オン? 違うぞ、あの者等は我の腹の中だ。ハラエク』
腹の中という俄かに信じ難いことを言う女は、不良の一人の名を口をした。真実が確定したように思えた。
「て、め。アイツ等に何をしやがったッ!?」
『じゃから、腹の中におると言っているのじゃから、食ったに決まっておるじゃろう。さては貴君は頭悪いな?』
「このアマ!!」
激高した不良が鉞を振りかぶった。
物理的に接触をする大義名分があるのは良いのだが、少しばかり緊張してしまう。
「アレン?」
「だ、大丈夫ですよ?」
「まだ何も言ってない」
焦りすぎてまともな会話ができなくなっている。
「どこかに休めるポイントはないかしら。一度状況を確認しておきたいわ」
「そうだな。とりあえず雨風凌げたらいいんだけど」
「そこまでの贅沢は言わないわ」
「あれとか行けそうじゃね?」
アシドがある一点を指差した。そこには明らかに何かありそうな家があった。
「あぁ、確かに防げそうだ」
「大丈夫なんですか? 明らかに何かいますよ」
「何とかなるさ」
「楽観」
たった一言で突っ込まれ、自身の扱いの雑さに、少し肩を落とした。
「少しお邪魔させてもらうか」
「ほんじゃ、ま、邪魔するぜ~」
「その入り方、盗賊か借金取りでしょ」
またしても要らないボケ、しかも分かりづらいものをかますコストイラに、溜息を吐いた。
コストイラが扉を押すと、それに合わせて扉が外れた。バタンと倒れた扉が誇りを舞い上げる中、コストイラが呆然とする。まさか、そう開くとは思わなかったのだ。
「え、これオレ? オレが悪いのか?」
「いえ、ただの老朽だと思うけど、煙ったいわね。喉がイガイガする」
アストロが何度も咳払いして、気持ち悪いものを取ろうとする。
「こんなボロボロで埃だらけ。こんな廃墟に何がいるんだよ」
「足のない幽霊」
アシドの疑問にコストイラが即答した。アシドはうげ、という顔をしながらあたりを見るが、蜘蛛やゴキブリくらいしかいない。
「腰を下ろすのに抵抗はあるわね」
そもそもこの家に入った理由は、現状を確認したいからだ。本当にここは休めるか?
家具を改めて見る。ちょっとだけ大きい。どこか通常のそれよりかなり大きい。
木製の机や椅子には喰われた跡が見える。
「いるわよね。やっぱり」
「デッカイ虫がな」
「種類によりますよね。取り乱すか否か」
「ゴキなら悲鳴出すわ」
アストロの確認にコストイラは確信めいて答える。アレンがブルリと身を震わせると、アシドが冗談のように事実を返した。
そして、少し奥に進んだだけで、大きな虫を発見してしまった。
ガチャリとドアが開いた。
おこぼれを貰おうと思っていた不良達が、ニヤつき顔をしながら女を待つ。もう少しで発育の良い少女の体を堪能できる。
不良達が目を丸くした。少女から女に変わっていることや、瞳が赤くなっていること、髪が腰元まで伸びていることなど、気になる点はいくらでもあげられる。しかし、不良達の反応の要因はそこではない。
女の体に白濁の液はなく、真っ赤な液しかなかったのだ。その赤は最も身近でよく知る赤、血だ。女に目立った外傷はない。では、何の血だ?
そんな事詳しく調べなくても分かる。同輩の血だ。
「おい、姉ちゃん。一緒に入った奴等はどうした。部屋の中か?」
『オン? 違うぞ、あの者等は我の腹の中だ。ハラエク』
腹の中という俄かに信じ難いことを言う女は、不良の一人の名を口をした。真実が確定したように思えた。
「て、め。アイツ等に何をしやがったッ!?」
『じゃから、腹の中におると言っているのじゃから、食ったに決まっておるじゃろう。さては貴君は頭悪いな?』
「このアマ!!」
激高した不良が鉞を振りかぶった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる