メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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31.サディスホユー

6.蠢く住人

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「いたわね」

 そっと静かに呟く。巨大な甲虫を刺激しないように、だ。
 無駄な戦闘は避けた方がいい。それが今の認識だ。

「離れるぞ」

 全員が頷いて、入口に向かった。懸念するべきなのは、ここが二階である点だ。階段の軋みで起こしてしまうかもしれないからだ。
 エンドローゼに注目が集まる。こういう時にやらかす筆頭だからだ。エンドローゼは薄い胸を張った。何してんだ?

「ハップション!」

 アレンがくしゃみした。そういえばアレンもやらかし大魔神だった。

 巨大甲虫ドゥームビートルがくわりと目を開いた。そのまま角を突き出して突進してきた。

「危ねェ」

 コストイラがアレンを突き飛ばし、刀で受けた。横からレイドが突進する。ドゥームビートルが横に押され、埃だらけの家具やぬいぐるみに倒れ込んだ。見ているのもつらくなるほど埃が舞った。

「今のうちに」

 アレン達が階段に向かって走る。

 ドゥームビートルが角をコストイラに当てる。離されることなく、押し付けられる。

「マジかよ」

 そのまま巨大甲虫ドゥームビートルが突進すると、コストイラは家の壁を突き破った。
 体が宙を舞う。踏ん張ることができないため、脱出ができない。
 ズドンと地面に落ち、角で押し込まれた。肘が少し曲がる。むしろ、そちらの方が力が入りやすいので、好都合だ。
 伸びていたら、骨で支えることができていたので、少し休むことができていたが、高望みはしまい。

「くそ、押し込む力が馬鹿強ェ」

 コストイラは一瞬だけ筋肉を増強させて押し返す。その隙で脱出した。

 背を打った時にできた呼吸の乱れを治していく。大きく息を吸い、肺に溜め込む。そして、一気に駆け出した。
 巨大甲虫ドゥームビートルが角を振るう。刀を振るわれた炎のようにゆらりと躱し、一気に距離を詰めた。鋭い鉤爪のついた足を振るう。
 コストイラの刀が閃き、前脚が消し飛んだ。

『ガッ!?』

 驚愕する巨大甲虫ドゥームビートルを置き去りにして、武器を振るう。蟲の節々が簡単に切り落とされていく。

「こいつで終わりだ」

 最後の一刀がドゥームビートルの角を捉えた。





『フム。知らなかったの。罪を重ねる者は、その分だけ不味くなる。よい発見をした。ということは、あの少年アレンはいかなる旨味を持っているのであろうな』

 白と黒の女は積み重なった死体の山ガラクタの上に座りながら、想い人のことを頭に浮かべた。
 山から飛び出た腕を掴むと、思い切り引き千切り、口に入れた。

『いくら我と言えども、この量は多いな。全て食うには食うが、時間がかかる』

 ゴリゴリと臼歯で磨り潰しながら、足元の死体を眺める。

 その時、建物の壁が揺れ、扉が吹き飛んだ。

『ヌ?』
「ここか!? 通報があったっていう場所は!?」
「は!? アンタ、それを調べずにやったの!?」

 非常識な声を聞きながら、女は食事を続ける。

「「ゼッタイここだぁー!?」」

 男女の絶叫を聞きながら、指を差し示した。

『何じゃ、五月蠅いのぉ。見て分からんか? 我は食事中じゃぞ』
「テメェ何食っていやがる」

 男の声音に怒気が孕んでいる。
 正直な話、男の怒りの原因が分かっていない。男もお腹が空いているのだろうか。

「これを貴女一人でやったの?」
『ん? まぁ、そうじゃな。奴等が我に楽しいことをしようと誘ってきたのじゃ。そこで我も楽しいことをしたまでよ』
「楽しいこと、だと」
『あぁ、楽しく愛し合い、楽しい食事をしている。楽しすぎて、少し用意しすぎてしまった。貴君等も食うか?』
「「殺す!」」

 またしても声が重なった。何とも仲の良いことだろうか。

『羨ましいのぉ。欲しくなってしまう』

 そして、蹂躙が始まった。
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