メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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31.サディスホユー

9.縞模様

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 アレンは困惑していた。目の前には大きな壁がある。その壁はどこまで続いているのか分からない。
 もし端の方まで歩くことになったならば、どれほどの時間がかかるだろうか。

「とりま、いけるところまで行くか」
「それがいいでしょうね。行けそうなところは限られているわけだし」
「どっちに行くんだよ。どっちで回っても時間かかりそうだけど」
「ふ、ふぉ、フォン様は、右に行けとお、お、おっしゃってーいます」
「じゃあ、右か」

 分かれ道に差し掛かっていた勇者一行は、興奮気味なエンドローゼにアドバイスされ、右へ行くことにした。もうすでに原初グレイソレアの住むサディスホユーの国に入っているらしい。入国段階ですでにグレイソレアに知られているようで、歓迎の準備が進んでいるらしい。

 ガシャガシャと鎧のこすれ合う音を立てながら、何かがこちらに近づいてくる。

「あれって関わっていい系か?」
「どうなのかしらね。唯一つ、唯一言えることがあるとすれば、顔のペイントよね」

 近づいてくるものは、白と黒の縞模様をしている縞馬のような見た目をしていた。そのうえで、顔にはピエロのようなペイントがされている。顔を真っ白に塗り、その上から赤で謎の紋が描かれている。
 明らかに知性がありそうなのだ。

『やぁやぁ諸君! そんなに急いでどこへ行くのだNe?』

 少女とも少年とも取れる声で話しかけられた。妙にアトラクションのキャストのようなふるまいをしているのが気になるが、いきなりの攻撃はなさそうだ。

『大丈夫! 君達のことは聞いているYo! 勇者一行だろ!?』

 かなりオーバーな身振り手振りを加えながら、話している。ちょっとばかし邪魔になっているため、話が入ってこない。

「オレ達のことを知っているらしいじゃねぇか。どこで聞いたんだ?」
『そんなの決まっているだRO? グレイソレア様だYO』

 縞馬がキラリと歯を見せつけながら親指を立てた。

『と、いうわけで。君達を今から、グレイソレア様の元へ、つーれてっちゃうYO~~!!』

 ビシッと指を差す縞馬は、あまり信用できない話し方をして、入口を指差した。





「済まない。食事中か?」

 チャラチャラした男、仲の良い冒険者、衛兵、騎士ときて、女が出会ったのは赤褐色の肌を惜しげもなく晒す男だ。今日は珍しい、もとい、変な者とよく出会う日だ。

『今日は良い日じゃ。珍妙で濃い出会いが多い。心が躍る。良い日じゃ』
「これを全部食うのか?」

 聞かれた女は自ら足元を眺めた。

『まぁ、そのつもりじゃな。何か変かえ?』
「欲張りな女だと思っただけさ」
『なんじゃ? 貴君も欲しいのか? 済まんな。これは我のじゃ。貴君にはあげんぞ』
「そうか。オレは別に欲しいわけではない。依頼できたのだ」

 それを聞き、女はその凄くつまらなそうな顔をした。

『貴君もそれか。皆、口を聞けばすぐに依頼やら町のためやら、まっことつまらん』
「オレはコウガイ。お前を倒す」
『ほ? 名乗ったのは貴君が初めてじゃ。それは評価してやろう』

 女が死体の山ガラクタの上に立った。

『我の名はポラリスじゃ。その死にゆく身に刻んでおくがよい』

 ポラリスが超速でコウガイに近づき、右手を振る。抜き手を心臓に突き刺そうとしたのだ。
 コウガイは一切防御しようとしない。勝った。そう思い、ポラリスが口角を上げる。

 ベキャと指が折れ曲がった。コウガイの胸には少し入っている。しかし、その内に秘める筋肉がそれを止めた。

『は?』
「これぐらいできないでどうする? どうやってこの狂った世の中を生きていくというのだ?』
「いやいやいや、このような頭のおかしな行為が全員にできてたまるか!』

 ポラリスが泣きそうな声で叫ぶ。

 白黒の女は指を引き抜こうとするが、筋肉に挟まれた指はそれすらできない。筋肉怖い。
 コウガイが拳を硬く握り締め、ポラリスの顔面を殴った。
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