メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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31.サディスホユー

10.不思議な花園

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『それじゃ、開けるYO? 準備OK?』

 ピエロメイクをしている不可思議縞馬がパチンと指を鳴らすと、壁が動き、門が作られた。

『SA! 行こうか!?』

 歯を光らせる縞馬が促してくる。
 少し怖いが、門を通って壁の中へと入っていく。

『そう言えば、月から落ちてきた子達が迷惑をかけたみたいだNE。見ていたYO』
「視ていたの?」
『On? あぁ、見ていたYO! 足裏で拍手して、酒の肴にさせてもらっていたYO!』

 楽しそうに話す縞馬が指を差した。

『抜けるZE!』

 門を抜けた瞬間、爽やかな風が吹いた。アレンの前髪がふわりと浮いた。
 以前、この後にかまいたちが襲い掛かったのだ。

 アレンが前髪を押さえながら屈んだ。その後ろにいたコストイラが不思議そうな顔をしている。

「何してんだ?」
「蹴りそうで怖いんだけど」
「え? あ、え、あれ?  ごめんなさい」

 アレンが謝りながら、立ち上がった。

「前はこの直後にかまいたちが来たもので」
「あったな、そんなこと」
『かまいたち? あれはここにはいないYO? いるとしたら Queen Alraune とか Alraune とかだNE。ほら、あそことか』

 指が差された先を見ると、巨大な緑色の女性がこちらに手を振っていた。

「あの方は?」
『あいつはナエフダ。この花畑の主だZE』
「この花畑を抜けるんですか?」
『ムリムリムリ』

 腕で大きくバッテンを作り、体ごと首を振っている。ヒナギクはチッチッチッと人差し指を振った。

『この花畑は中心に行けば行くほど、毒性が強くなっていくYO? ゼツメイソウとかあるけど、大丈夫?』
「いや、駄目! ムリムリムリ! 死んじゃいますよ! ゼツメイソウ? 全員死んじゃいますって」
「私も怖い」
「むしろ耐えられる奴、いる? ヒナギクはいけるの?」

 生えている植物を聞いて、これまでにないほどアレンが狼狽する。シキも顔を蒼くし、コストイラも血の気が引く。

 ゼツメイソウは毒耐性を突破するほど強い毒を持っている。
 葉は、接触すれば内臓器官の活動を異常なまでに促進させ、栄養失調や脱水症状などの飢餓状態になる。
 茎は神経毒で、四肢を切り落としても、これを摂取すれば痛みがなくなるほどの麻痺や幻聴が確実に発症する事になる。
 果実を食すと、臓器の細胞を冒し、変性させて正常に働かなくさせる。
 花の蜜は赤血球の細胞膜を突破し、溶血させる作用を持っている。さらにヘモグロビンを変性させ、体内の酸素や二酸化炭素と結合できなくさせる。
 種は発癌を促すイニシエーターの役割も癌化した細胞をさらに進行させるプロモーターの両方の役割を担う毒がパンパンに詰まっている。
 根はそれらすべての毒性があるどころか、生まれてくる子供にさえ、影響を与えてくる。

 毒物を扱う暗殺者でさえ、扱うのを嫌がるほどの代物だ。

『あのナエフダの元になっている植物は、今話題のゼツ☆メイ☆ソウDAZE? 何度も茶会をしているから慣れちまったYO』
「近づくのは無理そうだな」
『毒の調整はできるらしいけど、皆が耐えられるかどうかは知らないなぁ?』
「じゃ、駄目じゃないですか?」

 アレンの心労は絶えそうもない。
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