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31.サディスホユー
13.蟲飼いと猛牛
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『おい、キクヂシャの爺さん。早く案内しろよ』
道の奥の方から声がやってきた。その声の主はアレンよりも背が低く、まるで子供のようだ。キツイ目をしており、ツンツンとした黄緑の髪を持つ人物だ。逆立った髪の一房が長く伸びており、触覚のようになっている。
黒い軽鎧の上にくすんだオレンジ色のマントのようなものを羽織っており、針金のような鋭い印象を面貌や体格から抱かせる少年は、その刺々しい眼光で、老紳士を糾弾するように睨みつけていた。
「えっと」
『フン! お前等が勇者一行か! 私はサンガ! 蟲使いである』
『えっと、彼はこのサディスホユーの中に存在している虫種族をすべて管理している』
『私と爺さんはこれでも900年は一緒にいるからな?』
「え!?」
キクヂシャとサンガの仲の長さを聞いて、アレンが驚愕する。900年近く一緒にいながら、キクヂシャはサンガの事も手帳を見ながら紹介している。
『物覚えが苦手でな』
『900年は異常だよな?』
「そ、それはそうですね」
異様な気迫に押され、アレンはサンガの意見に賛同した。
キクヂシャは頭を掻きながら手帳を眺めた。
『言っておくが、覚える気はあるのだぞ』
『言い訳なんざ、どうでもいいんだよ』
『ウム』
「あ、はい」
「そうは言っても、どこに行くんだ?」
『……歩きながらでいいか?』
「あぁ」
サンガが背に生えている半透明な翅がピコピコ動いている。キクヂシャがパッカパッカと先頭を歩きだした。
『……今から行くのはサディスホユーの中心街だ。と言っても、この国に町はこの一つしかないっていうか、廃村に住み着いた奴等しかいない』
「よくそれで国を名乗れるわね」
国の現状を聞いたアストロは、サンガに半眼を向ける。
『まぁ、他国から見た私達ってどういう扱いなのか、私自身知らないから、結局自称国だよ』
「そこは開き直っているのね」
『事実を受け入れられない阿呆じゃねぇからな』
さも当たり前のように、つまらなそうに話した。
『おい! サンバ! そいつ等が勇者か!?』
『サンバじゃねェ! サンガだ! ホキトタシタみたいなことしやがって。名前くらい覚えろ。こいつ等が勇者であることに違いはない!』
『それは済まない、サンバ! にしても、勇者か! 強そうだな!? 強いよな!? 戦おうぜ!』
「同類」
「え、オレのこと言うてる?」
アストロが半眼をコストイラに向ける。コストイラは自分に指を差したまま困っている顔が、どうも煽ってきているように見えて殴ってやりたい。
おっと手が滑った。
「え? オレ、今普通に殴られた? いや、痛くないからいいんだけどさ」
「アンタが戦えばいいんじゃない?」
「え、投げ槍」
『いいんだぞ、戦わなくても』
『戦おうぜ!』
サンガが呆れた顔をし、名も知らぬ戦闘狂が目を輝かせている。
『お前が勇者か!?』
「いや、オレは勇者の右腕だぜ」
『む? けど、右腕ってことは強いってことだよな。よし、戦おう!』
「えぇ、ま、いいけど」
コストイラは軽く了承したのだった。
道中で聞いた話では、この牛人の戦士はリンドウという名前で、戦闘狂の木材技師をしているという。
自身の作った武器を振るっているうちに戦いの面白さに気付いたらしい。
アレン達がいるのはすでに町の中。そして、なぜか、戦うために広場に来ていた。
コストイラは木刀を持っており、リンドウは木製の大斧槍を持っていた。
『あれはリンドウの本気の得物だ。アイツは職業上、いろいろな武器を扱ってきた。大斧槍のほかに、大剣、細剣、刀、他にもいろいろだ。だが、アイツは大斧槍を扱う。プライドでもあるんだろ。私は何となく分かる気がするけど、アイツの名誉のために黙っておくぜ』
「そういえばキクヂシャさんは」
『あの爺さんなら仕事に戻ったぞ。あまり本来の業務と違うことを行っていると、自分の仕事を忘れちまうからな』
フン、とどこかつまらなそうに鼻息を荒々しく吐いた。仕事しねぇくせに、と悪態も一緒に漏らしていた。
『ハァハァ!』
リンドウが跳び上がり、空中から大斧槍を繰り出した。コストイラは面倒なので、真正面から受けることにした。
道の奥の方から声がやってきた。その声の主はアレンよりも背が低く、まるで子供のようだ。キツイ目をしており、ツンツンとした黄緑の髪を持つ人物だ。逆立った髪の一房が長く伸びており、触覚のようになっている。
黒い軽鎧の上にくすんだオレンジ色のマントのようなものを羽織っており、針金のような鋭い印象を面貌や体格から抱かせる少年は、その刺々しい眼光で、老紳士を糾弾するように睨みつけていた。
「えっと」
『フン! お前等が勇者一行か! 私はサンガ! 蟲使いである』
『えっと、彼はこのサディスホユーの中に存在している虫種族をすべて管理している』
『私と爺さんはこれでも900年は一緒にいるからな?』
「え!?」
キクヂシャとサンガの仲の長さを聞いて、アレンが驚愕する。900年近く一緒にいながら、キクヂシャはサンガの事も手帳を見ながら紹介している。
『物覚えが苦手でな』
『900年は異常だよな?』
「そ、それはそうですね」
異様な気迫に押され、アレンはサンガの意見に賛同した。
キクヂシャは頭を掻きながら手帳を眺めた。
『言っておくが、覚える気はあるのだぞ』
『言い訳なんざ、どうでもいいんだよ』
『ウム』
「あ、はい」
「そうは言っても、どこに行くんだ?」
『……歩きながらでいいか?』
「あぁ」
サンガが背に生えている半透明な翅がピコピコ動いている。キクヂシャがパッカパッカと先頭を歩きだした。
『……今から行くのはサディスホユーの中心街だ。と言っても、この国に町はこの一つしかないっていうか、廃村に住み着いた奴等しかいない』
「よくそれで国を名乗れるわね」
国の現状を聞いたアストロは、サンガに半眼を向ける。
『まぁ、他国から見た私達ってどういう扱いなのか、私自身知らないから、結局自称国だよ』
「そこは開き直っているのね」
『事実を受け入れられない阿呆じゃねぇからな』
さも当たり前のように、つまらなそうに話した。
『おい! サンバ! そいつ等が勇者か!?』
『サンバじゃねェ! サンガだ! ホキトタシタみたいなことしやがって。名前くらい覚えろ。こいつ等が勇者であることに違いはない!』
『それは済まない、サンバ! にしても、勇者か! 強そうだな!? 強いよな!? 戦おうぜ!』
「同類」
「え、オレのこと言うてる?」
アストロが半眼をコストイラに向ける。コストイラは自分に指を差したまま困っている顔が、どうも煽ってきているように見えて殴ってやりたい。
おっと手が滑った。
「え? オレ、今普通に殴られた? いや、痛くないからいいんだけどさ」
「アンタが戦えばいいんじゃない?」
「え、投げ槍」
『いいんだぞ、戦わなくても』
『戦おうぜ!』
サンガが呆れた顔をし、名も知らぬ戦闘狂が目を輝かせている。
『お前が勇者か!?』
「いや、オレは勇者の右腕だぜ」
『む? けど、右腕ってことは強いってことだよな。よし、戦おう!』
「えぇ、ま、いいけど」
コストイラは軽く了承したのだった。
道中で聞いた話では、この牛人の戦士はリンドウという名前で、戦闘狂の木材技師をしているという。
自身の作った武器を振るっているうちに戦いの面白さに気付いたらしい。
アレン達がいるのはすでに町の中。そして、なぜか、戦うために広場に来ていた。
コストイラは木刀を持っており、リンドウは木製の大斧槍を持っていた。
『あれはリンドウの本気の得物だ。アイツは職業上、いろいろな武器を扱ってきた。大斧槍のほかに、大剣、細剣、刀、他にもいろいろだ。だが、アイツは大斧槍を扱う。プライドでもあるんだろ。私は何となく分かる気がするけど、アイツの名誉のために黙っておくぜ』
「そういえばキクヂシャさんは」
『あの爺さんなら仕事に戻ったぞ。あまり本来の業務と違うことを行っていると、自分の仕事を忘れちまうからな』
フン、とどこかつまらなそうに鼻息を荒々しく吐いた。仕事しねぇくせに、と悪態も一緒に漏らしていた。
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