メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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31.サディスホユー

14.原初の魔王

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 大きな武器を平然と受け止めた。リンドウは驚愕しているが、コストイラは無表情のままだ。
 コストイラが即座に刀を縦にし、大斧槍ハルバードを通り過ぎさせ、地面を叩かせる。本来刃がある部分が地面に埋まってしまっている。

「力、強」

 コストイラが素直に感想を述べる。最初から柔で勝負するつもりだったにもかかわらず、柔に逃げたように映ってしまう。
 コストイラが力強く木刀を振る。リンドウの腹筋がすべてを受け止める。コストイラが振り切ろうとしたが、木刀の方が先に限界を迎えた。
 バキリと木刀が折れた。そこを好機と見たのか、リンドウが刃を返した。完全にコストイラの顔面を狙っている。
 コストイラが背を無理矢理反らして躱した。鼻頭と髪の毛が掠った。

 コストイラは後転の勢いを利用してリンドウの顎を蹴った。
 リンドウも後転してシームレスに立ち上がった。リンドウが顔を上げた時、すでにコストイラがそこにいた。

 コストイラの膝がリンドウの顔を打つ。リンドウの鼻の骨が若干曲がる。鼻血が出ているが、リンドウの顔は笑みを浮かべている。
 大斧槍ハルバードを持っていない手でコストイラを掴もうとする。しかし、コストイラは足を巧みに使い、リンドウの首に絡みついた。このまま首を折るのも可能だろう。
 コストイラの行動は違った。絡みついた状態で背を反らした。リンドウの重心をズラす。

『うお!?』

 リンドウが後ろに倒れる。コストイラは地面に手を着き、リンドウを引き抜いた。

『え、あ、な!』

 自分が投げられていることに気付いたが遅かった。
 リンドウが頭を守ろうと手を伸ばしたが、間に合わずに脳天が突き刺さった。

『ハッハァ! お前、強ぇな! 頭が馬鹿みたいに痛いが、認めてやるぜ! お前は強い!』

 頭の半分が地面の中に埋まったまま、体は海老反りで爪先が地面についている。その状態の者の話など、一向に入ってこない。

 その時、アレンの目がずきりと痛んだ。

 シキとコストイラとアストロが異常な魔力に反応する。
 エンドローゼが旧友のような感覚を得た。

 サディスホユーの住民は瞬く間もなく、片膝を着いた。

『え、え、何? どういう状況? え、もしかして帰ってきた? え、帰ってきたの? マジ!? 誰か、引き抜いて! 誰か引き抜いて~!』
『なぜ、説明が欲しくなるような状況になっているのでしょう。まぁ、リンドウが地面に埋めっているのは、説明が要りません。リンドウはそういう奴、の一言で済んでしまうので。サンガの翅はいつ生えたのですか?』
『え!? あ、はい。私の翅は一週間ほど前に生えました。馴染んではいますが、馴染み切ってはおりませんので、まだ飛ぶことはできません』
『まぁ、そうなのですね。半透明で綺麗な翅なので、見ているだけでも価値がありますし、落ち込まないで下さい。まぁ、私は目を開けていませんが』

 肩甲骨あたりまで伸ばした銀髪に、黒地に赤い線の入ったロリータ服を身に纏った少女がいた。
 あのサンガが敬語で話しているところを見ると、相当偉い立場にあるのだろう。

『初めまして、と挨拶しておきましょう。原初の魔王をさせていただいております、グレイソレアと申します。以降もよろしくお願いします』
「よ、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ」

 グレイソレアが丁寧に挨拶してくる。それにつられてアレンとアストロが腰を折る。

『フン!』

 リンドウが自身の力のみで地面から抜け出した。

『よし! 抜けた!』

 リンドウが流れるように土下座をした。しかし、グレイソレアは完全に無視している。

『そこの焦げ茶色の髪をしている貴方、魔眼を持っていますね』

 疑問の聞き方ではなく、完全に確認の聞き方である。

 え、これ、話していいの? まだ、言わない方がいいの? 大丈夫?

 アレンの表情は読みやすすぎた。
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