569 / 684
31.サディスホユー
14.原初の魔王
しおりを挟む
大きな武器を平然と受け止めた。リンドウは驚愕しているが、コストイラは無表情のままだ。
コストイラが即座に刀を縦にし、大斧槍を通り過ぎさせ、地面を叩かせる。本来刃がある部分が地面に埋まってしまっている。
「力、強」
コストイラが素直に感想を述べる。最初から柔で勝負するつもりだったにもかかわらず、柔に逃げたように映ってしまう。
コストイラが力強く木刀を振る。リンドウの腹筋がすべてを受け止める。コストイラが振り切ろうとしたが、木刀の方が先に限界を迎えた。
バキリと木刀が折れた。そこを好機と見たのか、リンドウが刃を返した。完全にコストイラの顔面を狙っている。
コストイラが背を無理矢理反らして躱した。鼻頭と髪の毛が掠った。
コストイラは後転の勢いを利用してリンドウの顎を蹴った。
リンドウも後転してシームレスに立ち上がった。リンドウが顔を上げた時、すでにコストイラがそこにいた。
コストイラの膝がリンドウの顔を打つ。リンドウの鼻の骨が若干曲がる。鼻血が出ているが、リンドウの顔は笑みを浮かべている。
大斧槍を持っていない手でコストイラを掴もうとする。しかし、コストイラは足を巧みに使い、リンドウの首に絡みついた。このまま首を折るのも可能だろう。
コストイラの行動は違った。絡みついた状態で背を反らした。リンドウの重心をズラす。
『うお!?』
リンドウが後ろに倒れる。コストイラは地面に手を着き、リンドウを引き抜いた。
『え、あ、な!』
自分が投げられていることに気付いたが遅かった。
リンドウが頭を守ろうと手を伸ばしたが、間に合わずに脳天が突き刺さった。
『ハッハァ! お前、強ぇな! 頭が馬鹿みたいに痛いが、認めてやるぜ! お前は強い!』
頭の半分が地面の中に埋まったまま、体は海老反りで爪先が地面についている。その状態の者の話など、一向に入ってこない。
その時、アレンの目がずきりと痛んだ。
シキとコストイラとアストロが異常な魔力に反応する。
エンドローゼが旧友のような感覚を得た。
サディスホユーの住民は瞬く間もなく、片膝を着いた。
『え、え、何? どういう状況? え、もしかして帰ってきた? え、帰ってきたの? マジ!? 誰か、引き抜いて! 誰か引き抜いて~!』
『なぜ、説明が欲しくなるような状況になっているのでしょう。まぁ、リンドウが地面に埋めっているのは、説明が要りません。リンドウはそういう奴、の一言で済んでしまうので。サンガの翅はいつ生えたのですか?』
『え!? あ、はい。私の翅は一週間ほど前に生えました。馴染んではいますが、馴染み切ってはおりませんので、まだ飛ぶことはできません』
『まぁ、そうなのですね。半透明で綺麗な翅なので、見ているだけでも価値がありますし、落ち込まないで下さい。まぁ、私は目を開けていませんが』
肩甲骨あたりまで伸ばした銀髪に、黒地に赤い線の入ったロリータ服を身に纏った少女がいた。
あのサンガが敬語で話しているところを見ると、相当偉い立場にあるのだろう。
『初めまして、と挨拶しておきましょう。原初の魔王をさせていただいております、グレイソレアと申します。以降もよろしくお願いします』
「よ、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
グレイソレアが丁寧に挨拶してくる。それにつられてアレンとアストロが腰を折る。
『フン!』
リンドウが自身の力のみで地面から抜け出した。
『よし! 抜けた!』
リンドウが流れるように土下座をした。しかし、グレイソレアは完全に無視している。
『そこの焦げ茶色の髪をしている貴方、魔眼を持っていますね』
疑問の聞き方ではなく、完全に確認の聞き方である。
え、これ、話していいの? まだ、言わない方がいいの? 大丈夫?
アレンの表情は読みやすすぎた。
コストイラが即座に刀を縦にし、大斧槍を通り過ぎさせ、地面を叩かせる。本来刃がある部分が地面に埋まってしまっている。
「力、強」
コストイラが素直に感想を述べる。最初から柔で勝負するつもりだったにもかかわらず、柔に逃げたように映ってしまう。
コストイラが力強く木刀を振る。リンドウの腹筋がすべてを受け止める。コストイラが振り切ろうとしたが、木刀の方が先に限界を迎えた。
バキリと木刀が折れた。そこを好機と見たのか、リンドウが刃を返した。完全にコストイラの顔面を狙っている。
コストイラが背を無理矢理反らして躱した。鼻頭と髪の毛が掠った。
コストイラは後転の勢いを利用してリンドウの顎を蹴った。
リンドウも後転してシームレスに立ち上がった。リンドウが顔を上げた時、すでにコストイラがそこにいた。
コストイラの膝がリンドウの顔を打つ。リンドウの鼻の骨が若干曲がる。鼻血が出ているが、リンドウの顔は笑みを浮かべている。
大斧槍を持っていない手でコストイラを掴もうとする。しかし、コストイラは足を巧みに使い、リンドウの首に絡みついた。このまま首を折るのも可能だろう。
コストイラの行動は違った。絡みついた状態で背を反らした。リンドウの重心をズラす。
『うお!?』
リンドウが後ろに倒れる。コストイラは地面に手を着き、リンドウを引き抜いた。
『え、あ、な!』
自分が投げられていることに気付いたが遅かった。
リンドウが頭を守ろうと手を伸ばしたが、間に合わずに脳天が突き刺さった。
『ハッハァ! お前、強ぇな! 頭が馬鹿みたいに痛いが、認めてやるぜ! お前は強い!』
頭の半分が地面の中に埋まったまま、体は海老反りで爪先が地面についている。その状態の者の話など、一向に入ってこない。
その時、アレンの目がずきりと痛んだ。
シキとコストイラとアストロが異常な魔力に反応する。
エンドローゼが旧友のような感覚を得た。
サディスホユーの住民は瞬く間もなく、片膝を着いた。
『え、え、何? どういう状況? え、もしかして帰ってきた? え、帰ってきたの? マジ!? 誰か、引き抜いて! 誰か引き抜いて~!』
『なぜ、説明が欲しくなるような状況になっているのでしょう。まぁ、リンドウが地面に埋めっているのは、説明が要りません。リンドウはそういう奴、の一言で済んでしまうので。サンガの翅はいつ生えたのですか?』
『え!? あ、はい。私の翅は一週間ほど前に生えました。馴染んではいますが、馴染み切ってはおりませんので、まだ飛ぶことはできません』
『まぁ、そうなのですね。半透明で綺麗な翅なので、見ているだけでも価値がありますし、落ち込まないで下さい。まぁ、私は目を開けていませんが』
肩甲骨あたりまで伸ばした銀髪に、黒地に赤い線の入ったロリータ服を身に纏った少女がいた。
あのサンガが敬語で話しているところを見ると、相当偉い立場にあるのだろう。
『初めまして、と挨拶しておきましょう。原初の魔王をさせていただいております、グレイソレアと申します。以降もよろしくお願いします』
「よ、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
グレイソレアが丁寧に挨拶してくる。それにつられてアレンとアストロが腰を折る。
『フン!』
リンドウが自身の力のみで地面から抜け出した。
『よし! 抜けた!』
リンドウが流れるように土下座をした。しかし、グレイソレアは完全に無視している。
『そこの焦げ茶色の髪をしている貴方、魔眼を持っていますね』
疑問の聞き方ではなく、完全に確認の聞き方である。
え、これ、話していいの? まだ、言わない方がいいの? 大丈夫?
アレンの表情は読みやすすぎた。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる