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もしも私がいなくなってしまったら、マスクドワン、貴方は一体どうする?
「ねぇ、マスクドワン、今日もとても穏やかな一日だったわね」
「あぁ、そうだな……とても心地の良い日だったのだな」
「ふふふ、そうなの。またあの子が来て私と一緒にお話をしてくれたのよ」
今日も来てくれた人間の男の子との話を角合わせする。マルクと名乗った夕陽に照らされた黄金の髪色をした人間。私にとても興味を持ってくれて、人間が好きな私に人間の話を沢山してくれる心優しい人間。この間来たときは赤く丸い甘酸っぱい果実をもってきてくれて、それを私が美味しいと言ったからマルクは今日それを使った料理、アップルパイを持ってきてくれた。そんな話をマスクドワンに話していると段々陽が沈んで行く。
「フレスベルグ、そろそろ眠る時間だ」
「そうね、もう寝なくちゃ……ねぇマスクドワン?」
「……どうした」
「最近話し足りないの、どれだけ話をしても足りない位」
可笑しいわよね、私たちには角合わせがあるのに話足りないなんてまるで人間みたい。人間のように言葉を話さなくても私達は角を合わせればその日何があったかなんてすぐに分かるのに。マルクと出会ってから声に出す会話がとても楽しくて、それを聞いてくれるマスクドワンの表情がとても優しいから、人間にでもなったかのような気持ち。
「もっと時間があれば沢山教えてもらった事を話したいのに……」
「……フレスベルグ、時間だ」
「……そうね、もう眠るわ……おやすみなさい」
陽が暮れる、段々と瞼が落ちていく感覚がする。意識が落ちる前にマスクドワンの優しい声で「おやすみ」と聞こえたような気がした。
◆
「ねぇ、待って、私もそっちに行きたいの」
「おいで、おいで、こっちだよ」
「息が、上手くでき、なくてっ……」
頭が軽い、ツノがないから、足取りが軽い、尻尾がないから。息が上がるのは人間だから?でも不思議と疲れはない。目の前を走っていく私と同じ歳位の青年の姿を追いかけていく。目の前を走る青年と私の姿に違いはない、これはきっと夢、人間になりたいと思った私の願望が現れた楽しい夢。
昔誰かが言っていたのを思い出した。その昔人間と竜は同じだったと、その龍は変わり者と呼ばれていてとても人間が大好きで、よく人間に龍に伝わる教えを解いていた。先生と呼び慕っていたあの人は今どうしているのだろうか。人間と仲良くしている私を見てなんと思うだろうか。きっと私を見て「自分の教えは間違っていなかった」と言うのかもしれない。
「マルク、待って」
「こっち、こっち」
「マスクドワンも、彼も一緒に連れて行きたいの」
マスクドワンはどこに行ってしまったのだろうか。夜にしか生きることを許されない彼は人間をあまり良くは思っていない。私の知らない人間の嫌な部分を沢山知っているのは知っている。きっとマスクドワンはここには居ない。人間になるなんてマスクドワンは望んでないから、そんな彼はきっと人間になれるようになってもきっと拒むのだろう。私はマスクドワンにも同じになって欲しいと願っていたけれど、きっと彼はそれを望んでいない。望まない変化はきっと誰でも嫌と思うだろう。
「分かってる……彼はそれを望んでない事」
「俺はフレスベルグと一緒に行きたい」
「ごめんね。私やっぱり行けない、彼を……マスクドワンを一人にしたくない」
「そう言うと思った」
今日の夢はやけにリアルだな……どうしてこんな夢を見るんだろう。でも一つ分かった事がある、それはマスクドワンと私は離れたくないと言う事。この先何かが起こって二人一緒に居られない時が来ても、私はきっとマスクドワンの側にいようとするんだと思う。
意識が浮上するような感覚がする。きっと目覚めの時なんだろうね、私は夢の中のマルクに背を向けて丘の上に生えている一本の木に向かって走り出す。いつだって大切なモノはこの手の中にずっと持っていたのだから。
◆
「おはよう、フレスベルグ」
「……おはよう、マスクドワン」
目を覚ますといつもの日常が待っていた。遠い地平線の向こうから陽が昇ろうとして居る朝ぼらけ、瞼を開けるとそこにはいつも通りのマスクドワンの姿があった。
そうしてまた角合わせをする。マスクドワンの伝えたい私が眠っている夜のお話。今日は星が綺麗だったとか動物の遠吠えが遠くから聞こえたとかそんなお話。
「今日も素敵な一日になるかしら」
「お前が望むのなら……きっとそうなる」
「ふふ、そうね」
そうやって時間を過ごしているとマスクドワンが眠りにつく時間になる。段々と瞼が落ちていくマスクドワンの頭をそっと撫でて角にキスをすると、彼は微笑みながら眠りについた。そうして木の中に溶けるように消えると、地平線の向こうから完全に朝日が昇る。
「さぁ、今日も素晴らしい一日に」
「ねぇ、マスクドワン、今日もとても穏やかな一日だったわね」
「あぁ、そうだな……とても心地の良い日だったのだな」
「ふふふ、そうなの。またあの子が来て私と一緒にお話をしてくれたのよ」
今日も来てくれた人間の男の子との話を角合わせする。マルクと名乗った夕陽に照らされた黄金の髪色をした人間。私にとても興味を持ってくれて、人間が好きな私に人間の話を沢山してくれる心優しい人間。この間来たときは赤く丸い甘酸っぱい果実をもってきてくれて、それを私が美味しいと言ったからマルクは今日それを使った料理、アップルパイを持ってきてくれた。そんな話をマスクドワンに話していると段々陽が沈んで行く。
「フレスベルグ、そろそろ眠る時間だ」
「そうね、もう寝なくちゃ……ねぇマスクドワン?」
「……どうした」
「最近話し足りないの、どれだけ話をしても足りない位」
可笑しいわよね、私たちには角合わせがあるのに話足りないなんてまるで人間みたい。人間のように言葉を話さなくても私達は角を合わせればその日何があったかなんてすぐに分かるのに。マルクと出会ってから声に出す会話がとても楽しくて、それを聞いてくれるマスクドワンの表情がとても優しいから、人間にでもなったかのような気持ち。
「もっと時間があれば沢山教えてもらった事を話したいのに……」
「……フレスベルグ、時間だ」
「……そうね、もう眠るわ……おやすみなさい」
陽が暮れる、段々と瞼が落ちていく感覚がする。意識が落ちる前にマスクドワンの優しい声で「おやすみ」と聞こえたような気がした。
◆
「ねぇ、待って、私もそっちに行きたいの」
「おいで、おいで、こっちだよ」
「息が、上手くでき、なくてっ……」
頭が軽い、ツノがないから、足取りが軽い、尻尾がないから。息が上がるのは人間だから?でも不思議と疲れはない。目の前を走っていく私と同じ歳位の青年の姿を追いかけていく。目の前を走る青年と私の姿に違いはない、これはきっと夢、人間になりたいと思った私の願望が現れた楽しい夢。
昔誰かが言っていたのを思い出した。その昔人間と竜は同じだったと、その龍は変わり者と呼ばれていてとても人間が大好きで、よく人間に龍に伝わる教えを解いていた。先生と呼び慕っていたあの人は今どうしているのだろうか。人間と仲良くしている私を見てなんと思うだろうか。きっと私を見て「自分の教えは間違っていなかった」と言うのかもしれない。
「マルク、待って」
「こっち、こっち」
「マスクドワンも、彼も一緒に連れて行きたいの」
マスクドワンはどこに行ってしまったのだろうか。夜にしか生きることを許されない彼は人間をあまり良くは思っていない。私の知らない人間の嫌な部分を沢山知っているのは知っている。きっとマスクドワンはここには居ない。人間になるなんてマスクドワンは望んでないから、そんな彼はきっと人間になれるようになってもきっと拒むのだろう。私はマスクドワンにも同じになって欲しいと願っていたけれど、きっと彼はそれを望んでいない。望まない変化はきっと誰でも嫌と思うだろう。
「分かってる……彼はそれを望んでない事」
「俺はフレスベルグと一緒に行きたい」
「ごめんね。私やっぱり行けない、彼を……マスクドワンを一人にしたくない」
「そう言うと思った」
今日の夢はやけにリアルだな……どうしてこんな夢を見るんだろう。でも一つ分かった事がある、それはマスクドワンと私は離れたくないと言う事。この先何かが起こって二人一緒に居られない時が来ても、私はきっとマスクドワンの側にいようとするんだと思う。
意識が浮上するような感覚がする。きっと目覚めの時なんだろうね、私は夢の中のマルクに背を向けて丘の上に生えている一本の木に向かって走り出す。いつだって大切なモノはこの手の中にずっと持っていたのだから。
◆
「おはよう、フレスベルグ」
「……おはよう、マスクドワン」
目を覚ますといつもの日常が待っていた。遠い地平線の向こうから陽が昇ろうとして居る朝ぼらけ、瞼を開けるとそこにはいつも通りのマスクドワンの姿があった。
そうしてまた角合わせをする。マスクドワンの伝えたい私が眠っている夜のお話。今日は星が綺麗だったとか動物の遠吠えが遠くから聞こえたとかそんなお話。
「今日も素敵な一日になるかしら」
「お前が望むのなら……きっとそうなる」
「ふふ、そうね」
そうやって時間を過ごしているとマスクドワンが眠りにつく時間になる。段々と瞼が落ちていくマスクドワンの頭をそっと撫でて角にキスをすると、彼は微笑みながら眠りについた。そうして木の中に溶けるように消えると、地平線の向こうから完全に朝日が昇る。
「さぁ、今日も素晴らしい一日に」
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