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フレスベルグは、その時が訪れていたことをあまり気が付いていなかった。
「そう言えば最近マルクを見ないわ……」
そう、いつもこの世界樹に昼の間やって来るはずの青年——マルクがここ最近来ていない事を。普段ここを訪れる人間の顔をフレスベルグもマスクドワンも覚えてはいないが、いつも不思議な雰囲気を身に纏い自分達に気さくに話しかけてくれる存在であるマルクだけは何故か二人とも顔を覚え名前も覚えていた。そのマルクがここ最近姿を見せていないことにフレスベルグは気がついた。いつから来ていなかったのかまでは分からないが、少なくとここ数日は見ていなかった。
「どうしちゃったのかしら……」
フレスベルグは心配で村まで様子を見に行きたかったが、自分は此処を離れる訳にはいけないためジッと待っている事しかできなかった。
あれからどの位の時間が過ぎたのだろうかとフレスベルグは考えていた。もしかしたら私に会うことに飽きてしまったのだろうか、それとも何か重大な事件に巻き込まれてしまっているのだろうか、村を出てしまったのだろうか等色々な事が頭を過っては消えていく。考えは日増しに悪い方へと向かうもので、マスクドワンもフレスベルグが最近マルクの事を考え過ぎてマイナス思考に行っている事を心配していた。
「フレスベルグ……」
「マスクドワン……」
いつもの夕暮れ時、フレスベルグとマスクドワンは互いの近況報告の為の角合わせをしていた。マスクドワンに流れていくフレスベルグの感情は「寂しい」「どうして」「会いたい」だった。マスクドワンは、その感情を受け入れるとそっと目を閉じフレスベルグの頭を自身の胸にそっと抱きしめた。
「もうあの人間の事は忘れろ……その方がお前の為になる」
「でも……」
「いいかフレスベルグ、私達龍と人間には大きな違いがある」
「違い……?」
フレスベルグは不安げな表情でそっとマスクドワンの顔を見上げる。するとばちっと合う視線、マスクドワンの目にはどう伝えたら良いか考えている色が見える。
暫く考えたマスクドワンは、フレスベルグに向かってゆっくりと唇を開いた。
「私達龍は人間よりも長寿なんだ……だから、私達の思っているより人間の一生とはあっという間に過ぎ去ってしまう」
「寿……命……?」
「可哀想なフレスベルグ……お前は人間が好きなあまり忘れていたのだな」
「そんな……それじゃあマルクにはもう、会えないの……?」
フレスベルグの問いかけにマスクドワンは何も言わず目を伏せる。それだけでフレスベルグには十分に伝わってしまった。自分がマルクの姿を認識できなくなって、その間に彼が死んでしまった事を。
その日フレスベルグは自身が眠りに落ちるまでの間ずっと泣いていた。
龍の鳴き声はどこか悲しく遠く、風に乗って世界の夜に消えていった。
「そう言えば最近マルクを見ないわ……」
そう、いつもこの世界樹に昼の間やって来るはずの青年——マルクがここ最近来ていない事を。普段ここを訪れる人間の顔をフレスベルグもマスクドワンも覚えてはいないが、いつも不思議な雰囲気を身に纏い自分達に気さくに話しかけてくれる存在であるマルクだけは何故か二人とも顔を覚え名前も覚えていた。そのマルクがここ最近姿を見せていないことにフレスベルグは気がついた。いつから来ていなかったのかまでは分からないが、少なくとここ数日は見ていなかった。
「どうしちゃったのかしら……」
フレスベルグは心配で村まで様子を見に行きたかったが、自分は此処を離れる訳にはいけないためジッと待っている事しかできなかった。
あれからどの位の時間が過ぎたのだろうかとフレスベルグは考えていた。もしかしたら私に会うことに飽きてしまったのだろうか、それとも何か重大な事件に巻き込まれてしまっているのだろうか、村を出てしまったのだろうか等色々な事が頭を過っては消えていく。考えは日増しに悪い方へと向かうもので、マスクドワンもフレスベルグが最近マルクの事を考え過ぎてマイナス思考に行っている事を心配していた。
「フレスベルグ……」
「マスクドワン……」
いつもの夕暮れ時、フレスベルグとマスクドワンは互いの近況報告の為の角合わせをしていた。マスクドワンに流れていくフレスベルグの感情は「寂しい」「どうして」「会いたい」だった。マスクドワンは、その感情を受け入れるとそっと目を閉じフレスベルグの頭を自身の胸にそっと抱きしめた。
「もうあの人間の事は忘れろ……その方がお前の為になる」
「でも……」
「いいかフレスベルグ、私達龍と人間には大きな違いがある」
「違い……?」
フレスベルグは不安げな表情でそっとマスクドワンの顔を見上げる。するとばちっと合う視線、マスクドワンの目にはどう伝えたら良いか考えている色が見える。
暫く考えたマスクドワンは、フレスベルグに向かってゆっくりと唇を開いた。
「私達龍は人間よりも長寿なんだ……だから、私達の思っているより人間の一生とはあっという間に過ぎ去ってしまう」
「寿……命……?」
「可哀想なフレスベルグ……お前は人間が好きなあまり忘れていたのだな」
「そんな……それじゃあマルクにはもう、会えないの……?」
フレスベルグの問いかけにマスクドワンは何も言わず目を伏せる。それだけでフレスベルグには十分に伝わってしまった。自分がマルクの姿を認識できなくなって、その間に彼が死んでしまった事を。
その日フレスベルグは自身が眠りに落ちるまでの間ずっと泣いていた。
龍の鳴き声はどこか悲しく遠く、風に乗って世界の夜に消えていった。
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